既存きそんのReolを壊こわしてアップデートするための環境かんきょう

──今年ことしは春はるにツアーがあり、その後ごは新曲しんきょくやリミックスの配信はいしんが続つづきました。レーベルの移籍いせきが5月に発表はっぴょうされましたが、今いまの体制たいせいになったのはどのタイミングからですか？

ソニーに移籍いせきしてから今いまのチームで初はじめて回まわったのが5月のツアーで、その流ながれで出でた「赤裸裸せきらら」が新あらたなる1歩ほ目めのような感かんじでした。世よの中なかみんなそうだと思おもうんですけど、コロナ禍かで1回かいすべてが止とまったことによって「果はたして本当ほんとうに今いまの流ながれでいいのかな？」ということをすごく考かんがえて。別べつにどこのレーベルに身みを置おくことがいいとかそういうことより、何なにかを作つくって世よの中なかにリリースするようなサイクルをずっと続つづけるのは健康けんこう的てきなことなのかな？みたいな。

──はい。

私わたしにとってはその「何なにか」が“音楽おんがく”というものであり続つづけるために、楽たのしくやっていきたい。個人こじん的てきには、楽たのしんでやれているかどうかがすごく楽曲がっきょくに反映はんえいされるタイプだなと思おもっていて。ノリノリで「できちゃった」みたいに生うまれた曲きょくのほうがリスナーにも気きに入いっていただけている手応てごたえもあるし。あまりフィクションみたいなものからインスパイアされて楽曲がっきょくを作つくるタイプじゃなくて、そのときの私わたしがどういうテンション感かんなのか、何なにを考かんがえているのかが楽曲がっきょくに出でてしまうタイプなので、「楽たのしくするためには？」みたいなことを考かんがえて、新あたらしい環境かんきょう作づくりを模索もさくしていました。

──そういう逡巡しゅんじゅんを経へたうえで得えた今いまの環境かんきょうは、つまり理想りそうに近ちかい形かたちであると。

そうですね。そこそこのキャリアになってくると、いろんなことをディスカッションして物事ものごとを決きめたくなるんです。活動かつどうを始はじめた頃ころから「金字塔きんじとう」（2020年ねん1月がつ発売はつばいの2ndフルアルバム）くらいまでは「私わたしが作つくりたい場所ばしょで私わたしが作つくりたいものを作つくる。自分じぶんの中なかにはこういう美学びがくがあってこういうものが作つくりたい、絶対ぜったいこれ」「だからこれをできる人ひとを」といったスタッフィングでした。キャリアを重かさねていく中なかで、私わたし1人ひとりのワンマンではなくもっと拡大かくだいしていくためには、“Reolである私わたしよりもReolになりきって意見いけんを言いってくれる”スタッフが欲ほしいなと考かんがえるようになって。プロデューサーはずっと私わたしなんですが、それに対たいして反対はんたい意見いけんが出でても全然ぜんぜんいいと思おもうし、「この人ひとたちと一緒いっしょに作つくっている」と自覚じかくできるメンツが欲ほしい感覚かんかくに自然しぜんとなりました。

──主観しゅかんも俯瞰ふかんもフラットに織おり交まぜたReol像ぞうを求もとめてきていると。

はい。デビューして5、6年ねん目めとかまではReolを確立かくりつするために「Reolというアーティストはこういう音楽おんがく性せいでこういうライブをしますよ、こういうカラーの人ひとです」ということをわかってもらおうとがんばっていましたが、ここからはそれを壊こわしつつアップデートしていく作業さぎょうに入はいると思おもっています。自分じぶん1人にんだけがアイデアマンである危あやうさをずっと感かんじながらやっていた部分ぶぶんもあるので、常つねに新あたらしいことをするために信頼しんらいできるチームと出会であえたのがたまたまこのタイミングだったのかな。

ちゃんと尖とがり続つづけてソリッドなものを生うみ出だし続つづける決意けつい

──制作せいさくの布陣ふじんもそうですし、より開ひらかれてきている印象いんしょうはあります。

そうですね。タイアップに関かんしての考かんがえもそうで、Reolというブランドを確立かくりつする前まえから振ふり回まわされて、作品さくひんを出だしたときに全部ぜんぶちぐはぐな「この人ひとって結局けっきょくどれがやりたいことなんだろうね」というふうにはなりたくなかった。1回かいちゃんと「私わたしはこういうものを売うっている店みせです」と見みせることができれば、そこにあとからいろんなものが並ならぼうが「こういうこともできたんだ」とお客きゃくさんに思おもってもらえるけど、最初さいしょからバラバラのテイストのものが店先みせさきに並ならんでいたら、この人ひとはどれがやりたいんだろう？って思おもっちゃうだろうから。今いまは自分じぶんがどういう楽曲がっきょくが得意とくいで、どういうところが不得意ふとくいかがわかるので、それをより理性りせい的てきにコントロールするフェーズという感かんじですね。

