エンディングノートに書かいた遺言ゆいごんは有効ゆうこう？ 法的ほうてきな意味合いみあいの違ちがいは

1. エンディングノートと遺言ゆいごんでは法的ほうてきな意味いみが全まったく違ちがう

1-1. 終おわり活かつとエンディングノート

近年きんねん、人生じんせいの終おわりに向むけての活動かつどう、いわゆる「終おわり活かつ」が社会しゃかいの大おおきな潮流ちょうりゅうとなっており、エンディングノートに関心かんしんを持もつ方ほうが増ふえています。

エンディングノートとは、もしもの時ときに備そなえ、自分じぶん自身じしんや家族かぞくのために、自分じぶんの情報じょうほうを一いち冊さつにまとめておけるノートのことです。複数ふくすうの出版しゅっぱん社しゃから多種たしゅ多様たようなエンディングノートが販売はんばいされています。自分じぶんが入院にゅういんした時ときや他界たかいした時ときには、ご家族かぞくがこのエンディングノートを参考さんこうにして行動こうどうすることができますので、書かいておくととても安心あんしんです。ただし、エンディングノートを書かく前まえに知しっておきたいことがあります。

1-2. エンディングノートと遺言ゆいごんの法的ほうてきな効力こうりょくの違ちがい

それは、作成さくせいの仕方しかたにもよりますが、エンディングノートには基本きほん的てきに法的ほうてき効力こうりょくがないということです。そのため、エンディングノートに書かかれた内容ないようは、あくまでも家族かぞくや相続そうぞく人じんに対たいする「お願ねがい」にすぎません。これに対たいして、遺言ゆいごん書しょには基本きほん的てきに法的ほうてき効力こうりょくがあります。

エンディングノートと遺言ゆいごん書しょでは、このような違ちがいがあることは知しっておいてください。法的ほうてきに有効ゆうこうな形かたちで自分じぶんの遺志いしを示しめしたい場合ばあいには、エンディングノートとは別べつに、遺言ゆいごん書しょを作成さくせいしておく必要ひつようがあります。

1-3. 法的ほうてきに有効ゆうこうな遺言ゆいごんとは

もっとも、いかなる遺言ゆいごん書しょであっても法的ほうてきに有効ゆうこうというわけではなく、民法みんぽう上じょうで定さだめられた方式ほうしきに従したがって作成さくせいされた遺言ゆいごん書しょに限かぎられます。遺言ゆいごん書しょの方式ほうしきは民法みんぽう上じょう多数たすう規定きていされていますが、自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんか公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごんのいずれかの方式ほうしきをとることがほとんどです。遺言ゆいごん書しょを作成さくせいする際さいは、いずれかの方式ほうしきに従したがって作成さくせいすると良よいでしょう。

自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんとは、遺言ゆいごん者しゃが手書てがき（自署じしょ）する遺言ゆいごんです。作成さくせいした遺言ゆいごん書しょは法務局ほうむきょくで預あずかってもらうことが可能かのうです。公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごんとは、公証こうしょう人じんが遺言ゆいごん書しょから聞きいた内容ないようを文章ぶんしょうにまとめ、公正こうせい証書しょうしょとして作成さくせいする遺言ゆいごんです。基本きほん的てきに公証こうしょう役場やくばに行いって作成さくせいしますが、病院びょういんなどに出張しゅっちょうしてもらうことも可能かのうです。病気びょうきなどで手書てがきが難むずかしい場合ばあいでも、公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごんなら作成さくせいできます。

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2. エンディングノートの内容ないようは自由じゆうだが、法的ほうてきな効力こうりょくはない

エンディングノートに書かける内容ないようには制限せいげんがなく、何なんでも自由じゆうに書かくことができます。例たとえば、コクヨのエンディングノート（「もしもの時ときに役立やくだつノート」）では、資産しさん（預貯金よちょきんや保険ほけんなど）、気きになること（携帯けいたいやWebサイトのID、ペットなど）、家族かぞく・親族しんぞく、友人ゆうじん・知人ちじん、医療いりょう介護かいご（延命えんめい処置しょちなど）、葬儀そうぎ・お墓はか、その他たの事項じこう（写真しゃしんや大切たいせつな人ひとへのメッセージなど）が目次もくじとして挙あげられており、幅広はばひろい事項じこうについて記載きさいすることができます。

