1. 駐車場経営は賃貸経営より儲からないが、低リスク
駐車場経営は、アパートやマンションなどの賃貸経営と比較すれば収益額はそれほど多くはありません。
ただその分、初期費用や管理コストが抑えられるので、低リスクな土地活用を選びたい方にとって魅力的な手段ともいえます。大きな失敗を避けつつ収益が得られるので、活用できていない不動産があれば、駐車場経営を検討してみましょう。
2. 駐車場経営のメリット
駐車場経営には、以下のメリットがあります。
- 初期費用が抑えられる
- 「1台」からできるので狭小地を活用できる
- 災害リスクが低い
- 収益が安定し、手間もかからない
- 別の用途に活用しやすい
2-1. 初期費用が抑えられる
駐車場経営は、賃貸経営のように建物を必要としないため初期費用が抑えられます。初期費用が少なければ、駐車場経営に失敗したときのリスクを低減できます。
また、あまり自己資金を準備できない個人が始めやすいのもポイントです。賃貸物件は、建物の構造や規模にもよりますが、その建築に数千万円〜数億円かかるため、資金がない人が始めるのは困難である場合が多いでしょう。
2-2.「1台」からできるので狭小地を活用できる
アパートやマンションなどの賃貸経営をするには、建築に適した形状と広さが必要になります。一方、駐車場は狭小地や変形地であっても、1台以上の駐車スペースと出入り口が確保できれば問題ありません。
狭い土地を所有している場合は、小規模な駐車場経営をすることも選択肢に入れておきましょう。
2-3. 災害リスクが低い
駐車場経営は、賃貸経営に比べて、災害リスクによる損失を抑えられます。
たとえば、建物がないため、地震による倒壊リスクはありません。災害後も事業継続がしやすいことから、災害が多い地域の土地活用の手段として取り入れやすくなるでしょう。
2-4. 収益が安定し、管理の手間もかからない
コインパーキングは運営会社に土地を一括賃貸する形式を選択する人が多いです。土地を一括賃貸した場合、運営会社から毎月固定の賃料が入ってくるため、収益が安定している点がメリットとなります。
土地所有者は運営会社に貸すだけであり、特に何もする必要がないため、手間もほとんどかかりません。
運営会社に頼らず自営で行った場合でも、数台程度の小規模な駐車場であれば、それほど管理の労力はかからないでしょう。ただし、駐車場内で事故が起きたり、近隣住民や利用者とのトラブルが起きたりする可能性があることを認識しておきましょう。
2-5. 別の用途に活用しやすい
駐車場経営は、土地に建物を建てたりトランクルームを設置したりするわけではないため、更地に戻す際にも撤去費用が少なく済み、駐車場から別の用途に活用しやすいのがメリットです。
駐車場運営会社との賃貸借契約も簡単に解約ができ、他の賃貸経営やトランクルームを始めたい投資家に売却しやすいといえます。
3. 駐車場経営のデメリット
多くのメリットがある駐車場経営ですが、デメリットも存在します。ここからは、駐車場経営を始めるうえで注意するべきポイントを紹介します。
- 税金の負担が増える
- 収益性が低い
- 競合が多い
3-1. 税金の負担が増える
アパートやマンションなどの住宅がある土地は「住宅用地の軽減措置」が適用され、住宅1戸につき200平方㍍までの部分の固定資産税が6分の1、都市計画税が3分の1となりますが、駐車場には適用されません。そのため、賃貸住宅と比べ、固定資産税と都市計画税の負担が増えてしまうのです。
3-2. 収益性が低い
駐車場経営は、住宅を建てて貸す賃貸経営に比べると、賃料が低くなることが一般的です。そのため、賃貸経営より収益性が低くなってしまう傾向があります。
土地活用は、一般的に投資額が大きくなるとハイリスクになる一方、収益は高いハイリターンとなる性質があります。駐車場は投資額が少ないローリスクの事業であるため、収益が低いローリターンの土地活用です。
3-3. 競合が多い
初期費用や管理コストが抑えられる駐車場経営は、低リスクで土地活用を始められるので、競合が多くなってしまいがちです。
競合が増えると、利用者を確保するための価格競争が激しくなるケースがあります。そのような場合、駐車場運営会社から賃料の減額を申し入れられることも多いです。駐車場経営をする際は、土地周辺に競合となる駐車場がどれぐらいあるかを考慮したうえで始めましょう。
4. 駐車場の種類
駐車場の種類を大きく分けると、2つあります。駐車場経営を成功させるためにも、土地や利用者の特性にあわせて適切な駐車場を選びましょう。
4-1. 月極駐車場
月極駐車場とは、特定の利用者と契約を結んで賃料収入を得る駐車場です。
ゲートや精算機などの設備を必要としない場合が多いため、初期費用が抑えられます。また、個人でも運営会社に頼らずに、自営で無理なく行うことができる点がメリットです。
