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宇宙広場で考える: 上川法務大臣のおどろくべき発言 拷問を送還の手段にもちいることはゆるされるのか?

2021ねん3がつ10日とおか

上川かみかわ法務大臣ほうむだいじんのおどろくべき発言はつげん 拷問ごうもん送還そうかん手段しゅだんにもちいることはゆるされるのか?


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 上川かみかわ陽子ようこ法務大臣ほうむだいじんが3がつにち閣議かくぎ記者きしゃ会見かいけんでおどろくべき発言はつげんをしている。


法務省ほうむしょう法務大臣ほうむだいじん閣議かくぎ記者きしゃ会見かいけん概要がいよう


 この会見かいけん入管にゅうかんほう改定かいていかんする質疑しつぎ応答おうとうで、上川かみかわ大臣だいじんはいくつか問題もんだいのある発言はつげんをしているが、ここでは、つぎの発言はつげんについてのみとりあげたい。


 2てん収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんもうけるということについてでありますが,収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんもうけますと,送還そうかんをかたくなに忌避きひし,収容しゅうよう期間きかん上限じょうげん経過けいかしたもの全員ぜんいん収容しゅうようかざるをなくなるということになります。また,収容しゅうようかれることを期待きたいしての送還そうかん忌避きひ誘発ゆうはつするおそれもあるということでありまして,適当てきとうではないとかんがえたところでございます。


 昨年さくねん日本にっぽん政府せいふ国連こくれん人権じんけん理事りじかい恣意しいてき拘禁こうきん作業さぎょう部会ぶかいから、収容しゅうよう期間きかん上限じょうげん設定せっていしていない現行げんこう制度せいど国際こくさい人権じんけん規約きやく違反いはんであるとの指摘してきけている。こうした指摘してき現在げんざい政府せいふ法案ほうあんには反映はんえいされていないではないか、という記者きしゃ質問しつもんけての応答おうとうが、うえ引用いんようした大臣だいじん発言はつげんである。


 上川かみかわ大臣だいじんの「収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんもうけますと,送還そうかんをかたくなに忌避きひし,収容しゅうよう期間きかん上限じょうげん経過けいかしたもの全員ぜんいん収容しゅうようかざるをなくなるということになります」という言葉ことばについては、なにをっているのだ、全員ぜんいん収容しゅうようけばいいじゃないか、それが上限じょうげんをもうけるということだろう、としかいようがないが、問題もんだいはつぎの一文いちぶんである。


 大臣だいじんは、「[収容しゅうよう上限じょうげんをもうけると]収容しゅうようかれることを期待きたいしての送還そうかん忌避きひ誘発ゆうはつするおそれもあるということでありまして,適当てきとうではないとかんがえたところでございます」とべている。これはようするに、たとえば6かげつなら6かげつ収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんをもうけると、いま制度せいどでは送還そうかんおうじるはずのひとおうじなくなってしまうからこまるとっているわけだ。上限じょうげん設定せっていされ、いつ収容しゅうようしょからられるのかわかってしまうと、出国しゅっこく強要きょうようするのにさしつかえがてくるのだ、と。


 この発言はつげんは、政府せいふはこれまで期限きげん長期ちょうき収容しゅうよう出国しゅっこく強要きょうよう手段しゅだんとしてもちいてきたし、今後こんごもそうするつもりなんだと、法務大臣ほうむだいじんみずからが公式こうしきにみとめたということだ。いつ収容しゅうようから解放かいほうされるのかわからないという状況じょうきょう人間にんげん長期間ちょうきかんおき、そうして苦痛くつうあたえることで、相手あいて意思いしえさせようとする。そのためにあえて収容しゅうよう期間きかん上限じょうげん設定せっていしないのだと法務大臣ほうむだいじん自身じしんが、率直そっちょくにみとめたのである。