──要ようはなんでも出だせる和洋折衷わようせっちゅうの創作そうさく料理りょうり居酒屋いざかやみたいなお店みせには惹ひかれない、といったことですよね。

そうです。結局けっきょく何なにを置おいている店みせかわからないから行いかない、みたいな。それが器用きようにできる方ほうだったらいいと思おもうんですけど、私わたしは個性こせい派は寄よりの人間にんげんだから、ちゃんと尖とがり続つづけてソリッドなものを生うみ出だしていかないといけないなっていう意識いしきがあった。最近さいきんすごく考かんがえるのは、適材適所てきざいてきしょだなということ。トップチャートに向むき合あうときも「何なにがウケていて、この人ひとの曲きょくのどこがいいと思おもわれているんだろう？」と思おもって聴きいているので、「私わたしがその楽曲がっきょくを歌うたっていれば」のようには考かんがえないし、意味いみがないというか。私わたしには私わたしにしか対話たいわできないリスナーがいて、私わたしの音楽おんがくでなければ深ふかいところまで刺ささらない人ひともいる。でも別べつのアーティストの曲きょくがクリティカルヒットする人ひとももちろんいる。もっと言いえば、私わたしのリスナーに向むけて「こういう曲きょくが刺ささるから」といってその焼やき直なおしを出だしてればいい、みたいなことも絶対ぜったい嫌いやなわけですよ。ちゃんとReolとして新あたらしい側面そくめんを見みせながら続つづけていきたい、ということをすごく考かんがえています。

初はつアルバムが「極彩色ごくさいしょく」で初はつシングルが「COLORED DISC」

──直近ちょっきんのリリースは単たん曲きょく配信はいしんが続つづいていて、今いま作さくで初はつのCDシングルをリリースすることになりました。こういったリリースのスパンや形態けいたいはあらかじめ定さだめていたものなんですか？

事前じぜんにしっかり計画けいかくしていたわけではなく、今こん必要ひつようなものをリリースしてきた感覚かんかくですね。今回こんかいのシングルのタイミングに関かんしては、最初さいしょアルバムにしようかという議論ぎろんもありました。ただ、今いまは新あらたな側面そくめんを見みせたい時期じきというのが強つよくあって、まずは今いままでの私わたしの楽曲がっきょくにありそうでなかったところを埋うめられるシングルを切きりたいなと思おもったところから、先行せんこう配信はいしんされている「赤裸裸せきらら」「煽あおげや尊とうとし」と「COLORED DISC」を作つくることに決きめました。

──動画どうがや配信はいしんなど、フィジカルではないリリースをこれまでたくさんしてきた中なかで、CDでシングルを出だす際さい、そこにどんな付加ふか価値かちを付つけるかということも考かんがえてきたと思おもいます。コンセプチュアルな作品さくひん性せいであったりアートワークであったり、シングルを出だすに当あたってはどう考かんがえていましたか？

シングルを作つくるという作業さぎょうは初はじめてでしたが、3曲きょく入いりなので以前いぜん作つくった「文明ぶんめいEP」という4曲きょく入いりのEPにちょっと近ちかい感かんじだなあとは考かんがえていて。でもEPではなくシングルと謳うたっている以上いじょうはこの3曲きょくで完成かんせいする世界せかい観かんではなく、いろいろ吸収きゅうしゅうしてきた自分じぶんがアウトプットしたいものを抽出ちゅうしゅつして、まだ自分じぶんが作つくったことのない1曲きょく1曲きょくを作つくるイメージでした。ストック曲きょくもありましたが、私わたしはあまり今回こんかいの収録しゅうろく曲きょくをストックから出だしたくなくて……なんでなんですかね？ ありものをコーディネートするんじゃなくて、「COLORED DISC」というシングルの中なかに入いれるならこういう楽曲がっきょくたちがいいだろうと考かんがえて、あとから足たしていくのが私わたしのもの作づくりのやり方かたなんですよね。できあがっている曲きょくをまとめたものを、アルバムとかシングルって言いいたくなくて。なんでかわからないですけど、外そと枠わくから作つくりたい。