月極駐車場は、継続的な利用が前提となるため、駐車が難しい狭小地や変形地だと、利用者は契約に二の足を踏むことになるでしょう。周辺の月極駐車場と比較して利用しやすい土地であるかなどの調査をしておくことが大切です。
4-2. コインパーキング
コインパーキングとは、利用時間に応じた料金を支払うシステムの駐車場です。駐車台数と利用時間が増えるほど収益が大きくなるため、観光地や駅近くといった車の出入りの多い地域が向いています。コインパーキングの適地であれば、収益性は一般的に月極駐車場よりも高いです。
駐車場運営会社に一括貸しをするコインパーキングの形態には、「施設貸し」と「土地貸し」の2種類があります。
施設貸しとは土地所有者がアスファルト舗装までした後に貸し出す方法で、土地貸しとは土地所有者がアスファルト舗装もせずに貸し出す方法となります。施設貸しはアスファルト舗装費用が必要となる点がデメリットですが、賃料は土地貸しよりも高くなります。いずれもゲートや精算機などは、駐車場運営会社の持ち込み資産です。
5. 駐車場経営で失敗をしないための見るべきポイント
駐車場経営で失敗しないためには、土地の特性や相場などの見るべきポイントを押さえておかなければなりません。ここでは、駐車場経営をする際のポイントを紹介します。
5-1. 駐車場経営に向いている土地であるか
大型駐車場や市営駐車場がある地域のように、駐車場経営の競合が激しい場合、想定していた利益が得られないケースが考えられます。そのため、活用する土地が駐車場経営に向いているのかを確認しておきましょう。
また、どのような駐車場を利用者が求められているかも重要な要素です。たとえば、住宅街ではコインパーキングが向いておらず、商業施設付近では月極駐車場の需要が見込めないでしょう。
駐車場経営をする際は、土地の特性や周辺環境に応じて判断することが大切です。ただ、どのような土地が駐車場経営に向いているかを判断するのは困難です。そういった場合は、土地活用を専門とした会社から提案が受けられる相続会議の土地活用プラン請求サービスを活用してみましょう。
5-2. 初期費用を減らす方法がないか
コインパーキングであれば、土地貸しを選択することで初期費用をゼロ円とすることができます。立地に不安があり、アスファルト舗装もしたくない場合には、土地貸しを検討してみるのも手段の一つです。
駐車場運営会社から提案を受ける際は、施設貸しと土地貸しの両方を検討し、予算やその土地にあった適切な経営方法を選択するようにしましょう。
5-3. 賃料が高すぎないか
複数の駐車場運営会社から賃料を見積もると、中には相場よりも高い賃料を提示してくる会社もあります。高過ぎる賃料を提示してくる運営会社は契約後、すぐに賃下げ交渉をしてくることも多いです。そのため、高い賃料に安易に飛びつかないことも賢い選択といえます。
高過ぎる賃料を見抜くためにも、複数の運営会社から賃料の見積もりを取ることをおすすめします。
5-4. 管理方法が適切であるか
駐車場経営は、下表のように経営方式によってオーナーの管理業務が異なります。
駐車場経営の管理業務の違い一覧表。「料金設定」「利用者の募集」「掃除」「トラブル対応」など経営方式ごとに異なります。
管理会社への手数料が発生しない自営方式は、駐車場経営による利益が大きくなる可能性がありますが、利用者の募集やクレームに自身で対応しなければなりません。
一方、管理方式ではマーケティングや経営アドバイスをしてくれる管理会社もあるので、利益を最大化できるケースがあります。また、駐車場の管理やトラブルにも対応してくれるので、駐車場経営に手間をかけたくない方にもおすすめです。
駐車場経営では利益だけでなく、経営の難易度や手間を考慮したうえで適切な管理方法を選択することが大切です。
5-5. 入念なシミュレーションをしているか
自営方式の駐車場経営での失敗を避けるには、事前のシミュレーションが大切です。特に運営当初はドライバーに対する認知度が低いため、収益が伸び悩むことがよくあります。
駐車場経営では、税金や管理費などのランニングコストがかかるので、利用料金で賄えるのか、利益が出るのかを計算しておきましょう。シミュレーション結果が赤字になるようであれば、賃貸住宅やトランクルームといった別の土地活用を検討してみるのも手段の一つです。
6. 駐車場経営の始め方
駐車場経営は、以下の流れで進めます。
- 保有している土地を活用する
- 駐車場の種類・管理方法を決める
- 業者を選び、駐車場工事をする
- 駐車場経営を開始する
6-1. 保有している土地を活用する
駐車場経営は収益性が低いことから、新たに土地を購入して採算が合うような土地活用ではありません。保有している土地を活用することが原則です。