 まあ、そんなことはわたしもまえからわかってはいましたよ。入管にゅうかん施設しせつ長期間ちょうきかん収容しゅうようされたことのあるひとも、おそらくみんな、収容しゅうよう自分じぶんたちを「帰国きこく」にいこむための拷問ごうもんであることは理解りかいしている。しかし、おどろいたのは、上川かみかわ法務大臣ほうむだいじんがそのことをはっきりと正直しょうじき言明げんめいしたというてんである。これは、日本にっぽん政府せいふがこれまで建前たてまえとしてきたことをひっくりかえすものではないだろうか。


 前々回ぜんぜんかい記事きじでも引用いんようしたが、国連こくれん拷問ごうもん禁止きんし委員いいんかいたいする日本にっぽん政府せいふ回答かいとう(2011ねん7がつ)をあらためていておきたい。


 入管にゅうかんほうじょう難民なんみん認定にんてい申請しんせいちゅうもの送還そうかん禁止きんしされているところ,収容しゅうようちゅう難民なんみん認定にんてい申請しんせいや,難民なんみん認定にんてい申請しんせいかえおこな場合ばあいなどにより,近年きんねん収容しゅうよう長期ちょうきする傾向けいこうにあることをまえて,2010ねんがつから,退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょはつされたのち相当そうとう期間きかん経過けいかしても送還そうかんいたっていない収容しゅうようしゃについては,かり放免ほうめん請求せいきゅう有無うむにかかわらず,入国にゅうこくしゃ収容しゅうよう所長しょちょうまた主任しゅにん審査しんさかん一定いってい期間きかんごとにそのかり放免ほうめん必要ひつようせい相当そうとうせい検証けんしょう検討けんとううえ,その結果けっかまえ,収容しゅうようしゃ個々ここ事情じじょうおうじてかり放免ほうめん弾力だんりょくてき活用かつようし,収容しゅうよう長期ちょうきをできるだけ回避かいひするようんでいることから,長期ちょうき収容しゅうようしゃは,減少げんしょう傾向けいこうにある。(太字ふとじによる協調きょうちょう引用いんようしゃ


 これが、収容しゅうよう長期ちょうき問題もんだいかんする日本にっぽん政府せいふ公式こうしき立場たちばであった1


 すなわち、政府せいふは、

  • 収容しゅうよう長期ちょうき回避かいひすべきである
  • それは、かり放免ほうめん弾力だんりょくてき活用かつようによって回避かいひすべきである

ということを建前たてまえとしてきたのである。


 いわば「長期ちょうき収容しゅうようはわざとじゃないんです」「難民なんみん申請しんせいによって送還そうかんできなくなったりするために収容しゅうよう長期ちょうき”しちゃってるんです」というのがこれまでの日本にっぽん政府せいふのスタンスだったのだ。


 ところが、法務大臣ほうむだいじんはこのたびこれをひっくりかえして、ひらなおってみせた。いつれるかわからない状態じょうたいなが収容しゅうようすることで、送還そうかん忌避きひしゃ出国しゅっこくいこめるんですよ、収容しゅうよう期限きげん上限じょうげんきめたらかえひとかえらなくなっちゃうじゃないですか、と。期限きげん長期ちょうき収容しゅうようわざとやっていること、これを出国しゅっこく強要きょうよう手段しゅだんとして自覚じかくてき戦略せんりゃくてきにもちいているのだということを、大臣だいじんはぶっちゃけてくれた。


 ひとながいあいだとじこめて、希望きぼうをうばい、くるしみあたえる。いたいめにあわせることによって、相手あいて意志いしをコントロールし、その行動こうどうえようとする。期限きげん長期ちょうき収容しゅうようによって日本にっぽん政府せいふがやっているのは、それである。これを拷問ごうもんぶのは、比喩ひゆでもなければ誇張こちょうでもない。だんじて人間にんげんたいしてやってよい行為こういではない。この出国しゅっこくひといこむ手段しゅだんとしての収容しゅうようは、送還そうかんまでの「逃亡とうぼう」を防止ぼうしするための「身柄みがら」の確保かくほという、入管にゅうかんほうによってあたえられている権限けんげん趣旨しゅしからも完全かんぜん逸脱いつだつしている。


