そもそもなぜ1にち8あいだしゅう5にちしゅう40あいだ労働ろうどう標準ひょうじゅんてきなのか

米国べいこくしゅう4にち勤務きんむ検討けんとうちゅう、いまの「たりまえ」が定着ていちゃくした歴史れきしかえ

2023.03.28
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1927年頃、米デトロイトのフォード・モーター社の工場内で、自動車のボディの組立ラインで働く男性たち。実業家ヘンリー・フォードは、現代では当たり前になっている週5日勤務制の普及に貢献した。(PHOTOGRAPH BY POPPERFOTO, GETTY IMAGES)
1927ねんごろべいデトロイトのフォード・モーターしゃ工場こうじょうないで、自動車じどうしゃのボディの組立くみたてラインではたら男性だんせいたち。実業じつぎょうヘンリー・フォードは、現代げんだいではたりまえになっているしゅう5にち勤務きんむせい普及ふきゅう貢献こうけんした。(PHOTOGRAPH BY POPPERFOTO, GETTY IMAGES)
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 しゅう最大さいだい労働ろうどう時間じかん現在げんざいの40あいだから32あいだとする法案ほうあんが、米国べいこく議会ぎかいさい提出ていしゅつされたのは3がつ上旬じょうじゅんのこと。しゅう4にち勤務きんむせい採用さいようするべきかどうかは、なんねんものあいだ米国べいこく人々ひとびとつよ関心かんしんまととなってきた。

 だが、そもそもなぜしゅう40あいだはたらくことをもとめられているのだろうか。土曜日どようび日曜日にちようびせいなる休日きゅうじつとされている理由りゆうはなんだろうか。こうした概念がいねん職場しょくば常識じょうしきとなった経緯けいい紹介しょうかいしよう。

なぜしゅう5にちはたらくのか

 なに世紀せいきものあいだ米国べいこく雇用こようぬししゅうごとのやすみをもうけることなく、労働ろうどうしゃ長時間ちょうじかんはたらかせていた。しかし19世紀せいき初頭しょとうおおくの雇用こようぬし日曜日にちようびやすみとすることをみとめるようになった。その背景はいけいには、「サバタリアン(安息日あんそくび厳守げんしゅ主義しゅぎしゃ)」とばれるキリスト教徒きりすときょうとによるロビー活動かつどう影響えいきょうがあった。

 かれらは郵便ゆうびんきょくはじめとして、さまざまな業界ぎょうかいにおいて、安息日あんそくびには業務ぎょうむやすむことを義務付ぎむづける法律ほうりつもうけるようつよもとめた。かれらは、キリスト教徒きりすときょうとだい4戒によって、せいなるには旅行りょこう仕事しごと気晴きばらしの娯楽ごらくさえもひかえなければならないのだと主張しゅちょうした。

 ところが、ユダヤじん労働ろうどうしゃにとっての安息日あんそくび日曜日にちようびではなく土曜日どようびだったことから、職場しょくば対立たいりつしょうじた。20世紀せいき初頭しょとうには、一部いちぶ工場こうじょうが、従業じゅうぎょういん宗教しゅうきょうてき信条しんじょう配慮はいりょして、土曜日どようび日曜日にちようび両方りょうほう休日きゅうじつとするようになった。

1952年7月31日、労働条件に抗議して市庁舎の周囲をトラックでまわるニューヨーク市の公衆衛生労働者たち。彼らは当時の週6日48時間勤務制に代わり、週5日40時間制の導入を訴えていた。(PHOTOGRAPH BY BETTMANN, GETTY IMAGES)
1952ねん7がつ31にち労働ろうどう条件じょうけん抗議こうぎして市庁舎しちょうしゃ周囲しゅういをトラックでまわるニューヨーク公衆こうしゅう衛生えいせい労働ろうどうしゃたち。かれらは当時とうじしゅう6にち48あいだ勤務きんむせいわり、しゅう5にち40あいだせい導入どうにゅううったえていた。(PHOTOGRAPH BY BETTMANN, GETTY IMAGES)
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 なかでも、週休しゅうきゅう2にちという概念がいねん実施じっしはじめてだい規模きぼこころみたのは、ヘンリー・フォードだ。1922ねんかれはフォード・モーターしゃ従業じゅうぎょういんたいし、しゅう5にち40あいだ勤務きんむせい導入どうにゅうし、土曜どよう日曜にちようには工場こうじょう閉鎖へいさするとげた。

 勤務きんむ減少げんしょうは、給料きゅうりょうにも影響えいきょうおよぼした。フォードは日給にっきゅう設定せっていしたが、それはこれまですくないやすみではたらいてきた従業じゅうぎょういんたちにとって減給げんきゅうひとしいものだった。

 フォードの計画けいかくは、週末しゅうまつ定義ていぎについて全国ぜんこくてき議論ぎろんこした。おおくの雇用こようぬし新聞しんぶん反対はんたい表明ひょうめいし、ニューヨーク・ヘラルドは1922ねん、「フォードの計画けいかくは、仕事しごと最低限さいていげんにまでらしたいとかんがえるすべてのひとたちにとってよろこばしいニュースだろう」といている。

 それでも、フォードのこころみは成功せいこうした。フォードによると、同社どうしゃ工場こうじょう以前いぜんわらない生産せいさんせい維持いじし、労働ろうどう時間じかんみじかくなったことで、従業じゅうぎょういんかせいだおかねをよりおお地域ちいき社会しゃかい消費しょうひできるようになったという。この変化へんかのおかげで教会きょうかいひとえたと、フォードはべている。労働ろうどう運動うんどうによる圧力あつりょくたすけもあり、じきにほかのだい企業きぎょうがこれにつづき、1930年代ねんだいにはしゅう5にち勤務きんむせい社会しゃかい定着ていちゃくした。

なぜ1にち8あいだはたらくのか

 18世紀せいきまつ産業さんぎょう革命かくめい黎明れいめい工場こうじょう技術ぎじゅつ発展はってんによって経済けいざいおおきく変化へんかしつつあった欧州おうしゅう国々くにぐにでは、長時間ちょうじかん労働ろうどうたりまえとなっていた。その結果けっか労働ろうどうりょうえ、労働ろうどうしゃ搾取さくしゅえた。

工場こうじょうはたらどもたちは、朝日あさひがのぼりいちにちけるよりもずっとはやしてくる。なかにはくつ靴下くつしたいていないもおり、つかったからだきずって、あめゆきれながら、キリスト教徒きりすときょうとまちマンチェスターのとおりをあるいていく」。1857ねん発表はっぴょうした英国えいこく労働ろうどう運動うんどうなかで、サミュエル・H・G・キッドはそういている。

 しかし1830年代ねんだい労働ろうどうしゃはたら時間じかん制限せいげんする法律ほうりつ要求ようきゅうするようになった。「時短じたん委員いいんかい」がイングランド全域ぜんいき公聴こうちょうかいひらいて1にち10あいだ労働ろうどう提唱ていしょうし、1847ねん、ついに工場こうじょうほうにおいてこれを実現じつげんさせた。

ページ:8あいだ労働ろうどうしゅう40あいだ定着ていちゃくしたいきさつ

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