幼馴染おさななじみセフレシリーズ　ドライブ編へん　絶好ぜっこうのドライブ日和びよりである。
　先達せんだつて運転うんてん免許めんきょ証しょうを取得しゅとくした小しょう芭内は、レンタカーで都と外がいに出でていた。
　助手じょしゅ席せきにはもちろん杏あんず寿郎としおを乗のせている。
　無事ぶじ第だい一いち志望しぼう大学だいがくへの合格ごうかくを果はたした彼かれは、本日ほんじつ四よん月がつ一いち日にちより晴はれて小しょう芭内の同窓生どうそうせいとなった。
　遠出とおでを決きめたのは、近頃ちかごろどこか元気げんきがないように見みえる彼かれのためだ。
　杏あんず寿郎としおはいつもどおりを装よそおっているが、長ながらく共ともに過すごしてきた杏あんず寿郎としおソムリエたる小しょう芭内には違ちがいがわかる。常つねの笑顔えがおに、時折ときおり憂うれいが滲にじむのだ。それはそれでカッコいいというかキュンキュンくるのだが、杏あんず寿郎としおにはやはり曇くもりなく笑わらっていてほしい。
　交友こうゆう関係かんけいの狭せまい小しょう芭内とは違ちがって、杏あんず寿郎としおの世界せかいは広ひろい。悩なやみの原因げんいんは小しょう芭内とは比くらべ物ものにならないほど存在そんざいするだろう。ただ杏あんず寿郎としおはそれを誰だれにも開示かいじしない。個人こじんで解決かいけつできることならば、一人ひとりで消化しょうかしてしまう。

if魔まﾌｨｱ　闇やみ医者いしゃ×金庫きんこ番ばん　けぶるような細ほそい雨あめが視界しかいを遮さえぎる。
　手てを伸のばせば触ふれられる距離きょりなのに、君きみの表情ひょうじょうも、声こえも、音おとのない霧雨きりさめに消けされていく。
　かすかに動うごいた唇くちびるが何なにと言いったのか、僕ぼくにはわからなかった。



　ジャバジャバとうるさい水みずの音おとに目めが覚さめる。
　しめきった窓まど越ごしでもわかるほどの雨あめ音おんにズキリとこめかみが痛いたんだ。
　「ぅ、ぅんん……」
　頭あたまが重おもい。胃いの中なかに残のこる不快ふかい感かんと、異様いような喉のどの渇かわき。うつ伏ぶせに寝ねていたせいで余計よけいに症状しょうじょうがひどくなったみたい。
　酸素さんそ不足ふそくと許容きょよう量りょうを超こえたアセトアルデヒドのせいで不調ふちょうを訴うったえる体からだをどうにか転ころがすと、安物やすもののパイプベッドはギシリと悲鳴ひめいを上あげた。
　昨日きのう、彼かれが訪たずねてきた事ことは覚おぼえている。
　寝返ねがえりを打うった時ときに鼻はなを掠かすめた、僕ぼくのじゃない煙草たばこの匂においも夢ゆめじゃなく現実げんじつだと証明しょうめいしている。

そんな子こに育そだてた覚おぼえはありませんとある日ひの夜よる、リーバルは巡回じゅんかいの幹部かんぶが通とおり過すぎるのを待まってから、イーガ団だん本部ほんぶのコーガの部屋へやにするりと入はいり込こんだ。

「おぅ、どした」

コーガは片かたひじをついて読よんでいた書物しょもつから顔かおを上あげずに声こえをかけた。

仕事しごと中ちゅうだって別べつに関係かんけいない。もしそうだとしてもまだ帰かえってきていない優秀ゆうしゅうな筆頭ひっとう幹部かんぶが全すべて片付かたづけるだろうし、夕飯ゆうはん前まえのこの時間じかんはコーガが暇ひましていることをリーバルは知しっていた。

