「服部はっとり」のようなキラキラしたアルバムに

──マカロニえんぴつは、2ndフルアルバム「hope」をリリースしました。

はっとり　ミニアルバムはけっこう出だしているんですけど、フルアルバムはひさしぶりですね。

奥田おくだ　今いまの若わかい人ひとはさ、どういう解釈かいしゃくでフルアルバムを作つくってるの？

はっとり　僕ぼくはギリギリCD世代せだいなので、フルアルバムを出だせるのはうれしいし、リスナーにもCDの曲きょく順じゅん通どおりに聴きいてほしいんです。ただ、サブスクだとシャッフル再生さいせいされるだろうし、曲きょく順じゅんとか曲きょく間あいだにこだわってもあんまり意味いみがない気きもして。

奥田おくだ　そうなんだよね。ユニコーンはアナログ盤ばんを出だしてるから、そのために曲きょく順じゅんや曲きょく間あいだの長ながさを決きめる作業さぎょうをやってる感かんじかな。

はっとり　なるほど。あと、今回こんかいのアルバム全体ぜんたいの印象いんしょうということで言いうと、今いまのバンドのモードが音おとに出でてると思おもいます。「集客しゅうきゃくが増ふえて、ライブが楽たのしい」という感かんじというか、アウトロが長ながめの曲きょくが増ふえてたり。同おなじようなセットリストでやってると、ちょっと違ちがうことをやってみたくなったりするので。

奥田おくだ　ライブの合間あいまにレコーディングすると、ギターがうまかったりするよね。ツアー終おわりとかが一番いちばんいいんじゃない？ ライブをやってない時期じきに録ろくると、必かならず下手へたになってる（笑）。

はっとり　確たしかにそうかもしれないですね（笑）。それこそ「服部はっとり」みたいにキラキラしたアルバムにしたかったんですよ。アルバムを聴きいてくれる人ひとたちに、面白おもしろいことやってるなと思おもわせたかった。あと「人生じんせいは上々じょうじょうだ」みたいな雰囲気ふんいきの曲きょくもあって。この曲きょくはキーがどんどん上あがっていくから、自分じぶんたちはテンポを上あげてみようと。

──「この度たびの恥はじは掻かき捨すて」ですね。

はっとり　はい。BPMが15ずつくらい上あがって、最終さいしゅう的てきに倍速ばいそくくらいになります（笑）。真面目まじめすぎないというか、音楽おんがく的てきに面白おもしろいこともやれるようになってきたんですよね。レコーディング中ちゅうも、ずっと笑わらってたんですよ。以前いぜんはしかめっ面つらで「どっちのテイクがいいかな？」という感かんじだったんですけど、今回こんかいは楽たのしくやれた。そういう面めんでは、ちょっとずつユニコーンっぽさに近付ちかづいてきたかなと。

奥田おくだ　俺おれらも昔むかしはそんなことばっかりやってからね。誰だれもやってないことはないかといつも考かんがえてたし、思おもい付ついたことをどんどん試ためして。Pro Toolsなんてないから、何なにをやるにも時間じかんがかかって大変たいへんだったけどね。「こんなに時間じかんがかかるなら、言いわなきゃよかった」って思おもうくらい。

はっとり　でも、それが楽たのしかったんですよね？

奥田おくだ　まあ、若わかかったからね。朝あさまでやって、「通勤つうきんラッシュになっちゃうから帰かえろう」って山手やまて線せんに乗のって、そのまま電車でんしゃで2周しゅうくらい寝ねちゃったり（笑）。

フルアルバムの魅力みりょく

──「hope」はアレンジの幅はばも広ひろがっていて。モータウン的てきなテイストを取とり入いれた「レモンパイ」、アコギの弾ひき語がたりによる「嘘うそなき」、90年代ねんだいのUKロックを感かんじさせる「恋人こいびとごっこ」など、サウンドのアイデアが豊富ほうふですよね。

奥田おくだ　まだまだ、いくらでもアイデアが出でてくる時期じきでしょ。それがなくなってからが力ちからの見みせどころ（笑）。

はっとり　楽曲がっきょくのアイデアは常つねに探さがしている感かんじですか？

奥田おくだ　外そとからの刺激しげきがあると、やる気きになるからね。「UC100V」（2019年ねん3月がつ発売はつばいのフルアルバム）のときは、曲名きょくめいに数字すうじを入いれるという決きまりを作つくったり。

はっとり　タイアップ曲きょくもそうですけど、お題だいがあるのもいいですよね。この前まえ、初はじめて楽曲がっきょく提供ていきょうをさせてもらったんです。「愛あいのレンタル」という曲きょくを私立しりつ恵比寿えびす中学ちゅうがくに提供ていきょうしたんですけど、エビ中ちゅうが歌うたうことをイメージしたら、わりとスラスラ書かけたんですよ。自分じぶんに向むき合あって、思おもいの丈たけを表現ひょうげんするような曲きょくは、「聴きいた人ひとにどう思おもわれるだろう？」と考かんがえちゃったりするんですけど。

奥田おくだ　照てれくさいよね。昔むかしよりは気きにならなくなったけど。

はっとり　民生たみおさんの歌詞かしは、自分じぶんのことを歌うたうことよりも、ちょっと滑稽こっけいな人物じんぶつ像ぞうを作つくることが多おおいですよね。

奥田おくだ　そうね。

はっとり　ときどき「これは民生たみおさん自身じしんのことなんだろうな」と感かんじることがあって、それもすごくいいんですよ。「CUSTOM」とかもめちゃくちゃ好すきで。

