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「アルコール依存いぞんしょうだい酒飲さけのみ」の境界きょうかいせん曖昧あいまい 受診じゅしん検討けんとうすべき6つの基準きじゅん

せきかおり(さけジャーナリスト)

2025ねん04がつ30にち 公開こうかい

「アルコール依存症と大酒飲み」の境界線は曖昧 受診を検討すべき6つの基準

さけ日常にちじょうてきんでいるうちに、徐々じょじょ酒量しゅりょうえ、づけばアルコール依存いぞんしょうになってしまうケースはすくなくないそう。近年きんねんは、「げんしゅ外来がいらい」の開設かいせつえ、依存いぞんしょう初期しょきから治療ちりょうけやすくなっていると専門医せんもんいはなします。さけジャーナリストのせきかおりさんの著書ちょしょ『なぜぱらうとさけがうまいのか』より、受診じゅしんしたほうがいい症状しょうじょう目安めやすや、依存いぞんしょう治療ちりょう実態じったいについて解説かいせつします。

本稿ほんこうは、せきかおりちょ『なぜぱらうとさけがうまいのか』日経にっけいBP)より、内容ないよう一部いちぶ抜粋ばっすい編集へんしゅうしたものです。

 

あっという進行しんこうしていく

いえみをやめたんだよね」

先日せんじつ酒豪しゅごうでならした知人ちじん男性だんせいから、みみうたがうような言葉ことばいた。理由りゆうくと、コロナのリモートワークで酒量しゅりょう激増げきぞうし、それにともなって体重たいじゅう増加ぞうか。さらには中性ちゅうせい脂肪しぼう基準きじゅんをはるかにえる数値すうちになってしまったため、いえみをやめたのだという。

このところ、かれのようにげんしゅしているひとめずらしくない。新型しんがたコロナウイルス感染かんせんしょう流行りゅうこうき、ひさしぶりに仲間なかま居酒屋いざかやつどってむと、「あ~、おさけむのひさしぶり」とひと結構けっこういる。

かく筆者ひっしゃもそうだ。コロナで「アルコール依存いぞんしょう」になりかけたようにかんじ、逆流ぎゃくりゅうせい食道しょくどうえん診断しんだんされたことをに、いえみをほぼやめた。そのおかげか、現在げんざい内視鏡ないしきょう検査けんさでも逆流ぎゃくりゅうせい食道しょくどうえん指摘してきされなくなった。

さけかかわる仕事しごとをしている筆者ひっしゃとしては複雑ふくざつだが、げんしゅしているひと日本にっぽんかぎったことではなく、世界せかいてきても増加ぞうか傾向けいこうにあるという。

酒量しゅりょうらしたい」というおもいの根底こんていには、「このままつづけていると、アルコール依存いぞんしょうになるのではないか?」という恐怖きょうふかんがあるがしている。

とはいうものの、おおくのひとはそもそもアルコール依存いぞんしょうとはどのような状態じょうたいで、どのようなひとがなりやすく、そしてどのような治療ちりょうをするのか、よくらないのではないだろうか?

そこで、国立こくりつ医療いりょう機関きかんとしてはじめてアルコール専門せんもん病棟びょうとう設置せっちしたことでられる久里浜くりはま医療いりょうセンターのふく院長いんちょう木村きむらたかしいてみた。

ストレスのおおかったコロナでは、アルコール依存いぞんしょう患者かんじゃえていたのだろうか?

じつは、当時とうじ、アルコール関連かんれん外来がいらいのある病院びょういんにアンケートをとったところ、初診しょしん患者かんじゃさんが『えている』とこたえたところよりも、『っている』とこたえたところのほうがおおかったのです。コロナでの『受診じゅしんびかえ』がその原因げんいんではないかとおもわれます」(木村きむら

なんと、てっきり患者かんじゃすうえたかとおもったら......。しかし、木村きむらも、「かとって、依存いぞんしょうをはじめとするアルコールの問題もんだいっているわけではなく、診察しんさつをしている感触かんしょくでは、コロナ自宅じたくでの酒量しゅりょうえてしまったほうというのは確実かくじつにいるようにおもいます」とはなす。

コロナでは、不要ふよう不急ふきゅう外出がいしゅつひかえるようわれ、また病院びょういんると感染かんせんしてしまう心配しんぱいもあったので、さまざまな診療しんりょうで「受診じゅしんびかえ」があった。ひょっとしたら、「自分じぶんはアルコール依存いぞんしょうかもしれない」という不安ふあんかかえていたものの受診じゅしんしなかったひとおおくいたかもしれない。

ところで、アルコール依存いぞんしょう診断しんだん基準きじゅんはどのようなものなのだろうか。

日本にっぽん現在げんざいおも使つかわれている診断しんだん基準きじゅんは、WHOの「ICD–10」とばれるものです。したのリストのようなむっつの項目こうもくがあり、このうちみっ以上いじょうてはまると依存いぞんしょうだと診断しんだんされます」(木村きむら