もちろんすべての事項じこうを記載きさいする必要ひつようはなく、家族かぞくに知しっておいて欲ほしい事項じこうだけをピックアップして記載きさいすることもできます。ただし、冒頭ぼうとうで書かいたとおり、エンディングノートには法的ほうてきな効力こうりょくはありませんので、注意ちゅういが必要ひつようです。

例たとえば、ある男性だんせいが世話せわになっている甥おいにすべての財産ざいさんを残のこしたいと考かんがえているケースを考かんがえます。その男性だんせいの法定ほうてい相続そうぞく人じんとしては、その甥おいの他ほかに、疎遠そえんになっている妹いもうとがいました。この場合ばあい、その男性だんせいがエンディングノートに「甥おいにすべての財産ざいさんを残のこしたい」と書かいていても、法的ほうてきな効力こうりょくがない以上いじょう、妹いもうとが相続そうぞく分ぶんを主張しゅちょうすれば、甥おいと妹いもうとで遺産いさんを２分ぶんの１ずつ分わけ合あう形かたちになります。遺言ゆいごん書しょに書かいておけば、妹いもうとに遺留分いりゅうぶんはありませんので、その男性だんせいの希望きぼうどおり、甥おいがすべての遺産いさんを取得しゅとくすることができます。

このように、エンディングノートだけを作成さくせいしておけば安心あんしん、というわけではありません。エンディングノートと遺言ゆいごん書しょは役割やくわりが違ちがうので、上手うまく使つかい分わけることが大切たいせつです。では、遺言ゆいごん書しょにはどのようなことを書かけばいいのでしょうか。

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3. 遺言ゆいごん書しょに書かいておくべきこと

遺言ゆいごん書しょは、記載きさいしておけばいかなる事項じこうであっても法的ほうてきな効力こうりょくが認みとめられるわけではありません。そのため、法的ほうてきな効力こうりょくが認みとめられる事項じこうを踏ふまえつつ、書かく内容ないようを決きめることが大切たいせつです。

法的ほうてきな効力こうりょくが認みとめられるものとしては、例たとえば、推定すいてい相続そうぞく人じんの廃除はいじょ、相続そうぞく分ぶんの指定してい、遺産いさん分割ぶんかつ方法ほうほうの指定してい、遺贈いぞう、遺言ゆいごん執行しっこう者しゃの指定してい、祭祀さいし承継しょうけい者しゃの指定していなどです。なお、法的ほうてきな効力こうりょくはないものの、家族かぞくへの感謝かんしゃや遺産いさんの分わけ方かたを指定していした理由りゆうなどを書かくこともできます。

3-1. 推定すいてい相続そうぞく人じんの廃除はいじょ

推定すいてい相続そうぞく人じんの廃除はいじょとは、遺留分いりゅうぶんを有ゆうする推定すいてい相続そうぞく人じんから虐待ぎゃくたいや侮辱ぶじょく等とうを受うけたことを理由りゆうに、その人ひとの相続そうぞく権けんをなくす制度せいどのことです。ただし、遺言ゆいごん書しょに書かいておけば当然とうぜんに相続そうぞく権けんをなくすことができるわけではなく、家庭かてい裁判所さいばんしょにこれを認みとめてもらう必要ひつようがあります。相続そうぞく権けんをなくすという強つよい効力こうりょくがあることから、裁判所さいばんしょも慎重しんちょうに判断はんだんする傾向けいこうがあり、認みとめられるケースは決けっして多おおくはありません。

3-2. 相続そうぞく分ぶんの指定してい

遺言ゆいごんがなければ民法みんぽう上じょうで定さだめられた相続そうぞく分ぶん（法定ほうてい相続そうぞく分ぶん）に従したがって遺産いさんを分割ぶんかつすることになりますが、法定ほうてい相続そうぞく分ぶんと異ことなる割合わりあいを指定していすることができます。例たとえば、相続そうぞく人じんが子こ２人にん（長男ちょうなんと次男じなん）の場合ばあい、法定ほうてい相続そうぞく分ぶんは２分ぶんの１ずつになります。しかし、例たとえば、同居どうきょして介護かいごをしてくれたお礼れいとして長男ちょうなんに多おおめに遺産いさんを渡わたしたい場合ばあいなどは、長男ちょうなんに３分ぶんの２、次男じなんに３分ぶんの１というように割合わりあいを指定していすることができます。

