避暑ひしょ地ちとして利用りようされてきた歴史れきしを持もつ箱根はこね・宮ノ下みやのしたには、クラシカルでレトロ感かんにあふれた由緒ゆいしょある施設しせつが多おおく、梅雨つゆどきの今いまは風情ふぜいをより楽たのしむことができる。

セピア通どおり

　夕方ゆうがたに国道こくどう1号線ごうせんかいわいはセピア感かんにあふれるため「セピア通どおり」と呼よばれるようになった。この一帯いったいには、江戸えど時代じだい後期こうき（1700年代ねんだい～）に創業そうぎょうされたといわれる奈良屋ならや旅館りょかんを受うけ継つぐ「NARAYA CAFE（ナラヤカフェ）」、1878（明治めいじ11）年ねんに創業そうぎょうのクラシックな「富士屋ふじやホテル」、同年どうねんに業態ぎょうたい変更へんこうして開業かいぎょうしたレトロ感かんあふれる「嶋しま写真しゃしん店てん」、1891（明治めいじ24）年ねんに創業そうぎょうし120年ねん以上いじょうの歴史れきしを誇ほこる老舗しにせのパン店てん「渡邊わたなべベーカリー」、築ちく100年ねん・大正たいしょう時代じだいの郵便ゆうびん局きょくをリノベーションした宿泊しゅくはく施設しせつ「Hakone HOSTEL 1914」など、「セピア通どおり」はレトロな世界せかい感かんで旅人たびびとを迎むかえる。

「セピア通どおり」と呼よばれる国道こくどう1号ごう線せんのレトロ感かんあふれる光景こうけい（写真しゃしん提供ていきょう＝嶋しま写真しゃしん店てん）

NARAYA CAFE

　創業そうぎょう以来いらい、明治天皇めいじてんのうと皇后こうごうが暑中しょちゅう休暇きゅうかのために宿泊しゅくはくした奈良屋ならや旅館りょかん。明治めいじ時代じだいには勝海かつみ舟ふねや木戸きど孝允たかよしが利用りようし大隈おおくま重信しげのぶは西洋せいよう館かんを定宿じょうやどとしていた。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごには、奈良屋ならやで佐々木ささき惣一そういちや近衛このえ文麿ふみまろらによって日本国にっぽんこく憲法けんぽう草案そうあんの一ひとつが考案こうあんされたといわれている。奈良屋ならや旅館りょかんをルーツに持もつ「NARAYA CAFE」オーナーの安藤あんどう義和よしかずさんは「歴史れきしを積つみ重かさねてノスタルジックな雰囲気ふんいきにあふれた宮ノ下みやのした。でもそれぞれの時代じだいは常つねに最先端さいせんたんを歩あゆんでいた。ここに宮ノ下みやのしたの魅力みりょくの原点げんてんがある。国道こくどう1号線ごうせんも、この辺あたりに来くれば『セピア通どおり』と粋いきな名前なまえに変かわる」と話はなす。

ナラヤカフェ（内観ないかん）

嶋しま写真しゃしん店てん

　セピア通どおりのほぼ中央ちゅうおうにある嶋しま写真しゃしん店てん。ルーツは江戸えど時代じだいに創業そうぎょうされた旅館りょかん「江戸えど屋や」。当時とうじの主人しゅじん・嶋しま周吉しゅうきちが逗留とうりゅうするイギリスの写真しゃしん家かから撮影さつえい技術ぎじゅつを学まなび旅館りょかんを業態ぎょうたい変更へんこうさせて写真しゃしん店てんを開業かいぎょうした。チャールズ・チャップリン、ヘレンケラー、ジョンレノンなど宮ノ下みやのしたを訪おとずれた著名ちょめい人じんを撮影さつえいしている。現在げんざいの主人しゅじん・嶋しま幸嗣こうじさんは「宮ノ下みやのしたの各かく店舗てんぽが時代じだいに合あわせて生いきてきたことで現在げんざいの宮ノ下みやのしたがある。店みせや施設しせつが、どちらかといえばセピア色しょくなので命名めいめいされた。私わたしの店みせの店頭てんとうでもセピア色しょくの写真しゃしんをディスプレーしている。これはモノクロ写真しゃしんが古ふるくなり変色へんしょくしたのではなく、カラー写真しゃしん以前いぜんに技術ぎじゅつ的てきに作つくり出だした手法しゅほうで、セピアでしゃれた感かんじを醸かもし出だしている。これも宮ノ下みやのしたのこだわり。6月から7月がつにかけてのセピア通どおりは格別かくべつに良よい」と勧すすめる。

そのルーツは旅館りょかんの「江戸えど屋や」。名前なまえの通とおり江戸えど時代じだいに創業そうぎょう。その後ご、写真しゃしん店てんに業態ぎょうたい変更へんこうして「嶋しま写真しゃしん店てん」を開店かいてんした（写真しゃしん提供ていきょう＝嶋しま写真しゃしん店てん）

富士屋ふじやホテル 旧きゅう御用邸ごようてい 菊きく華はな荘そう

　明治天皇めいじてんのう第だい8皇女おうじょの富美ふみ宮みや允子のぶこ（ふみのみやのぶこ）内親王ないしんのうの誕生たんじょうに合あわせて避暑ひしょを目的もくてきに1895（明治めいじ28）年ねんに建たてられた御用邸ごようていがルーツの「富士屋ふじやホテル 旧きゅう御用邸ごようてい 菊きく華はな荘そう」。純じゅん日本にっぽん建築けんちくの落おち着ついたたたずまいと、宮廷きゅうてい建築けんちく家かの優すぐれた技能ぎのうが息いきづいており、庭園ていえんの配置はいちは伝統でんとう的てきな書院造しょいんづくりに倣ならっている。富士屋ふじやホテルの鈴木すずき香かおりさんは「宮ノ下みやのしたのノスタルジックな風情ふぜいを楽たのしむには、最適さいてきのシーズンになった。梅雨つゆに入はいり箱根はこねの緑みどりも見頃みごろ。豊ゆたかな庭園ていえんと由緒ゆいしょある旧きゅう御用邸ごようていで『献上けんじょう御膳ごぜん』の昼食ちゅうしょくと温泉おんせんを日帰ひがえりで楽たのしんでもらえるプランを用意よういしている」と話はなす。

1895（明治めいじ28）年ねんに完成かんせいした富士屋ふじやホテル「旧きゅう御用邸ごようてい 菊きく華はな荘そう」

一いち日にち二に組くみ限定げんていで旧きゅう御用邸ごようていで提供ていきょうされる「献上けんじょう御膳ごぜん」

　安藤あんどうさんは「今いまの季き節ぶしが箱根はこね宮ノ下みやのしたを楽たのしむ最適さいてきなとき。歴史れきしを感かんじ、レトロ感かんを楽たのしみ、ノスタルジックな思おもいに浸ひたってもらえれば」と呼よびかける。