ロシアのウクライナ侵攻当日、金融市場ではアメリカのロシア制裁がどの程度に及ぶのかが注視されていましたが、欧米側との軍事衝突の可能性は極めて低く、制裁もエネルギー部門は回避されるとの見方が広まり、原油価格の上昇もいったん一服、ダウ平均等の株価も大きく下がったところから上昇して終わりました。
Politicoでは、バイデン大統領は自国経済にも大きな影響を与えるエネルギー部門への制裁は行わないと報じており、同誌とともに議会3誌であるThe Hillでも制裁は銀行や輸出規制に当面はとどまり、SWIFT銀行決済システムからの排除は行われないと報じています。引き続き制裁がエネルギー部門とSWIFTに及ぶのかが2大テーマになると思いますが、その可能性は現時点では低いと市場は見たわけです。
「小乗の善は大乗の悪」に陥らないために
もっとも、これまで述べてきたようなプーチンの長年にわたって準備を積み重ねてきた脅威的な大戦略を考えると、今回の欧米の制裁やその後の市場の反応について、仏教用語で言うところの「小乗の善は大乗の悪」という言葉を筆者は想起させられました。
もちろん軍事衝突は絶対に回避すべきであり、ロシアへの制裁もグローバルな政治・経済・社会・テクノロジーの視点から妥当なものである必要があることは言うまでもありません。しかし、プーチンの大戦略が本当にここで述べたようなものだったとしたなら、アメリカ・バイデン大統領の言う「民主主義国家」は、「専制主義国家」に対してもっと一致団結して毅然な態度で臨むべきだったように思われます。
Politicoでは、2月23日付で「バイデン大統領がウクライナで超えない一線」という記事を配信、バイデン大統領が軍事的には対抗しないことを早くから明確にしたことがロシアの軍事侵攻を招いたこと、さらにはその姿勢を中国は見ており、台湾問題にも影響を与える等と伝えました。
ちょうど5年前の同日、筆者は、アメリカでトランプ大統領が就任して初めてのCPAC、共和党最大の支持母体の年次総会にリサーチ目的でアメリカに出張して参加していました。
トランプ前大統領は本当に功罪両面ある大統領で個人的には価値観として支持できないところが多かったものの、同人であれば、今回のような侵攻はまた違った展開になっていたものと予想されます(その一方で、同人が大統領に復帰し、気候変動対策などがまたもとに戻ってしまったら世界はさらに大変なことになると予想します)。
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