遺言ゆいごん書しょの付言ふげん事項じこうは争そう族ぞく回避かいひにも効果こうか的てき　パターン別べつに例文れいぶんも紹介しょうかい

1. 遺言ゆいごん書しょの付言ふげん事項じこうとは

遺言ゆいごん書しょにおいて法的ほうてき効力こうりょくを与あたえることを直接ちょくせつの目的もくてきとしない記載きさい事項じこうを付言ふげん事項じこうといいます。たとえば、家族かぞくへのメッセージや葬儀そうぎ・納骨のうこつに関かんする希望きぼうなどです。伝つたえたいことをしっかり理解りかいしてもらうため、付言ふげん事項じこうを書かくときには遺言ゆいごん書しょの内容ないようが曖昧あいまいにならないよう注意ちゅういしましょう。

1-1. 法定ほうてい遺言ゆいごん事項じこうと付言ふげん事項じこうの違ちがい

遺言ゆいごん書しょに記載きさいすることで法的ほうてき効力こうりょくが与あたえられる事項じこうは法律ほうりつで定さだめられており、これを「法定ほうてい遺言ゆいごん事項じこう」といいます。たとえば、相続そうぞく分ぶんの指定していや遺産いさん分割ぶんかつ方法ほうほうの指定してい、特別とくべつ受益じゅえきの持もち戻もどしの免除めんじょ、推定すいてい相続そうぞく人じんの廃除はいじょ、遺贈いぞう、子この認知にんち、遺言ゆいごんの内容ないようを実行じっこうする遺言ゆいごん執行しっこう者しゃの指定してい、祖先そせんの祭祀さいしを主宰しゅさいする祭祀さいし承継しょうけい者しゃの指定していなどです。これらは、遺言ゆいごん書しょに記載きさいすることで法的ほうてき効力こうりょくが認みとめられます。

一方いっぽう、法的ほうてき効力こうりょくが認みとめられない事項じこうは「付言ふげん事項じこう」になります。

このように、同おなじ遺言ゆいごん書しょに記載きさいする事項じこうであっても、法的ほうてき効力こうりょくの有無うむという点てんで、法定ほうてい遺言ゆいごん事項じこうと付言ふげん事項じこうは異ことなります。法定ほうてい遺言ゆいごん事項じこうは法的ほうてき効力こうりょくに関かかわってくるため、表現ひょうげんに不備ふびがないように慎重しんちょうに作成さくせいする必要ひつようがありますが、付言ふげん事項じこうは自由じゆうに作成さくせいしても良よいことになっています。

1-2. 付言ふげん事項じこうを書かくメリット

付言ふげん事項じこうは、自由じゆうに文章ぶんしょうを作成さくせいできることから、遺言ゆいごん者しゃ自身じしんのストレートな想おもいを関係かんけい者しゃに伝つたえることができます。そのため、家族かぞくに対たいして感謝かんしゃの気持きもちを伝つたえることができる、死後しごの葬儀そうぎや納骨のうこつの方法ほうほうなどを希望きぼうどおりにしてもらいやすくなる、相続そうぞくトラブルを防ふせげることができるなどのメリットがあります。

たとえば、遺言ゆいごん書しょを書かく場合ばあい、介護かいごに従事じゅうじしてくれた長男ちょうなんに他たのきょうだいよりも多おおめの遺産いさんを渡わたしたいなど、相続そうぞく人間にんげんで不平等ふびょうどうな内容ないようにしたいこともあるでしょう。その場合ばあい、取とり分ぶんが少すくない相続そうぞく人じんには不満ふまんが生しょうじやすくなります。しかし、そのような内容ないようの遺言ゆいごんを作成さくせいした経緯けいいを付言ふげん事項じこうに書かくことで、相続そうぞく人じんの不満ふまんが解消かいしょうされることも少すくなくありません。また、葬儀そうぎや納骨のうこつの方法ほうほうに関かんしても、遺言ゆいごん書しょに書かいておくことで本人ほんにんの希望きぼうが明確めいかくになり、相続そうぞく人じんがその希望きぼうを尊重そんちょうして進すすめやすくなります。

