不安ふあんに押おしつぶされそうな人ひとへ...「脳のうの仕組しくみ」を理解りかいして心しんを落おち着つける1つの方法ほうほう

メンタルコーチの大平おおひら信孝のぶたかさんによれば、不安ふあんは、生いきていくための脳のうの防衛ぼうえい本能ほんのうだといいます。しかし不安ふあんな気持きもちを抱かかえながら過すごすのは誰だれにとってもつらいものです。マイナスな感情かんじょうをコントロールする方法ほうほうとは? 本稿ほんこうで解説かいせついたします。

※本稿ほんこうは、大平おおひら信孝のぶたか『「すぐ動うごける人ひと」の週しゅう1ノート術じゅつ』（PHP研究所けんきゅうじょ）の一部いちぶを再さい編集へんしゅうしたものです。

不安ふあんはなくならないことを知しる

今いま、不安ふあんに押おしつぶされそうな方ほうに最初さいしょに知しっておいてほしいことは、「不安ふあんはゼロにはならない。不安ふあんはなくならない」ということです。

ですから、不安ふあんを一方いっぽう的てきに敵視てきしして完全かんぜんになくそうとしないでください。それよりも、不安ふあんの正体しょうたいや対処たいしょする方法ほうほうを知しって、実践じっせんするほうが効果こうか的てきです。

ところで、不安ふあんの正体しょうたいについて、考かんがえたことがありますか? 簡単かんたんに分類ぶんるいすると、不安ふあんは2種類しゅるいしかありません。「持もち越こし苦労くろう」と「取とり越こし苦労ぐろう」です。

「持もち越こし苦労くろう」とは、過すぎてしまったことについて、悔くやんだり不安ふあんになったりすることです。

・どうしてあんな失敗しっぱいをしてしまったんだろう
・また同おなじ失敗しっぱいを繰くり返かえすかもしれない
・行動こうどうしたくても過去かこの苦にがい経験けいけんが邪魔じゃまして動うごけない

といった場合ばあいは持もち越こし苦労くろうが原因げんいんです。要ようするに、意識いしきが「過去かこ」に向むきすぎているから、過去かこの失敗しっぱいに足あしもとをすくわれているのです。持もち越こし苦労くろうは、記憶きおく力りょくのいい方かたや真面目まじめな方ほうが持もちやすいものです。

もう1つの「取とり越こし苦労ぐろう」とは、まだ起おきていないことや未来みらいのことを考かんがえて、不安ふあんになったり心配しんぱいしたりすることです。

・こうなったらどうしよう
・このままではまずいのでは
・失敗しっぱいしたらどうしよう

といった場合ばあいは取とり越こし苦労ぐろうが原因げんいんです。要ようするに、意識いしきが「未来みらい」に向むきすぎているから、未来みらいへの不安ふあんからフリーズして動うごけなくなったり、暴走ぼうそうしてしまうわけです。取とり越こし苦労ぐろうは、未来みらいを先読さきよみする力ちからがある方ほうや考かんがえるのが得意とくいな方ほうが持もちやすいものです。

どちらの不安ふあんにしても、不安ふあんはもともと私わたしたちが持もっている脳のうの防衛ぼうえい本能ほんのうの一いち種しゅです。脳のうの仕組しくみ、生命せいめい維持いじのための防衛ぼうえい本能ほんのうなのです。

人類じんるいは「常つねに最悪さいあくの事態じたいを想定そうていする」という取とり越こし苦労ぐろうのおかげで外敵がいてきを警戒けいかいし、命いのちを守まもり、子孫しそんを繁栄はんえいさせてきました。現代げんだいでも、「最悪さいあくの結果けっかを想定そうていしたうえで、そうならないように対策たいさくを練ねる」という取とり越こし苦労ぐろうのおかげで、不測ふそくの事態じたいを回避かいひできている面めんもあるのです。

さらに、経営けいえい者しゃやトップアスリートには、取とり越こし苦労ぐろう派はや持もち越こし苦労くろう派はの方ほうも多おおく、「不安ふあん＝悪あく」というわけではありません。