 刑罰けいばつ教育きょういくどものしつけであっても、残虐ざんぎゃくひょうされる手段しゅだんをもちいることはゆるされない。ましてや、退去たいきょ強制きょうせい強制きょうせい送還そうかん)は、刑罰けいばつでも教育きょういくでもない。いたずらにひとくるしめ、きずつけるような方法ほうほうでしかこれを執行しっこうできないのなら、その執行しっこう断念だんねんすべきなのだ。


 こん国会こっかいでは、政府せいふ法案ほうあんとはべつに、野党やとう6とう立憲りっけん民主党みんしゅとう共産党きょうさんとう国民こくみん民主党みんしゅとう沖縄おきなわふう、れいわ新選しんせんぐみ社民党しゃみんとう)も共同きょうどうで、入管にゅうかんほう改定かいていあん難民なんみん保護ほご法案ほうあんとともに提出ていしゅつしている。野党やとうあんでは、収容しゅうようについて裁判官さいばんかん判断はんだん必要ひつようとするようにあらため、収容しゅうよう期間きかん最長さいちょうで6かげつとしている。


 入管にゅうかん収容しゅうよう送還そうかんをめぐる問題もんだいかんがえるうえで、収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんをさだめるかどうかということは、決定的けっていてき重要じゅうよう争点そうてんである。それは、拷問ごうもん送還そうかんのための手段しゅだんとしてもちいることを許容きょようするのかしないのかということにほかならない。収容しゅうよう他者たしゃいためつける手段しゅだんにしないというのならば、法律ほうりつ収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんをさだめることに反対はんたいする理由りゆうがないのだ。


 政府せいふ長期ちょうき収容しゅうよう問題もんだい解決かいけつ大義名分たいぎめいぶんにして入管にゅうかんほう改定かいていあんをうちだしながら、そこでも収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんをもうけることを回避かいひしている。さきにみた上川かみかわ発言はつげんからもあきらかなとおり、これは拷問ごうもん手段しゅだんとする送還そうかん政策せいさく今後こんごもつづけるということだ。こういったはん人権じんけんうべき送還そうかん政策せいさくいちにちはや断念だんねんさせるために、政府せいふ法案ほうあん廃案はいあんむことがその出発しゅっぱつてんになるはずだ。



ちゅう

1: 引用いんようした日本にっぽん政府せいふ回答かいとうは、これとどう趣旨しゅし法務省ほうむしょう入国にゅうこく管理かんり局長きょくちょう通達つうたつ退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょにより収容しゅうようするものかり放免ほうめんかんする検証けんしょうとうについて」(2010ねん7がつ27にち)にもとづいたものである。ところが、法務省ほうむしょう入管にゅうかん局長きょくちょうは2015ねん9がつ18にちに「退去たいきょ強制きょうせい令書れいしょにより収容しゅうようするものかり放免ほうめん措置そちかか運用うんよう動静どうせい監視かんしについて」とだいする通達つうたつして、さきの2010ねん通達つうたつ廃止はいしするとした。これを契機けいきに、全国ぜんこく入管にゅうかん施設しせつ収容しゅうよう長期ちょうき傾向けいこう急激きゅうげきにすすんだのである。


参考さんこう

日本にっぽん弁護士べんごし連合れんごうかい入管にゅうかん収容しゅうようについて国連こくれん人権じんけん理事りじかい恣意しいてき拘禁こうきん作業さぎょう部会ぶかい意見いけん真摯しんしめ、国際こくさいほう遵守じゅんしゅするようもとめる会長かいちょう声明せいめい(2020ねん10がつ21にち)

入管にゅうかん収容しゅうようは「国際こくさい人権じんけんほう違反いはん」 国連こくれん日本にっぽん政府せいふ是正ぜせい勧告かんこく週刊しゅうかん金曜日きんようびオンライン(西中にしなか誠一郎せいいちろう|2020ねん10がつ30にち2:35PM)

入管にゅうかん制度せいどからはなした難民なんみん保護ほご」のしん法案ほうあん野党やとう共同きょうどう提案ていあん | 毎日新聞まいにちしんぶん 2021/2/18 21:41(最終さいしゅう更新こうしん 2/18 23:02)


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