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宇宙広場で考える: 公然化されつつある拷問――出国強要の手段としての無期限長期収容

2021ねん4がつ3にち

公然こうぜんされつつある拷問ごうもん――出国しゅっこく強要きょうよう手段しゅだんとしての期限きげん長期ちょうき収容しゅうよう


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  出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理庁かんりちょう入管にゅうかんちょう)のウェブサイトに「入管にゅうかんほう改正かいせいあんQ&A」なるものが公開こうかいされている。


入管にゅうかんほう改正かいせいあんQ&A | 出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理庁かんりちょう


 政府せいふこん国会こっかい提出ていしゅつしている入管にゅうかんほう改定かいていあんについては、難民なんみん申請しんせいしゃ正規せいき滞在たいざい外国がいこくじん権利けんり擁護ようごんできた弁護士べんごしたちや支援しえん団体だんたいなどからつよ批判ひはんがなされている。入管にゅうかんちょう公開こうかいした「Q&A」は、こうした批判ひはんてき指摘してきたいして反論はんろんしようとするものだ。


 しかし、その内容ないようは、ウソ、デタラメ、ゴマカシのオンパレードで、ひとをだまそうとするにしてももうすこしまじめにんだらどうかといたくなるほどの稚拙ちせつさである。そのインチキぶりにたいしては、弁護士べんごし児玉こだま晃一こういちさんが徹底的てっていてき批判ひはんをくわえているので、ぜひんでみてください。


「そこがりたい!入管にゅうかんほう改正かいせいあん」 Q&A Q1・2(収容しゅうよう部分ぶぶん)のいい加減かげんさ・無責任むせきにんさ|koichi_kodama|note

「そこがりたい!入管にゅうかんほう改正かいせいあん」 Q&A Q3とQ4(退去たいきょ強制きょうせい)について みどころ満載まんさい|koichi_kodama|note

「そこがりたい!入管にゅうかんほう改正かいせいあん」 Q&A 「Q5 なぜ,日本にっぽんからの退去たいきょこば外国がいこくじん退去たいきょさせられないのですか?」について 制度せいど一部いちぶりはやめましょう|koichi_kodama|note

「そこがりたい!入管にゅうかんほう改正かいせいあん」 Q&A Q6?Q8 長期ちょうき収容しゅうよう難民なんみん認定にんていかん)|koichi_kodama|note


 というわけで、わたしのごときがここでつけくわえてかなければならないようなことはないのだけれど、入管にゅうかんちょうのQ&Aについては、1てんだけふれておきたい。


 今回こんかい法案ほうあんにおいて収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんもうけなかった理由りゆうについて、「入管にゅうかんほう改正かいせいあんQ&A」はつぎのようにべている。


たとえば,収容しゅうよう開始かいしから6かげつ経過けいかしたらかなら収容しゅうようくこととするなど,収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんもうけた場合ばあいには,日本にっぽんからの退去たいきょをかたくなにこばみ,収容しゅうよう期間きかん上限じょうげん経過けいかした外国がいこくじん全員ぜんいん収容しゅうようかなければならなくなります。

そうすると,結局けっきょく日本にっぽんから退去たいきょさせるべき外国がいこくじん全員ぜんいん日本にっぽん社会しゃかい生活せいかつできることになり,外国がいこくじん在留ざいりゅう管理かんり適正てきせいおこなうことは困難こんなんになります。

●また,収容しゅうようかれることを期待きたいして退去たいきょこばつづけることを誘発ゆうはつし,本来ほんらい日本にっぽんから退去たいきょさせるべき外国がいこくじん退去たいきょさせることがますます困難こんなんになります。

以上いじょうから,収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんもうけることは適切てきせつではないとかんがえました。


 これはほんとうにひどいことをっている。6かげつものあいだ、あるいはたとえ1にちであっても、ひと自由じゆうをうばうということがどれほど重大じゅうだいなことなのか、すこしでもまじめにかんがえたなら、このような言葉ことばきつらねることはできないはずだ。入管にゅうかんちょう役人やくにんによると、収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんをもうけた場合ばあい、6かげつ収容しゅうようでは外国がいこくじんにとってチョロすぎるのだそうだ。こんなものでは収容しゅうようしゃにとってラクショーすぎて退去たいきょ強要きょうようするには不十分ふじゅうぶんなので、期限きげん長期間ちょうきかん収容しゅうようができる現行げんこう制度せいど維持いじすべきなのだ、と。


 同様どうようのことは、3月さんがつにち閣議かくぎ記者きしゃ会見かいけん上川かみかわ陽子ようこ法務大臣ほうむだいじんべている。


 2てん収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんもうけるということについてでありますが,収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんもうけますと,送還そうかんをかたくなに忌避きひし,収容しゅうよう期間きかん上限じょうげん経過けいかしたもの全員ぜんいん収容しゅうようかざるをなくなるということになります。また,収容しゅうようかれることを期待きたいしての送還そうかん忌避きひ誘発ゆうはつするおそれもあるということでありまして,適当てきとうではないとかんがえたところでございます。


 この上川かみかわ発言はつげんは、期限きげん長期ちょうき収容しゅうよう送還そうかん出国しゅっこく強要きょうよう)の手段しゅだんとして自覚じかくてき戦略せんりゃくてきにもちいているのだということを公然こうぜんみとめたというてんで、従来じゅうらい入管にゅうかん当局とうきょく立場たちばをふみこえたものだとおもう。それについては、以下いか記事きじでもべたが、そのふみこえたいち重大じゅうだいさについてあらためて指摘してきしておきたい。


上川かみかわ法務大臣ほうむだいじんのおどろくべき発言はつげん 拷問ごうもん送還そうかん手段しゅだんにもちいることはゆるされるのか?