そうはいっても、不安ふあんすぎる状態じょうたいからは抜ぬけ出だしたいし、これ以上いじょう落おち込こみたくないですよね。不安ふあんは脳のうの防衛ぼうえい本能ほんのうだから、ゼロにするのは難むずかしい。でも、不安ふあんもエネルギーなので、扱あつかい方かたによっては、前まえに進すすむ力ちからに変かえることができます。

不安ふあんは否定ひていしないで認みとめる

・自分じぶんなりに不安ふあんを払拭ふっしょくしようと試行しこう錯誤さくごしているけれど、いつもの状態じょうたいに戻もどれない
・あまりに心配しんぱいで、これ以上いじょう不安ふあんを感かんじすぎないように感情かんじょうや思考しこうに蓋ぶたをしている

......そんな、今いま、不安ふあんに押おしつぶされそうな方ほうへ。大丈夫だいじょうぶです。その状態じょうたいは永遠えいえんには続つづきません。

先行さきゆき不透明ふとうめいなときに、この先さきの生活せいかつや仕事しごと、人生じんせいを考かんがえると不安ふあんな思おもいばかりが出でてきてしまい、落おち込こんでしまうのは、先述せんじゅつしたように脳のうの防衛ぼうえい本能ほんのうですから自然しぜんなことです。脳のうは非常時ひじょうじには、命いのちを守まもるために希望きぼうや期待きたいよりも不安ふあんを強つよく感かんじるようにできています。

ですから、まず否定ひていしないで受うけ入いれてください。誰だれでも、一時いちじ的てきに不安ふあんになることはいたしかたない自然しぜんなことです。むしろ、「焦あせっている・不安ふあん・心配しんぱい・怖こわい」といった危険きけん信号しんごうが点滅てんめつしているのに無視むししているとしたら、そのほうが危険きけんです。

ごまかさないでください。無理むりやり、ポジティブを装よそわないでください。どんなに不安ふあんになっても、どんなに絶望ぜつぼう的てきな状況じょうきょうに追おい込こまれても、生いきている限かぎり、そこから抜ぬけ出だすことはできます。冷静れいせいに考かんがえることができれば、抜ぬけ出だす方法ほうほうはいくらでもあります。

ですからまずは、自分じぶんが感かんじている不安ふあんや焦あせり、恐怖きょうふ、ショックなどを否定ひていしないで受うけ入いれてください。

「今いまは、不安ふあんなんだね」「今いまは、不安ふあんに押おしつぶされそうなんだね」「今いまは、未来みらいに希望きぼうなんて見出みだせないくらい一時いちじ的てきにショックを受うけているんだね」
そうやって、受うけ止とめてみてください。

不安ふあんを認みとめた後のちに、知しっておいてほしいことは、「不安ふあんの度合どあいはコントロールできる」ということです。つまり、「不安ふあんをなくそう」と努力どりょくするよりも、「不安ふあんの度合どあいをコントロールする」思考しこうに切きり替かえることがポイントです。

そして、不安ふあんは、変かわる時期じきにきているというサインでもあります。あなたが新あたらしいことを始はじめる時期じきにきているということであり、ある意味いみでチャンスが到来とうらいしているのです。不安ふあん、大変たいへん、しんどい、つらいというときこそが、実じつは大おおきく変かわるチャンスなのです。

自分じぶんの「不安ふあんの度合どあい」を把握はあくする

「不安ふあんの度合どあい」が強つよすぎると、思考しこう停止ていし、行動こうどう停止ていし、感情かんじょう停止ていししてしまいます。これは脳のうの防衛ぼうえい本能ほんのうですから、反応はんのう自体じたいを止とめることは難むずかしいです。ですが、「不安ふあんの度合どあい」自体じたいは、ある程度ていどコントロールすることができます。

不安ふあんの度合どあいは、大おおきく3つに分類ぶんるいすることができます。

コンフォートゾーン、ラーニングゾーン、パニックゾーンの3つです。

コンフォートゾーンとは、安心あんしん安全あんぜん、いつも通とおりなので、心地ここちいい状態じょうたいです。要ようするに、ほとんど不安ふあんを感かんじない状態じょうたいのことです。