新たに土地を購入する場合には、土地を全額自己資金で購入する必要があります。ただし、土地を全額自己資金で購入できるようであれば、無理に低収益の駐車場を選ぶ必要はないといえます。アパートや賃貸マンションなどのより収益性が高い土地活用も含めて検討することが望ましいです。
6-2. 駐車場の種類・管理方法を決める
活用する土地を決めたら、駐車場の種類と管理方法を決めましょう。
駐車場の種類を決める際は、周辺環境を考慮しなければなりません。たとえば、観光地などの商業エリアではコインパーキング、駅近くなどの継続的な利用が見込める地域では月極駐車場を選ぶとよいでしょう。ただし、周辺に大型駐車場や市営駐車場がある場合は、利用者が少なくなってしまうケースがあるので注意が必要です。
管理方法を選ぶ際は、駐車場経営に自分自身がどれくらい労力をかけられるかから判断しましょう。自営方式を選べば利用者の募集や精算機の釣銭管理、トラブル対応といった管理業務に、その都度対応しなければならなくなります。居住地から遠かったり、本業が忙しかったりする場合は、管理会社に委託することも視野に入れておきましょう。
6-3. 業者を選び、駐車場工事をする
駐車場工事の費用を抑えるためには、複数の会社から見積もりをとることが大切です。
それぞれの提示金額を比較すれば、相場より高いかどうかの判断材料になります。なお、提示金額が安過ぎる業者は、とりあえず契約を取りたいだけの可能性があるので、適切な金額を提示してくれる業者を選ぶことが重要です。
ただ、業者への個別連絡は労力が非常にかかる作業です。インターネットでの一括比較サービスを利用すると、土地活用を専門としている複数の会社から設計プランや施工費用の提案が受けられるので、忙しい人にもおすすめです。
6-4. 駐車場経営を開始する
現地工事が完了したら、駐車場経営のスタートです。施設貸しや土地貸しであれば、全て運営会社に任せることが可能です。
7. 駐車場経営でのよくある質問
ここでは、駐車場経営でよくある質問をご紹介します。
7-1. 駐車場経営にはどんな失敗がある?
駐車場経営での失敗事例としては、以下が挙げられます。
- 利用者が見つからない
- 競合が多く、想定より利用料金を低くしなければならない
- シミュレーション結果より儲からない
これらの失敗には「事前の調査不足」が原因となっているケースが多いので、事前調査のうえ適正なシミュレーションをすることが大切です。
7-2. 駐車場経営の利回りはどうやって計算すればいい?
駐車場経営の利回りは、以下のように計算します。
利回り=(年間賃料 ー 管理費)÷(土地の価格 + 初期費用)×100(%)
年間賃料や初期費用を正確に算出するほど、実際に駐車場経営をした際の利回りに近づきます。駐車場経営の利回りを計算する際は、競合となる駐車場の稼働率や相場を確認したうえで正確な数値で算出しましょう。
7-3. 駐車場経営にはどんな税金がかかる?
駐車場経営をする際には、以下の税金を納めることとなります。
- 固定資産税・都市計画税
- 消費税(施設貸しの場合)
- 所得税・住民税
駐車場経営にかかる税金は、駐車場の設備や経営形態によって異なります。正確なシミュレーションをするためにも、自身の駐車場にどれほどの税金がかかるのかを確認しておくことが大切です。
設備投資や確定申告の方法によっては節税効果が見込めるので、あわせて確認しておくとよいでしょう。
7-4. 小さな土地でも駐車場経営ができる?
駐車場経営は、狭小地や変形地であっても始められます。
10坪程度の土地があれば、2台程度の小規模駐車場として活用することも可能です。相続などで取得した土地を活用していないのであれば、土地活用を検討してみましょう。
7-5. 駐車場経営にはどんなトラブルがある?
賃貸経営よりトラブルが少ない傾向にある駐車場経営ですが、以下のようなトラブルが発生する可能性があります。
- 無断駐車や車の放置
- 近隣住民からの苦情
- 駐車場内の事故
- 設備破損
トラブルが起きた際は、オーナーとして適切な判断と対処が求められます。居住地から遠かったり、本業が忙しかったりする場合は、管理会社に依頼するのがおすすめです。また、無断駐車や車の放置、設備破損の証拠とするために、防犯カメラの導入も検討しておきましょう。
8. まとめ
駐車場経営は賃貸経営より儲からない傾向がありますが、初期コストや労力が抑えられるメリットがあります。駐車場経営は狭小地や変形地でも収益が得られるので、相続で取得した土地があったり、更地として放置している土地がある方は検討してみてください。
駐車場経営で失敗するのが怖い、誰に相談すればいいのかわからない、といった方は相続会議の土地活用プラン請求サービスを活用して、土地活用の専門家から無料でアドバイスを受けてみましょう。
(この記事は2023年3月1日現在の情報に基づいています)