黙だまって近ちかづき、本ほんを持もつ腕うでの内側うちがわに無理むりやり身体しんたいをねじ込こむと胡坐こざをかいた膝ひざの上うえに乗のり上あげる。

「ちょっ、邪魔じゃま」

抗議こうぎの声こえを上あげたコーガは腕うでを上うえに掲かかげ、まだ本ほんを読よもうとしている。

「ねぇ、知しってる？」

リーバルはコーガの腹はらにべたりと顔かおをつけたま嘴くちばしを動うごかした。

「リトの発情はつじょう期きってすごく辛つらいんだよ。ずっと熱ねつが出でたみたいに頭あたまがボーッとしてるし、このままじゃ任務にんむに支障ししょうが出でるかも」

　事前じぜんに手紙てがみを書かいてリトの村むらに到着とうちゃくする日ひをリーバルに伝つたえていた、そのような日ひに限かぎっていつもより遅おそい時間じかんにリンクはリトの村むらに到着とうちゃくした。リンクはいつも連絡れんらく無なしに村むらへ足あしを運はこぶ。今回こんかいはリーバルに手紙てがみを書かいたことがなかったから一度いちど書かいてみようと思おもって、近況きんきょうと村むらに行いく日ひを書かいて出だした。いつもなら昼過ひるすぎには村むらに着つくが、今日きょうは日ひが沈しずみかけている夕方ゆうがたになってしまった。
　こういうときに遅おくれるだなんて、リーバルは怒おこっているだろう――リンクは村むらの中央ちゅうおうにそびえる高たかい石柱せきちゅうを見みつめて深ふかいため息いきをついた。
　リトの村むらの前まえにある馬宿うまやどに馬うまを預あづけて、リンクは急いそいで村むらへと続つづく吊つり橋ばしを渡わたっていった。途中とちゅうで村むらの周辺しゅうへんを巡回じゅんかいしているリトの戦士せんしと途中とちゅうにある池いけの側がわですれ違ちがった。

くだらない夜よるのひと時じ「ファーーーーック！　また負まけた！　チッ、もう一いち回かいやるぞストラス」

ブリッツは大おおきな舌打したうちをして、トランプを勢いきおいよくベットに叩たたきつけた。
約束やくそくの満月まんげつの夜よる。
情事じょうじを終おえたふたりは珍めずらしく夜よるの時間じかんを満喫まんきつしていた。もうかれこれ一時いちじ間あいだ、ベットの上うえでポーカーを楽たのしんでいる。正確せいかくには楽たのしんでいるのはストラスだけだが。始はじめたきっかけは──ブリッツのひと言こと。
キュルキュルキュルと映画えいがのワンシーンのように過去かこに戻もどる。

ゴムを丸まるめてゴミ箱ごみばこにシュートしたブリッツは、タバコに火ひをつけ大おおきく肺はいに入いれてから、ふーっと煙けむりを吐はいた。しばらく考かんがえ込こんだ顔かおをしたが、吹ふっ切きれたのか早口はやくちで話はなし始はじめる。
「来月らいげつの満月まんげつは予定よていがあるから、こねぇぞ」
あまりにもぞんざいで己おのれの意思いしをガンとして譲ゆずらない──そんな意思いしが声こえに滲にじむ。ストラスは上半身じょうはんしんを起おこして肩かたをすくめた。こういう時ときのブリッツは何なにを言いっても聞きかないことを彼かれは知しっている。だから彼かれが気持きもちよく事情じじょうを話はなすよう誘導ゆうどうするのもある種しゅ努つとめだと思おもう節ふしがあった。

初はじめてはあなた（1）　１．疑惑ぎわく7選せん
「どうしたのよ？　朝あさからそんなにソワソワして」
　ソファに座すわってスマートフォンを眺ながめていたら、後うしろから彩子あやこに声こえをかけられた。どうやら無意識むいしきに貧乏びんぼうゆすりをしていたみたいだ。よくない。
「いや、今日きょう三井みついサンがテレビに出でるから不安ふあんでさ……しかも例れいの番組ばんぐみで……」
　そう伝つたえると、彩子あやこは「ああ、例れいの……」と声こえを落おとした。
　例れいの番組ばんぐみ。それで伝つたわってしまうのは、前回ぜんかいの放送ほうそうで大だい炎上えんじょう、いや正確せいかくには大だい盛もり上あがりだろうか。sNSで連日れんじつ話題わだいになった為ためだ。最近さいきんは便利べんりだ。アメリカに居いたってスマートフォンのアプリで日本にっぽんのテレビ番組ばんぐみを観みることができる。
「もう変へんな質問しつもんとかなしで、炎上えんじょうはしない……と思おもいたいわね」
　彩子あやこの言葉ことばに宮城みやぎが大おおきく頷うなずいていると、スマートフォン画面がめんから『春はる爛漫らんまん！　スポーツ選手せんしゅ大だい集合しゅうごう！』という愉快ゆかいな音声おんせいテロップと曲きょくが流ながれ、テレビ番組ばんぐみのコーナーが始はじまった。