奥田おくだ　そういうのは“たまに”がいいよね。そのほうがラクだし、自分じぶん以外いがいのことを書かいたほうがいろんなタイプの曲きょくができるじゃない？ 同おなじことばっかりやってると飽あきるだろうし……そういうことを若わかいときに考かんがえたことがあったんですよ。この先さき、長ながく音楽おんがくをやっていくことを考かんがえると、いろいろやれたほうがいいだろうなと。

はっとり　先さきを見据みすえて、楽たのしくなくなったり、やりづらくならないように。

奥田おくだ　そうそう。メンバーに曲きょくを作つくってほしいと言いったのもそうだし、ちょっとずつ違ちがう方向ほうこうの曲きょくを増ふやして。「1回かいやったことはやらない」と決きめてたし、結果けっか、それがよかったんじゃないかなと。

はっとり　確たしかに「ブルース」みたいな曲きょくをシングルにできるのはすごいですよね。それまでに強つよい曲きょくがいくつもあったから、そういうことができたんでしょうね。

奥田おくだ　その頃ころはもう、レコード会社かいしゃも事務所じむしょも「まあ、しょうがねえか」という感かんじになってたから（笑）。

はっとり　僕ぼくも同おなじようなことを考かんがえることがありますね。YouTubeで一番いちばん再生さいせいされてる曲きょくは「ブルーベリー・ナイツ」なんですけど、「『hope』に似にたような曲きょくを入いれるのはやめよう」と思おもいました。「いろいろやれるんだぜ」ということを早はやい段階だんかいで見みせておきたいし、僕ぼくも楽たのしくなくなるのはイヤなので。

奥田おくだ　そう考かんがえると、フルアルバムっていいよね。ちゃんとした曲きょくが2つくらいあれば、あとは好すきにやれるから。変へんな曲きょくがあってもいいんですよ。そういう曲きょくがないと、“押おして、引ひく”みたいなこともできないでしょ。1曲きょくの中なかでそれをやる方法ほうほうもあるけどね。

はっとり　そうですね。途中とちゅうで変へんな展開てんかいになって、また戻もどるっていう。「2曲きょく作つくればいい」と言いわれたりするけど、そういうことじゃないんですよね。

奥田おくだ　うん。俺おれも「いいメロディが1回かいだけ出でてくる」とか「最後さいごに違ちがうメロディが出でてくる」みたいな作つくり方かたが好すきだった。最近さいきんは、別べつの曲きょくにするけどね。アイデアがもったいないから（笑）。

いつか共演きょうえんしたい

──「hope」というアルバムのタイトルについては？

はっとり　ちょっと恥はずかしいタイトルですけど、わかりやすい希望きぼうを歌うたっているというより、報むくわれない人ひとたちが幸しあわせを探さがしている最中さいちゅうというか。「ヤングアダルト」の「ハロー、絶望ぜつぼう」という歌詞かしがファンの人ひとたちの間あいだで定着ていちゃくしているので、「次つぎは希望きぼう」という安直あんちょくさもありますが、「絶望ぜつぼうの裏うらにある希望きぼうに気付きづいてほしい」という気持きもちもあって。アルバムができあがったとき、このタイトルにしてよかったと思おもいました。

奥田おくだ　タイトルを決きめるのは大変たいへんだよね。ユニコーンも最後さいごの最後さいごまで決きまらず、「これでいいよ」ということが多おおいんですよ。復活ふっかつして最初さいしょのアルバム（2009年ねん2月がつ発売はつばいの「シャンブル」）は、打うち合あわせしてた店みせの名前なまえだから。

はっとり　あ、そうなんですか。それはそれで熱あつい（笑）。

奥田おくだ　ぜんぜん浮うかばなくて、「この店みせの名前なまえでいいよ」って（笑）。投なげやりだけど、まあ、悪わるくはないよね。曲名きょくめいもそう。「イージュー★ライダー」とか、どうなのよ？って。

はっとり　いやいや、そのタイトルで定着ていちゃくしてますから。

奥田おくだ　“マカロニえんぴつ”という名前なまえとかも、この先さきもしかしたら「やめときゃよかった」って思おもうかもよ（笑）。

はっとり　今こん現在げんざい、ちょっと思おもってますね（笑）。SNSでエゴサーチすると、「名前なまえで聴きかず嫌きらいしてたけど、聴きいてみたら案外あんがいよかった」みたいな人ひとが多おおくて。覚おぼえやすいわけでもないし。

──さらにブレイクすれば、バンド名めいも浸透しんとうすると思おもいます。今後こんごのマカロニえんぴつに対たいして、民生たみおさんから言いえることがあるとすれば？

奥田おくだ　フルアルバム2枚まい目めでしょ？ 自分じぶんたちのことを振ふり返かえってみると、バンドとして認みとめられたいのはもちろん、曲きょくを作つくる人ひととして、個人こじんとしても認みとめられたくて。その欲求よっきゅうが解散かいさんにつながったのかもしれないけど……もちろん、それだけが理由りゆうじゃないですけどね。でも復活ふっかつしてみたら、今度こんどは誰だれもが「俺おれが俺おれが」と言いわなくなって。ここまでの歴史れきしを1つの例れいとして、参考さんこうにしてもらえればと（笑）。まあやってみたいことはどんどんやったほうがいいんじゃないかな。

はっとり　まずは自分じぶん自身じしんとマカロニえんぴつを磨みがくしかないですね。去年きょねんの「レディクレ」でお会あいしてから、3日間にちかんくらいは体からだがフワフワしてたんですけど、今いまは「いつか共演きょうえんしたい」と思おもっています。もちろん、変かわらず憧あこがれの存在そんざいでもあるんですけど。でも今こんこうやって民生たみおさんと話はなしができているということで、今いままで自分じぶんたちがやってきたことは間違まちがいじゃなかったんだなと思おもえました。