1. 「アパート経営はするな」と言われる背景事情
世間では「アパート経営だけはするな」と言われることがあります。思うように収益を上げられず、破綻のリスクがあるとの主張です。確かに、賃貸需要の低い地方ではアパート経営は難しく、疑心暗鬼となっている人が多いのも仕方ないかもしれません。
一方で、駅から近い、交通の利便性が高いなど立地の良い場所に土地を持っている人たちは、アパート経営に積極的な傾向にあります。木造や軽量鉄骨で安く建てられるアパートは、むしろ利益を上げられると考えています。
つまり、「アパート経営はするな」という忠告はすべての人に当てはまるわけではありません。
2. 「アパート経営はするな」といわれる理由と11のリスク
アパート経営のリスクについて解説します。11のリスクは下記のとおりです。
2-1. ローン返済できなくなるリスク
アパート経営には、ローンが返済できなくなるリスクが潜んでいます。
「借入金が多い」または「空室が多い」といった条件が重なると、ローンの返済に窮し、債務不履行で物件が競売にかけられることもあります。競売にかかっても売却で返しきれない残債があれば返済しなければならず、最終的には自己破産に陥るケースもあります。
2-2. 空室リスク
空室リスクがアパート経営では最大のリスクです。アパート経営は家賃収入で成り立っていますが、空室があればあるだけ、収益を上げる可能性は下がっていきます。
空室リスクは可能な限り避ける必要があります。空室リスクが呼び水となり、家賃下落リスクや資産価値低下リスク、ローン返済リスク等のあらゆるリスクを引き起こしてしまうためです。
2-3. 家賃下落リスク
アパート経営では、家賃下落リスクもあります。
家賃下落リスクの直接的な原因は、前に述べたとおり空室リスクです。空室が続くと、賃料を下げて募集せざるを得ないため、入居者が入れ替わるたびに家賃が下落していく可能性が高まります。
また、家賃は築年数が経つにつれ、下落する傾向があります。
2-4. 資産価値低下リスク
アパート経営では、資産価値低下リスクもあります。資産価値低下リスクも大きな原因は空室リスクです。建物の老朽化などが影響するケースも少なくありません。
アパートのような収益物件は、家賃収入を利回りで割る収益還元法と呼ばれる算式で価格を求めます。
収益価格 = 家賃収入 ÷ 利回り
空室が発生すれば、家賃下落リスクを引き起こし、分子の家賃収入が小さくなります。その結果、求められる収益価格が下がってしまいます。資産価格が低下していると、ローン返済に窮していざ売却しようにも、ローン残債が売却額を上回るオーバーローンの状態となってしまい、売るに売れない事態へと発展する場合もある点を認識しておきましょう。
また、物件価格は景気や金利の影響も受けることは知っておきましょう。好景気や、低金利の時には物件価格は高くなり、その逆だと下がる恐れがあります。
2-5. 管理会社がずさんなリスク
依頼した管理会社がずさんなリスクという例もあります。
よくあるのは、入居審査が甘く、不良入居者が入ってしまうケースです。ルールを守らず汚部屋にしたり、油で排水管を詰まらせたりする人は、資産価値を低下させる恐れがあります。資産価値の低下は空室リスクを高めることにもなってしまいます。
2-6. 自然災害や火災リスク
アパート経営では、地震や火災といった自然災害や火災リスクもあります。災害によってアパート経営が滞ると、当然収益にも影響が及んでしまいます。建て替えとなれば、その間の家賃収入はありません。
2-7. 入居者トラブルのリスク
入居者トラブルのリスクもあります。入居者トラブルには以下のようなものが挙げられ、対応には一定の労力や費用が伴います。
【入居者トラブルの例】
- 騒音
- 家賃滞納
- ゴミ出しルールを守らない
- 部屋を汚部屋状態にする
- 禁止事項を守らない(喫煙する・ペットを飼う等)
- 二人入居不可なのに、勝手に同居する
- 夜逃げ
- 自殺
2-8. 金利の上昇リスク
アパート経営には金利の上昇リスクもあります。
アパートローンを変動金利で組んでいる場合、金利が上昇すると返済総額が増え、結果、収支が悪化することになってしまいます。毎月の家賃収入をローンの返済金額が上回る可能性もゼロではありません。
2-9. 修繕費や原状回復費用のリスク
アパート経営では、修繕費や原状回復費用のリスクもあります。
まず、貸主には修繕義務があるため、アパート経営者は修繕費用を計画的に貯めておく必要があります。修繕は計画的に適切に行わないと建物の劣化が早く進み、さらに多くの修繕費が発生するというトラブルが発生します。