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2. 遺言ゆいごん書しょの付言ふげん事項じこうの書かき方かた

付言ふげん事項じこうを書かく位置いちや分量ぶんりょうについていうと、遺言ゆいごん書しょの最後さいごに書かくことが通常つうじょうで、法定ほうてい遺言ゆいごん事項じこうを書かき終おえた後のちに付つけ足たすイメージです。法定ほうてい遺言ゆいごん事項じこうがメインですので、付言ふげん事項じこうの分量ぶんりょうは少すくなく簡潔かんけつに留とめておくことが望のぞましいです。たくさん書かきたい場合ばあいは手紙てがみなどを併あわせて活用かつようしましょう。

2-1. 付言ふげん事項じこうの文例ぶんれい

実際じっさいに付言ふげん事項じこうをどのように書かいたら良よいか、典型てんけい的てきな事例じれいを基もとに、いくつか文例ぶんれいを紹介しょうかいします。

長男ちょうなんに多おおめの遺産いさんを渡わたす場合ばあい

長男ちょうなんの一郎いちろうは、大学だいがくを卒業そつぎょうした後のち、長年ながねんにわたって私わたしとともに家業かぎょうに従事じゅうじし、その発展はってんに大おおきく貢献こうけんしてくれました。そのおかげで、私わたし自身じしん、経済けいざい的てきにゆとりもでき、安心あんしんして老後ろうごを過すごすことができました。そこで、私わたし自身じしんの財産ざいさん形成けいせいに寄与きよしてくれた長男ちょうなんに多おおめの遺産いさんを渡わたすことにしました。他たの兄弟きょうだいも一いち郎ろうの頑張がんばりは十分じゅうぶんに知しっていると思おもうので、このような遺言ゆいごんを残のこすことを理解りかいしてほしいです。私わたしが亡なくなっても、兄弟きょうだいみんなで仲良なかよく暮くらしていってください。

家族かぞくに感謝かんしゃの気持きもちを伝つたえたい場合ばあい

私わたしは、素晴すばらしい妻つまと子こどもたちに恵めぐまれ、温あたたかい家庭かていを築きずくことができました。私わたしが妻つまと老人ろうじんホームに入はいった後のちも、子こどもたちが定期ていき的てきに会あいに来きてくれて本当ほんとうにうれしかったです。とても幸しあわせな人生じんせいでした。私わたしが亡なくなった後のちも、家族かぞくで互たがいに助たすけ合あってどうか幸しあわせな人生じんせいを送おくってください。

遺留分いりゅうぶんを請求せいきゅうしないで欲ほしい場合ばあい

妻つまには自宅じたく不動産ふどうさんと預金よきんの半分はんぶんを相続そうぞくしてもらうことにしました。私わたしが亡なくなった後のちも、住すまいやお金かねの心配しんぱいをせずに、安心あんしんして老後ろうごを過すごしてもらいたいためです。子こどもたちの取とり分ぶんはだいぶ少すくなくなってしまいますが、お母かあさんが安心あんしんして暮くらせるように、遺留分いりゅうぶんの請求せいきゅうはしないようお願ねがいします。お母かあさんのことをどうかよろしく頼たのみます。

葬儀そうぎの方法ほうほうを指定していしたい場合ばあい

私わたしの葬儀そうぎは、家族かぞくだけでささやかに済すませてください。葬式そうしきや告別こくべつ式しきなどは行おこなわずに直じき葬そうで構かまいません。これまで子こどもたちにはたくさんの苦労くろうをかけてきました。私わたしが亡なくなった後のちに葬儀そうぎのことで気苦労きぐろうをかけることは避さけたいですし、私わたし自身じしんも家族かぞくだけで静しずかにやってくれるほうがうれしいです。よろしくお願ねがいします。