 入管にゅうかん収容しゅうよう出国しゅっこく強要きょうよう手段しゅだんとして利用りようしてきたということは、収容しゅうよう経験けいけんのあるひとたちやその支援しえんしゃらのなかでは、以前いぜんから周知しゅうち事実じじつだった。この入管にゅうかんのやりかたは、収容しゅうよう(=監禁かんきん)によって身体しんたいてき精神せいしんてきくるしみや恐怖きょうふをあたえ、身体しんたい精神せいしん現実げんじつ破壊はかいもし、そのことで相手あいて意思いし変更へんこうさせようとせまるものであって、まさしく拷問ごうもんぶにふさわしいものだ。


 しかし、うえ記事きじでもべたとおり、入管にゅうかん建前たてまえのうえでは、収容しゅうよう長期ちょうきするとすれば、それは入管にゅうかん意図いとした結果けっかではなく、また、回避かいひすべき問題もんだいなのだということになっていた。3月さんがつ上川かみかわ発言はつげんおよび「入管にゅうかんほう改正かいせいあんQ&A」は、この建前たてまえてようとするものだとえる。つまり、収容しゅうよう期間きかん上限じょうげんをもうけないのは、「収容しゅうようかれることを期待きたいして退去たいきょこばつづけることを誘発ゆうはつ」しないためなのだということを率直そっちょくにみとめているのである。収容しゅうよう長期ちょうき帰国きこく強要きょうようするために入管にゅうかん自身じしんによって意図いとてきつくされた状態じょうたいなのだということをもはやかくしていない。


 こうした入管にゅうかん姿勢しせい変化へんかは、どう解釈かいしゃくすべきだろうか? 近年きんねん入管にゅうかん収容しゅうよう送還そうかんをめぐる問題もんだい批判ひはんてきほうじられる機会きかい格段かくだんえてきた。そのために、事実じじつじょう拷問ごうもんをもちいた送還そうかん方法ほうほうをとってきた(いる)ということをもはやかくしきれなくなったのだと、そう解釈かいしゃくするべきだろうか。かくしきれないからひらなおっているのだと。


 それとも、世論せろん対策たいさくじょうそれをかく必要ひつようがないという状況じょうきょう判断はんだんが、入管にゅうかん姿勢しせい変化へんか背景はいけいにあるのだろうか。あけすけにありのままをみせても、世論せろん入管にゅうかん当局とうきょく味方みかたについてくれるだろう、と。


 いずれにしても、期限きげん長期ちょうき収容しゅうようとは、「送還そうかんをかたくなに忌避きひ」するものをいじめいためつけ、帰国きこくをうながすために意図いとてき採用さいようしている送還そうかん手段しゅだんなのだということを、入管にゅうかんかくすのをやめつつあるようにみえる。もちろん、拷問ごうもんとしかいあらわしようのない送還そうかん手法しゅほうが、外部がいぶ人目ひとめにつきにくいようにこっそりおこなわれていようが、あるいは反対はんたい公然こうぜんとおこなわれようが、その悪事あくじとしての重大じゅうだいさにかわりはない。しかし、期限きげん長期ちょうき収容しゅうよう帰国きこく強要きょうよう手段しゅだんであると入管にゅうかん公然こうぜんみとめつつある以上いじょう、そのようなことを容認ようにんしてよいのか、わたしたちはいままでよりいっそうわれることになるのではないか。


 悪事あくじかくされおおくのひとられていないためにみすごされている状況じょうきょうすくいがないが、悪事あくじかくされておらず公然こうぜんとおこなわれているにもかかわらずそれが深刻しんこく問題もんだいとみなされずに許容きょようされているような状況じょうきょうは、それ以上いじょうすくいがない。後者こうしゃは、悪事あくじをおさえるための規範きはん自体じたい死滅しめつしつつあるということだからだ。


 日本国にっぽんこく憲法けんぽうだい36じょうで「公務員こうむいんによる拷問ごうもんおよ残虐ざんぎゃく刑罰けいばつは、絶対ぜったいにこれをきんずる。」とさだめている。自民党じみんとうはこの「絶対ぜったいにこれをきんずる」という規定きていから「絶対ぜったいに」を削除さくじょし、たんに「禁止きんしする」とする憲法けんぽう改正かいせい草案そうあん発表はっぴょうしている。


[PDF]日本国にっぽんこく憲法けんぽう改正かいせい草案そうあん Q&A(増補ぞうほばん) | 自由民主党じゆうみんしゅとう


 さきの上川かみかわ大臣だいじん発言はつげんや「入管にゅうかんほう改正かいせいあんQ&A」は、拷問ごうもん禁止きんしする規範きはんほねぬきにして死滅しめつさせようとする自民党じみんとう改憲かいけんあんともおな方向ほうこうをむいたものとかんがえるべきだとおもう。


 上川かみかわ発言はつげんなどにみられる入管にゅうかん当局とうきょく姿勢しせい変化へんかは、公務員こうむいんによる拷問ごうもん禁止きんしする規範きはんがもはや自明じめいではなくなりつつあること、拷問ごうもんはゆるされないのだということをあえて言葉ことばにして主張しゅちょうしていかなければならない社会しゃかい状況じょうきょうしょうじつつあることをしめしているようにもおもえる。だとするならば、わたしたちはそれをくりがえ言葉ことばにし、なんでも主張しゅちょうしていくまでである。

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