また、アパート経営では、原状回復のトラブルも多いです。原状回復義務とは、借主が借りたときの状態にすべて戻すという意味ではなく、経年劣化や通常損耗等による汚損や破損は原則として貸主負担で修繕するものとなります。
退去時に借主に過剰に原状回復義務を負わせることはできませんので、経年劣化や通常損耗に対処する修繕費用も計画的にストックしておくことが必要です。
2-10. サブリースの失敗リスク
サブリースとは転貸による管理方式です。「家賃保証」または「空室保証」と呼ばれる管理方式であり、空室が発生してもサブリース会社から振り込まれる賃料が固定となります。
ただし、家賃保証といっても永久に家賃が保証されるわけではなく、空室が発生すればサブリース会社から賃料の減額要請があります。
サブリースだから空室リスクを回避できるというわけではなく、サブリースを利用する場合でも空室リスクを負うものと認識してアパート経営をする必要があるのです。
2-11. 見積もりの甘いシミュレーション
見積もりの甘いシミュレーションで決断すると失敗するリスクが高まります。たとえば、賃料設定が新築時のまま30年間変わらない、空室リスクを全く見込んでいないといったものは、甘いシミュレーションと言えます。
3. リスクを抑えてアパート経営する方法
この章では、リスクを抑えてアパート経営する方法について解説します。
3-1. 事前のシミュレーション
事前に十分なシミュレーションを行うことが大切です。具体的にはシミュレーションで以下の5点をチェックします。
3-2. 自己資金を貯める
自己資金を貯めてからアパート経営を行うのも適切な対策です。
用意する頭金が多いほど、借入金が減りますので、返済リスクと金利の上昇リスクを減らすことができます。また、毎月の借入金の返済額が小さくなるため、空室に耐える力も高まります。購入費用の3割以上を頭金として用意できれば、投資の安全性は高くなります。
3-3. 立地や建物の差別化にこだわる
立地にこだわることも対策です。駅から近い、買い物が便利、都心部まで出かけやすい、人気の小学校がある、といった賃貸需要の強い立地であれば、空室リスクや家賃下落リスクは低くなります。
一方、賃貸需要がない、または競合の賃貸物件が多すぎる地域では、空室リスクが高く、プロでもアパート経営は難しいため、アパート経営を行わないという判断も適切と言えます。
また、建物の差別化にこだわることも対策です。
アパートは1階に空室が発生しやすいため、たとえば専用庭を作ったり、天井高の高い部屋を作ったり、収納を増やしたりといった差別化をすると1階が埋まりやすくなります。
3-4. 市場調査
自分でも市場調査をしておくことがポイントです。
具体的には、ハウスメーカーが提案してきた間取りの部屋で、周辺の類似の物件の賃料がいくらで募集されているかを調べておくことは最低限必要と言えます。
3-5. 相続した土地があれば有利
相続した土地であれば、土地の購入費が不要のため、有利です。
ただし、立地が悪ければその土地で無理にアパート経営は行わず、良い立地に買い替えてから始めることも適切な対策となります。
3-6. 保険に入る
自然災害に対しては、火災保険と地震保険に加入しておくことが適切です。火災保険や地震保険は長期一括契約で加入すると安くなります。
アパートのような賃貸経営では、貸主は建物に加入し、借主は家財に加入させることが通常です。
3-7. 良い管理会社を選ぶ
アパート経営では良い管理会社を選ぶことがとても重要です。賃貸仲介に強い会社を選ぶと、それだけで空室対策になります。同じ物件でも管理会社を変えると空室が埋まることもあるため、管理会社選びも空室リスク対策になるといえます。
また、「家賃保証」または「空室保証」と呼ばれる管理方式のサブリースを使わないとアパート経営が不安と思えるような立地の場合、良い立地に買い替えてから始めたほうが良いケースが少なくありません。
3-8. 物件選びや建築はノウハウを蓄積した良質な不動産会社へ相談する
物件選びや建築はノウハウを蓄積した良質な不動産会社やハウスメーカーに相談すると成功確率が上がります。すべて自分でやろうとするのではなく、プロのノウハウも借りながら進めていくと、早く安全に成功に近づけるようになります。
4. まとめ
「アパート経営はするな」と言われますが、これまで見てきたとおり、アパート経営そのものが悪というわけではありません。
リスクを抑えれば成功できますし、成功例も多いです。関心があるなら良質なハウスメーカーや不動産会社へ相談してみましょう。土地活用プランの一括請求サービスなどを活用するのもお勧めです。
(記事は2022年7月1日時点の情報に基づいています)