ガタケ発行はっこう本ほんサンプル※冒頭ぼうとうサンプルです。本文ほんぶんは184P、文庫ぶんこサイズです。予価よか700～800円えんほどの予定よてい。
※エッチシーンのサンプルはBlueskyにおいてありますので興味きょうみあれば是非ぜひ。


　昨今さっこん、肉体にくたい的てきな性別せいべつ以外いがいのバース性せいというものが発見はっけんされて以降いこう、アーキバス社しゃは徹底てっていしたαあるふぁ主義しゅぎへと方向ほうこう変換へんかんをしていた。
　元々もともと所属しょぞくしていた社員しゃいんの中なかにαあるふぁが多おおかったのは幸さいわいだったが、他たのバース性せいを持もつ者ものは様々さまざまな選択肢せんたくしを強しいられることとなってしまったのはやむを得えない話はなしではあっただろう。
　βべーたの者ものはβべーたの多おおい部署ぶしょへの移動いどうか、このまま出世しゅっせ出来できない事ことを自覚じかくしながらもαあるふぁの下したで働はたらき続つづけるのかどうかの選択せんたくを強しいられた。
　だがΩおめがの者ものはもっと酷ひどく、退職たいしょくか優秀ゆうしゅうなαあるふぁと番つがう事ことを強しいられたのだ。

black coffee　あんたの淹いれたコーヒーが一番いちばん美味うまいですね、と言いわれ何なんだか無性むしょうに腹立はらだたしくなった。
　片思かたおもい中ちゅうの男おとこからぽろりと零こぼれた言葉ことばに、牧まきはコーヒーを飲のむ手てを止とめた。予想よそう外がいの一言ひとことにどういう意味いみだ、と相手あいてを見返みかえすと、片思かたおもい中ちゅうの男おとこ───仙道せんどうは、常つねの微笑ほほえみを浮うかべてカップを口くちに運はこんでいる。これ以上いじょう何なにを聞きいても、もう話はなす気きは無ないらしい。
　
　───こういう所ところがずるいんだ、こいつは。
　
　牧まきがどんなに愛あいを伝つたえても、いつだって相手あいてにしないくせに。どんなに体からだを重かさねても、いつだって心しんは明あけ渡わたさないくせに。時折ときおり、こうして牧まきの存在そんざいをさも当然とうぜんのように受うけ入いれてくれる。仙道せんどうの思おもわせぶりな態度たいどに、牧まきの苛立いらだちは益々ますます募つのっていく。
　だが一番いちばん腹立はらだたしいのは、それに喜よろこんでいる自分じぶん自身じしんだ。確たしかに怒いかりを感かんじているはずなのに、口元くちもとが緩ゆるむのが抑おさえられない。ああいやだ、どうしようもなく気分きぶんが浮うき立たつ。

（……ったく面倒めんどうくせェっ！　なんっで俺おれがクソトカゲの尻しりぬぐいなんざしなきゃなんねぇんだ！)
　レオナ・キングスカラーの怒いかりのボルテージを示しめすチャートは、この夜よる、上あがったり、やや下さがったかと思おもえば著いちじるしく上あがったりを繰くり返かえし、今いまこの時とき最さい高値たかねを叩たたき出だそうとしていた。
　そのレオナの目めの前まえには、賢者けんじゃの島しまの北きた寄より、ナイトレイブンカレッジの崖がけ下かに位置いちする湖みずうみが広ひろがっている。

　風ふうに吹ふかれておこるさざ波なみのしぶきは、砕くだけたダイアモンドのよう。
　時折ときおりはねる魚さかなの鱗うろこはまぶしく輝かがやく妙みょうなる金かねと銀ぎんの彩いろどり。
　夜空よぞらには、幾いく戦せんの星ほし。きらめく彩雲さいうん。科学かがく法則ほうそくを無視むしした三重みえの虹にじ。
　湖みずうみの手前てまえには、『恋人こいびとたちの鐘かね』と名付なづけられた鐘かねが、白銀はくぎん色しょくに輝かがやき、今いまにも天上てんじょうの音色ねいろを鳴なり響ひびかせようとしているようだ。