しかし、コンフォートゾーンでは、成長せいちょうできません。挑戦ちょうせんしないので失敗しっぱいすることも恥はじをかくこともない代かわりに、進歩しんぽ、成長せいちょう、発見はっけん、発展はってん、気きづきなどもほとんどないのです。ある意味いみで、ぬるま湯ゆ状態じょうたいです。

ラーニングゾーンとは、適度てきどな不安ふあん状態じょうたいのことをいいます。つまり不安ふあんと期待きたいが適度てきどに入いり混まじっている状態じょうたいです。例たとえば、異動いどう、転職てんしょく、引ひっ越こし、結婚けっこん、家族かぞく関係かんけいの変化へんかなど、今いままでとは違ちがう新あたらしい環境かんきょうになると、コンフォートゾーンの外側そとがわにある「ラーニングゾーン」に移行いこうします。

実じつは、学まなび、成長せいちょう、気きづき、新あたらしい出会であい、ご縁えんの深ふかまりといったことは「ラーニングゾーン」にいるときに得えやすいのです。

パニックゾーンとは、不安ふあんが強つよすぎて、本来ほんらいの力ちからを発揮はっきするのが難むずかしい状態じょうたいです。過大かだいな負荷ふかをかけ続つづけると、ラーニングゾーンの外側そとがわにある「パニックゾーン」に移行いこうします。

自分じぶんにとって、難むずかしすぎること・苦手にがてすぎること・新あたらしすぎることに立たて続つづけに挑戦ちょうせんしたり、対応たいおうせざるをえなくなったときに起おこりがちです。

あるいは、ありえない事態じたいなどに遭遇そうぐうすると、人ひとはパニック状態じょうたいになります。択一たくいつになってしまいます。つまり、思考しこう停止ていし、行動こうどう停止ていし、感情かんじょう停止ていししてしまうのです。

紙かみに書かき出だし、対策たいさくを冷静れいせいに考かんがえる

パニックゾーンに陥おちいってしまったときに知しっておいてほしいこと。それは、「不安ふあんは、否定ひていしたり隠かくしたりすると増幅ぞうふくする」ということです。

不安ふあんへの対処たいしょの仕方しかたを間違まちがえると、さらに不安ふあんが増幅ぞうふくしたり、不安ふあんに飲のみ込こまれてしまったりと、ちょっとやっかいなことが起おこります。

ですが、不安ふあんは正面しょうめんから向むき合あうと、希望きぼうや勇気ゆうき、行動こうどうする力ちからに変かえることができます。正面しょうめんから向むき合あうなんて大変たいへんそう......、そう思おもった方ほうも安心あんしんしてください。必要ひつようなのは紙かみ1枚まいとペンだけ。しかも、やることは次つぎの2つだけです。

【不安ふあんを紙かみに書かき出だす2ステップ】
・ステップ１
紙しの左ひだり半分はんぶんに「不安ふあんに感かんじていること」を箇条書かじょうがきですべて書かき出だす。
・ステップ２
書かき出だしたものを眺ながめて深呼吸しんこきゅう。紙かみの右みぎ半分はんぶんに１ひとつずつ対策たいさくや今いまできることを書かいていく。

これだけです。不安ふあん解消かいしょうのためには、いきなり動うごくことはおすすめしません。というのも、その場ばしのぎや、行ゆき当あたりばったりで動うごくと、ますます不安ふあんになってしまうことが多おおいからです。

ですから、不安ふあんを感かんじているときは、まずは不安ふあんを書かき出だして一いち呼吸こきゅうおく。そして、対策たいさくを書かき出だしてみることをおすすめします。冷静れいせいになって考かんがえることができれば、どんな不安ふあんに対たいしても対策たいさくは無数むすうに考かんがえられます。

まずは、「いま抱かかえている不安ふあんをすべて書かき出だす」。そこから始はじめてみてください。

実際じっさいにやってみるときの参考さんこうとして、私わたしが主宰しゅさいするオンラインサロンメンバーのKさんが実際じっさいに書かいたメモをご紹介しょうかいします（まず●で始はじまる「不安ふあんに感かんじていること」にざっと目めを通とおして、その後ごで→で始はじまる「対策たいさく＝今いまできること」を読よんでみてください）。