──タイトルも先さきに決きめました？

今回こんかいはあと付づけで、どういう名前なまえにしようかめちゃくちゃ悩なやみました。「赤裸裸せきらら」や「煽あおげや尊とうとし」といったタイトル付づけでは意図いと的てきに「アカ」や「アオ」という言葉ことばを入いれていて。今回こんかいのリリースはビビッドなものでありたくて、有ゆう彩色さいしきでギラッとした感かんじの……アートワークとかもそういう色味いろみにしてもらっているんですけど、ちょっと攻撃こうげき的てきな感かんじを想定そうていしてました。あとは頭文字かしらもじを取とったら「CD」なのもウケるねっていう（笑）。

──ああ！

私わたしの音楽おんがくって私わたしの分身ぶんしんというか。私わたし自身じしんが多分たぶんパンチがあるほう……淡あわくて自然体しぜんたいでというよりはビビッドでアウトラインとかバチバチみたいな感かんじの人間にんげんなので、自分じぶんにハマるワードだなって思おもいます。あとは最初さいしょに出だしたメジャーアルバムが「極彩色ごくさいしょく」というタイトルだったんですけど、その頃ころから「色いろ」をコンセプトにすることが好すきで。ここで初はじめて出だすシングルが「COLORED DISC」で初はじめて出だしたアルバムが「極彩色ごくさいしょく」、共通きょうつうしたものはありつつも進化しんかしている感かんじも気きに入いって付つけました。

──音おとを聴きいた印象いんしょうとしてはすごく質感しつかんがクールだと思おもったんですよ。

おお！ 確たしかにそうなりましたね、結果けっか的てきに。収録しゅうろくするのが3曲きょくだけだし、かわいげのある楽曲がっきょくは「第六感だいろっかん」のときに「Nd60」でやったかなと思おもったので、やってないことを突つき詰つめた結果けっかこうなりました。「SCORPION」は、ここまでヒップホップ色しょくをブーストした曲きょくはなかったし、「secret trip」では日本にっぽんだとまだ取とり入いれてる人ひとがたまにいるくらいのここ数すう年ねんの1980年代ねんだいのリバイバル感かんをやってみたくて。「感情かんじょうが群むれを成なすパレイド」も、曲きょく中ちゅうでここまで曲調きょくちょうが変かわるものってあまりないからやりたいなという。今いままでにないけど私わたしがやりたくなったことをやった感かんじですね、全部ぜんぶ。

本家ほんけの人ひとたちと渡わたり合あえるようになった

──具体ぐたい的てきにどう作つくるのか、誰だれと作つくるのかという部分ぶぶんの進すすめ方かたは？

「SCORPION」は、タイアップ先さきであるゲームの「Riot Games ONE」と「VALORANT」というお題だいをいただいた時点じてんで、ヒップホップのバババッと言葉ことばが並ならぶ感かんじと銃じゅうを連射れんしゃする感かんじが情景じょうけいとしてシンクロしたんですね。畳たたみかける系けいのラップをしたいというオーダーにハマりそうな、キックとかの音おとの強つよい人ひとを考かんがえると、ビートはマサヨシ（Masayoshi Iimori）がいいかなって。

──なるほど。

「secret trip」は、ジャスティン・ビーバーとザ・キッド・ラロイの「STAY」のような……疾走しっそう感かんのある楽曲がっきょくもいいけど、ザ・ウィークエンドの「Blinding Lights」みたいな夜よるのキラキラした感かんじもいいなあとかいろいろ考かんがえて、どっちかというと後者こうしゃをやってみたいと思おもっていました。私わたし、ずっとf(x)が好すきで、ちょうど自分じぶんがユニットをやってエレクトロサウンドを作つくっていたときに聴きいていたんですが、そのめちゃくちゃ好すきだったサウンドメイカーがLDN NOISEで、ずっと一緒いっしょにやりたいと思おもっていて。

──Reolさんにとってルーツのような存在そんざいですか？

そうですね、もはや。感慨かんがい深ふかいですよね、あの頃ころ聴きいてた音おとを手てがけていた人ひとが、今いまのReolだったら一緒いっしょにやってくれるんだ！っていうのがアツいなって思おもいます。当時とうじ声こえをかけてても「誰だれ？」って言いわれてたんだろうなとか思おもいますし。

──仮かりにコラボできたとしても、こういうものにはなっていなかったでしょうし。

そういう楽たのしさはかなりあるかもしれないですね。自分じぶんが聴きいて育そだってきた音楽おんがくの“御ご本家ほんけ”みたいな人ひとたちと渡わたり合あって会話かいわができるスキルが自分じぶんの中なかにちゃんと宿やどった。それをやりつつ、マサヨシとか自分じぶんの同どう世代せだいくらいの「いいもの作つくるな」って思おもう人ひとを引ひっ張ぱってメインストリームに出だす役割やくわりも同時どうじにやりたいし。とにかく自分じぶんが「いい」と思おもったもので固かためたい（笑）。