3-3. 遺産いさん分割ぶんかつ方法ほうほうの指定してい

指定していの方法ほうほうには、いくつか種類しゅるいがありますが、一般いっぱん的てきなのは、特定とくていの財産ざいさんを特定とくていの相続そうぞく人じんに取得しゅとくさせることを指定していするものです。

例たとえば、子こが２人ふたり（長女ちょうじょと次女じじょ）で、遺産いさんが自宅じたく不動産ふどうさんと預貯金よちょきんの場合ばあいを考かんがえます。この場合ばあい、遺言ゆいごんがなければ、別段べつだんの遺産いさん分割ぶんかつ協議きょうぎをしない限かぎり、不動産ふどうさんも預貯金よちょきんも子こ２人にんが２分ぶんの１ずつの割合わりあいで共有きょうゆうすることになります。しかし、例たとえば、長女ちょうじょが自宅じたく不動産ふどうさんに同居どうきょしていたことを理由りゆうに長女ちょうじょに自宅じたく不動産ふどうさんを残のこしたい場合ばあいなどに、長女ちょうじょに不動産ふどうさん、次女じじょに預貯金よちょきんを相続そうぞくさせるというように、分割ぶんかつ方法ほうほうを指定していすることができます。

3-4. 遺贈いぞう

遺言ゆいごんによって財産ざいさんを譲ゆずり渡わたすことを遺贈いぞうといいます。相続そうぞく人じんに限かぎらず、第三者だいさんしゃに遺贈いぞうすることもできます。例たとえば、法定ほうてい相続そうぞく人じんではない親族しんぞくや友人ゆうじん・知人ちじんに財産ざいさんを譲ゆずり渡わたすケースや公益こうえき的てきな活動かつどうをする法人ほうじんなどに財産ざいさんを寄付きふするケースなどがあります。

3-5. 遺言ゆいごん執行しっこう者しゃの指定してい

遺言ゆいごんの内容ないようを実現じつげんすることを遺言ゆいごんの執行しっこうといいます。遺言ゆいごん書しょで、遺言ゆいごんの執行しっこうを任まかせる人物じんぶつを指定していすることができます。

3-6. 祭祀さいし承継しょうけい者しゃの指定してい

祖先そせんの祭祀さいしを主宰しゅさいすべき者ものを指定していすることが可能かのうです。指定していを受うけた者ものは系譜けいふ（家系かけい図ず）や祭具さいぐ（神棚かみだなや位牌いはい、仏壇ぶつだんなど）、墳墓ふんぼ（墓石はかいしや墓地ぼち）などの祭祀さいし財産ざいさんの所有しょゆう権けんを取得しゅとくすることになります。祭祀さいし承継しょうけい者しゃを巡めぐる紛争ふんそうは良よくありますので、指定していしておくことが望のぞましいでしょう。

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4. まとめ

以上いじょうのとおり、自分じぶんの財産ざいさんをどのように相続そうぞくしてほしいかについては、法的ほうてきな効力こうりょくのある遺言ゆいごん書しょに記載きさいしておきたいものです。そして、せっかく遺言ゆいごん書しょを作成さくせいするのであれば、多少たしょうの費用ひようはかかっても、トラブルを防止ぼうしし、自分じぶんの意思いしを確実かくじつに実現じつげんできる内容ないようの遺言ゆいごん書しょを作成さくせいすることを第だい一いちに考かんがえましょう。遺言ゆいごん書しょの作成さくせいを思おもい立たったら、まずは一いち度ど、弁護士べんごしに相談そうだんしてください。依頼いらいした方ほうが良よいと思おもったら、早はやめに正式せいしきに依頼いらいすることをおすすめします。

（記事きじは2021年ねん3月がつ1日にち時点じてんの情報じょうほうに基もとづいています）

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