ニュース

イヌやネコはなぜ死しんだ飼かい主ぬしを食たべるのか

ペットが飢うえるよりいいという飼かい主ぬしも、実じつはハムスターや鳥とりの記録きろくすら

2024.04.22

どの子こが好すき？愛あいらしいイヌたちの写真しゃしん10点てん（写真しゃしんクリックでギャラリーページへ）

イエローのラブラドール・レトリバー。（PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK）

　1997年ねん、ドイツ、ベルリンの科学かがく捜査そうさ官かんが、ある珍めずらしい事件じけんに関かんする論文ろんぶんを学術がくじゅつ誌し「Forensic Science International」に投稿とうこうした。事件じけんの夜よる、31歳さいの男性だんせいが母親ははおやの家いえの裏庭うらにわにある、物置ものおきを改装かいそうした小屋こやにこもっていた。彼かれはそこで飼かいイヌのジャーマン・シェパードと一緒いっしょに暮くらしていた。

　午後ごご8時じ15分ふん頃ごろ、小屋こやのほうで銃声じゅうせいが鳴なったのを、近隣きんりんの人々ひとびとが耳みみにした。

　45分ふん後ご、その男性だんせいが拳銃けんじゅうで口くちを撃うち抜ぬいて死しんでいるところを母親ははおやと隣人りんじんたちが発見はっけんした。男性だんせいの手てにはワルサーの拳銃けんじゅうが、テーブルの上うえには遺書いしょが置おかれていた。

　その後ご、警察官けいさつかんがさらに驚おどろくべきものを発見はっけんした。彼かれの顔かおと首くびの大半たいはんは消きえ失うせ、傷きずの縁えんには歯は型がたが付ついていた。

　理由りゆうはすぐにわかった。シェパードが飼かい主ぬしの体からだの組織そしきを吐はき戻もどしたのだ。その中なかにはひと目めでヒゲとわかる毛けの生はえた皮膚ひふも含ふくまれていた。

　イヌは生いき延のびるために飼かい主ぬしを食たべたわけではない。なぜなら、警察官けいさつかんが到着とうちゃくしたとき、床ゆかには半分はんぶんまで餌えさが入はいったイヌ用ようの皿さらが置おかれていたからだ。だとすると、嫌いやな考かんがえが頭あたまに浮うかぶ。結局けっきょくのところ、イヌは彼かれにあまり忠実ちゅうじつではなかったのだろうか。

　2023年ねん12月に学術がくじゅつ誌し「Forensic Science, Medicine and Pathology」に発表はっぴょうされた論文ろんぶんにある通とおり、ペットが死しんだ飼かい主ぬしの体からだを食たべる事件じけんが論文ろんぶんになるケースは少すくなく、どのくらいの頻度ひんどで起おこっているのか正確せいかくなところはわからない。

　だが、科学かがく捜査そうさ関連かんれんの学術がくじゅつ誌しには、そうしたケースが数すう十じゅう件けん報告ほうこくされている。これらの記録きろくからは、ペットは私わたしたちを食たべるものなのか？　いずれにしろ私わたしたちは本当ほんとうに単たんなる餌えさになるのか？　など、ほとんどの飼かい主ぬしがまじめに考かんがえたくもないような状況じょうきょうが見みえてくる。

　同時どうじに、科学かがく捜査そうさにおける動物どうぶつ行動こうどう学がくからは、そうした疑問ぎもんへの答こたえや、ペットの視点してんを欠かいていると、彼かれらの行動こうどうを私わたしたちがどれほど誤解ごかいしてしまうのかも明あきらかにしてくれる。ここでは、科学かがく捜査そうさの証拠しょうこからこれまでにわかったことを紹介しょうかいしよう。