おおくの場合ばあい、おさけ日常にちじょうてきんでいるうちに、アルコールにたいするたいせいができ、徐々じょじょりょうえ、次第しだい飲酒いんしゅをコントロールできなくなり、アルコール依存いぞんしょうになっていくという。

つまり、「だい酒飲さけのみといわれるほう依存いぞんしょうほう境界きょうかいせんははっきりしていないのです。日常にちじょうてきにおさけ
をたくさんんでいたひとが、がつくと依存いぞんしょうになっていて、あっという症状しょうじょう進行しんこうしていくというイメージです」(木村きむら

 

になるひとは「げんしゅ外来がいらい」へ

アルコール依存症の診断基準
WHOは2022ねんに「ICD-11」を発効はっこうしているが、日本にっぽんでの適用てきよう時期じき未定みてい。 ICD-11では、「コントロールの喪失そうしつ」「飲酒いんしゅ中心ちゅうしん生活せいかつ」「生理学せいりがくてき特性とくせい離脱りだつ症状しょうじょうたいせいなど)」という3つの項目こうもく集約しゅうやくされ、このうち2つにてはまると依存いぞんしょう診断しんだんされる

ここまではなしいて、ヒヤッとした。まさに筆者ひっしゃがそうだったからだ。日々ひびんでいるうちに、いつものりょうではわなくなり、しまいにはウイスキーをストレートでまないと満足まんぞくできなくなった。あのままいけば、確実かくじつにアルコール依存いぞんしょうになっていたとおもう。

そんな状態じょうたいだったにもかかわらず、病院びょういんにはかなかった。どの段階だんかい受診じゅしんする判断はんだんをしたらいいのか、からなかったからだ。

「かつては、症状しょうじょうがかなりすすんで、きも機能きのうおとろえ、仕事しごとができなくなるなど社会しゃかいてき影響えいきょうおおきくなってから受診じゅしんすることがほとんどで、治療ちりょうとしては『だんしゅ』が基本きほんでした。

しかし最近さいきんでは、おさけりょうらすための『げんしゅ外来がいらい』の開設かいせつえ、そこまで症状しょうじょうすすんでいなくても受診じゅしんできるようになっています。『んだのち記憶きおくがなくなることがたまにある』とか『健康けんこう診断しんだん酒量しゅりょうらすようにわれた』という理由りゆうていただいてもいいのです」(木村きむら

なるほど。筆者ひっしゃ一人ひとりなやまずに、受診じゅしんすればよかった......。

 

げんしゅサポートやく活用かつよう

「かつては、『だんしゅ以外いがい方法ほうほうはない』というかんがかたでした。ですから、おさけをやめる決心けっしんをしたら病院びょういんてください、というスタンスだったわけです。ある意味いみ、スパルタですね。それがいまでは大幅おおはばわって、医師いしとコミュニケーションをとりながら、だんしゅげんしゅなど患者かんじゃさんの希望きぼういて、二人三脚ににんさんきゃく治療ちりょうすすめていきます」(木村きむら

治療ちりょうのスタイルがわってきたのは、げんしゅ外来がいらい開設かいせつされたことがおおきいという。木村きむらふく院長いんちょうつとめる久里浜くりはま医療いりょうセンターでは、2017ねんげんしゅ外来がいらい開設かいせつされた。アルコール依存いぞんしょう治療ちりょうだんしゅ基本きほんとしていると、途中とちゅう挫折ざせつしてふたたはじめてしまうひとこうたなかった。それならば、もっと手前てまえ段階だんかいげんしゅ目的もくてきとする治療ちりょうおこなえば、患者かんじゃのほうもグッとハードルががる。

げんしゅ外来がいらい受診じゅしんするほうなかには、30~40だいはたらざかりのほうもたくさんいます。年配ねんぱいほうは、病院びょういんくことが『自分じぶんはアルコール依存いぞんしょうだ』とみとめることのようにかんじられるかもしれませんが、わかほうにはそういった抵抗ていこうかんがあまりないかもしれません」(木村きむら

軽度けいどのアルコール依存いぞんしょうひと、あるいは、そこまでいかないがアルコールのとりかた問題もんだいがあるひとが、継続けいぞくてきげんしゅ外来がいらい受診じゅしんすることで、飲酒いんしゅりょう確実かくじつ減少げんしょうできたケースもおおいという。

それでは、げんしゅ外来がいらいではどのような治療ちりょうおこなうのだろうか?

げんしゅ外来がいらいでの治療ちりょうは、自分じぶん現状げんじょう酒量しゅりょう把握はあくすることからはじまります。医師いし患者かんじゃ相談そうだんして、まないつくる、むおさけをアルコール度数どすうひくいものにえる、などの目標もくひょうめます。うまくいかないときは、患者かんじゃさんの希望きぼういて『セリンクロ(一般いっぱんめい:ナルメフェン)』などのくすり処方しょほうすることもあります。セリンクロはげんしゅをサポートするくすりで、おさけむ1~2あいだまえ服用ふくようすると、飲酒いんしゅ欲求よっきゅう低減ていげんさせる効果こうかがあります」(木村きむら

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