輝かがやく指輪ゆびわ「三ツ谷みつだにさん」

　中なかに人ひとがいるかどうかもわからないスモークがはられた高級こうきゅう車しゃから降おりてきた男おとこに、車くるまのドアを開あけたガタイのいい男おとこが話はなしかける。
　名前なまえを呼よばれた男おとこは視線しせんだけを投なげるだけで、すぐにすい、と視線しせんを逸そらした。

「わかってる。アイツだろ」

　男おとこが一いち歩ほ前まえへ進すすめば、同時どうじにガタイのいい男おとこも後ごをついてくる。背後はいごで運転うんてん手しゅが車くるまを移動いどうするが、見向みむきもしない。
　彼かれらが降おりたのは、高級こうきゅうホテルのターミナル。ロビーに脚あしを踏ふみ入いれれば、煌びやかな世界せかいに一いち点てんの深ふかい闇やみが混まざったように違和感いわかんが広ひろがる。しかし、ホテルの人間にんげんは皆みな気きづかないように、いや、闇やみに気きづかれないように目めを背そむけた。ホテリエは、あくまでいつも通とおりに笑顔えがおを浮うかべる。

ミス・アンダースタンド①　今日きょう、流川ながれかわと花道かどうは数すう年ねんぶりにふたりきりで会あった。流川ながれかわの所属しょぞくするチームのホームで花道かどうのチームとの試合しあいがあり、試合しあい終おわりで花道かどうが声こえを掛かけたのだ。
　花道かどうは、高校こうこうの頃ころから流川ながれかわのことが好すきだった。屋上おくじょうでの殴なぐり合あいからして出会であいは最悪さいあくだったし、花道かどうの想おもい人じんであった晴子はるこが長ながく片想かたおもいしていた相手あいてが流川ながれかわなのだから花道かどうにとっては相容あいいれない、受うけ入いれられない男おとこだった。それは間違まちがいない。
　でも、最初さいしょに流川ながれかわのプレーを目めにしてから、たぶん心しんも奪うばわれていた。安西あんざい監督かんとくに「流川ながれかわのプレーをよく見みろ」と言いわれてからは意識いしき的てきに目めで追おうようになったし、そうしているうちにプレー以外いがいでも流川ながれかわを見みるようになった。
　流川ながれかわは、バスケをしていないときは見みた目めからは想像そうぞうできないくらい抜ぬけていて、ポンコツだった。課題かだいは忘わすれるし、すぐに寝ねるし、いつも腹はらを空すかせていた。見みた目めに反はんして生活せいかつ力りょくが高たかかった花道かどうが世話せわを焼やくようになるまでに時間じかんはかからず、流川ながれかわも花道かどうに懐なついてきて、２年ねんも終おわりになるころには常つねにふたり一緒いっしょにいるようになった。

猫ねこに首輪くびわは着つけられない　猫ねこが居着いつくようになった。
　大おおきな身体しんたいに柔やわらかい毛並けなみ。
　一部いちぶの隙すきもない直ちょく毛けに見みえてその実み、癖くせがあるのを知しっている。
　ふんわりと波打なみうつ紫色むらさきいろの毛並けなみは朝あさ一いちの毛けづくろい前まえにしか見みられない。
　それを知しっているのは一体いったいどれだけいるのだろう幾度いくども思おもった。

　猫ねこは俺おれの家いえが定住ていじゅう地ちではない。
　気きまぐれにやって来きて気きまぐれに帰かえる。
　飯めしを食くいに来きてるかと思おもえば飯めしも食くわず、俺おれの顔かおだけ見みて帰かえる時ときもある。
　猫ねこは別べつに住すむところがあり、俺おれはその場所ばしょを知しらない。一度いちどどこに住すんでいるのか聞きいたところ、赤あかい目めを細ほそめてはぐらかされてしまった。
　聞きくなという合図あいずがわからないほど馬鹿ばかではないと自負じふしているのでそれ以来いらい気きにしないことにした。