介護かいごしてくれた長男ちょうなんの嫁よめに遺贈いぞうする場合ばあい

長男ちょうなんの嫁よめである花子はなこさんは、私わたし自身じしんの介護かいごに懸命けんめいに従事じゅうじしてくれました。老人ろうじんホームに入はいることなく、住すみ慣なれた自宅じたくに住すみ続つづけることができたのも、花子はなこさんが炊事すいじ洗濯せんたくなどをすべてやってくれていたおかげです。そこで、花子はなこさんにも、感謝かんしゃの気持きもちとして、遺産いさんの一部いちぶを渡わたすことにしました。次男じなんや三男さんなんも花子はなこさんの頑張がんばりは十分じゅうぶんに知しっていると思おもいますので、この判断はんだんを尊重そんちょうしてくれると信しんじています。相続そうぞくのことで揉もめることがないように切せつに願ねがっています。

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3. 付言ふげん事項じこうを書かくときの注意ちゅうい点てん

付言ふげん事項じこうの効力こうりょくの一ひとつに、トラブル防止ぼうしが挙あげられます。「争そう族ぞく」を避さけるための注意ちゅうい点てんを紹介しょうかいします。

3-1. 否定ひてい的てきなことはなるべく書かかない

ほとんど顔がおも見みせなかった子こどもがいる場合ばあいなどに愚痴ぐちを書かきたくなることもあるでしょう。

もっとも、特定とくていの相続そうぞく人じんに対たいして否定ひてい的てきなことを書かき連つらねると、かえって争そう族ぞくを引ひき起おこす可能かのう性せいがあります。そのため、否定ひてい的てきなことは書かくのはできるだけ避さけ、感謝かんしゃの気持きもちなど肯定こうてい的てきなことを書かくほうが良よいでしょう。

3-2. 付言ふげん事項じこうが多おおくなりすぎないよう注意ちゅうい

付言ふげん事項じこうが多おおくなりすぎると遺言ゆいごん書しょの趣旨しゅしが曖昧あいまいになってしまいます。たくさん書かきたい場合ばあいは、別途べっと手紙てがみやエンディングノートを利用りようすると良よいでしょう。また、録音ろくおんや録画ろくが等とうのデータを残のこしておくことも選択肢せんたくしの一ひとつです。書面しょめんと動画どうがでは与あたえる印象いんしょうが大おおきく異ことなりますので、遺言ゆいごん書しょの内容ないように不満ふまんを持もつ相続そうぞく人じんを説得せっとくする材料ざいりょうにもなります。

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4. まとめ：弁護士べんごしなどの助たすけを借かりた付言ふげん事項じこうがおすすめ

弁護士べんごしという仕事しごと柄がら、遺言ゆいごん書しょを拝見はいけんする機会きかいは少すくなからずありますが、付言ふげん事項じこうが書かかれているケースは多おおくありません。

しかし、これまで解説かいせつしてきたとおり、付言ふげん事項じこうには相続そうぞく人間にんげんのトラブル防止ぼうしに役立やくだつなどのメリットがありますので、トラブルが想定そうていされる場合ばあいなどには書かくことをおすすめします。付言ふげん事項じこうがあるのとないのとでは、相続そうぞく人じんの納得なっとく感かんが異ことなるためです。

遺言ゆいごん書しょを作成さくせいした経緯けいいが書かいてあることで、遺言ゆいごん書しょの内容ないように不満ふまんがある相続そうぞく人じんであっても「親おやがそのような想おもいで遺言ゆいごんを作成さくせいしたのであれば、その想おもいを尊重そんちょうしよう」と納得なっとくすることもあります。

ただし、何なんらの配慮はいりょもなく書かいてしまうと、かえってトラブルを招まねきかねません。そのため、遺言ゆいごん書しょ作成さくせい時じには、弁護士べんごしなどの第三者だいさんしゃに内容ないようをチェックしてもらうと安心あんしんでしょう。

（記事きじは2021年ねん4月がつ1日にち時点じてんの情報じょうほうに基もとづいています）

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