●会社かいしゃが潰つぶれたらどうしよう
→転職てんしょくサイトに登録とうろくする
→会社かいしゃがなくなったとしても通用つうようする技術ぎじゅつを身みにつける
→社外しゃがいの人脈じんみゃくを築きずくために勉強べんきょう会かいに参加さんかする
→専門せんもん知識ちしきを身みにつけるために任意にんいの研修けんしゅうを受うける

●家族かぞくを養やしなっていけるのか
→貯金ちょきんがいくらあるのか確認かくにんする
→１ヶ月かげつ家族かぞく４人にんで生活せいかつするのに必要ひつような金額きんがくを確認かくにんする
→現在げんざいの貯金ちょきんで何なんヶ月かげつ生活せいかつできるか確認かくにんする
→節約せつやくできることがないかパートナーと話はなし合あう
→いざというとき助たすけてもらえそうな人ひとをリストアップする

●転職てんしょく先さきを見みつけることができるのか
→転職てんしょくサイトに登録とうろくする
→転職てんしょくした元もと先輩せんぱいとランチのアポを取とる
→今いまの業界ぎょうかいから別べつの業界ぎょうかいに転職てんしょくした人ひとがいないか調しらべる
→恩師おんしに相談そうだんする

●子こどもが不ふ登校とうこう気味ぎみなのが気きになる
→不ふ登校とうこうについてネットで情報じょうほう収集しゅうしゅうする
→担任たんにんや学年がくねん主任しゅにん、校長こうちょうに相談そうだんできないか検討けんとうする
→子こどもに合あったフリースクールを調しらべる
→子こどもをフリースクールに通かよわせている知人ちじんにアドバイスをもらう
→転校てんこう、引ひっ越こしの可能かのう性せいを考かんがえる　

●家いえのローンは払はらっていけるのか
→万一まんいち払はらえなくなったときに使つかえる制度せいどを調しらべる
→猶予ゆうよの制度せいどがないか調しらべる
→もしいま売却ばいきゃくしたらどれくらいローンが残のこるのか調しらべる
→借かり換かえを検討けんとうする

●頭痛ずつうがひどいが、悪わるい病気びょうきかも
→健康けんこう診断しんだんを受うける
→かかりつけ医いに相談そうだんする
→最近さいきん食たべたもの、飲のんだものを確認かくにんする
→自宅じたくや会社かいしゃの環境かんきょうに原因げんいんがないか確認かくにんする

●旅行りょこうの予約よやくをキャンセルするか迷まよう
→キャンセル可能かのう期間きかんを確認かくにんする
→最終さいしゅう決断けつだんをいつまでにすればいいか確認かくにんする
→最大さいだいのリスクは何なにか、最大さいだいのメリットは何なにか確認かくにんする

●同僚どうりょうが咳せきをしているのが気きになる
→病院びょういんに行いくことをすすめる
→社内しゃないの換気かんきをマメにする
→早寝はやね早起はやおきして自分じぶんの免疫めんえき力りょくを上あげる
→同僚どうりょうの仕事しごとで手伝てつだえるものがあれば引ひき受うける

●自分じぶんの人生じんせいこのままでいいのか
→本当ほんとうはどうしたいのか考かんがえる
→このまま行おこなった場合ばあいどうなるのかシミュレーションする
→本ほんを読よむ
→信頼しんらいできる人ひとに相談そうだんする

「不安ふあんに感かんじていること」だけを最初さいしょ見みたときは、Kさんでなくても「これは大変たいへんだな......」と少すこし不安ふあんな気持きもちになったのではないでしょうか。

でも、「対策たいさく＝今いまできること」を読よんでいくうちに、「どんな不安ふあんに対たいしても、打うつ手てはいろいろとあるんだな」と思おもったはずです。

Kさんも、「不安ふあんを書かき出だすことで客観きゃっかん視しできて冷静れいせいになれたうえに、やるべきことが明確めいかくになり元気げんきが湧わいてきました」とスッキリした表情ひょうじょうで変化へんかを教おしえてくれました。

こうしてパニックゾーンから抜ぬけ出だせたら、不安ふあんというエネルギーを前まえに進すすむエネルギーとして活用かつようしてください。つまり、ラーニングゾーンで適度てきどな不安ふあんを感かんじながら、日々ひび行動こうどうしていくのです。