危機ききを迎むかえるたびに｢より強つよくなる｣100年ねん企業きぎょう 元もと中小企業庁ちゅうしょうきぎょうちょう長官ちょうかんが語かたる｢老舗しにせの耐たい久力くりき｣

GDPの指標しひょうでは測はかれない価値かちにこそ着目ちゃくもくすべきだと説とく前田まえだ泰宏やすひろ氏し（撮影さつえい／梅谷うめたに秀司しゅうじ）

――日本にっぽんのGDPがドイツに抜ぬかれたことが大おおきなニュースになりました。

GDPは、一定いってい期間きかん内ないに国内こくないで産出さんしゅつされた付加ふか価値かちの総額そうがく、儲もうけを指さす概念がいねんでしかない。

見落みおとしてはならないのは、世界せかいの若わかい世代せだいはGDPの指標しひょうでは測はかれないものへと価値かちをシフトさせているということ。生態せいたい系けいや家事かじ労働ろうどう、地域ちいきコミュニティとの助たすけ合あいなど取引とりひき関係かんけいが明確めいかくではない、数値すうち化かできない価値かちに重おもきを置おきはじめている。

世界せかい的てきブームになりつつあるのがゼブラ企業きぎょうだ。自然しぜん環境かんきょうや食料しょくりょう問題もんだい、貧困ひんこん、格差かくさなどグローバルな社会しゃかい課題かだいの解決かいけつを目指めざして事業じぎょう展開てんかいする企業きぎょうのことをいう。ゼブラ企業きぎょうの中心ちゅうしんにいるのはZ世代せだいと呼よばれる若わかい人々ひとびとで、彼かれらは「このままでは自分じぶんたちの未来みらいが危あやうい」と感かんじている。

その危機きき感かんと、収益しゅうえき性せいのある事業じぎょうをうまくカップリングさせているのがゼブラ企業きぎょうだ。

ユニコーン企業きぎょうとゼブラ企業きぎょうの違ちがい

――創業そうぎょう10年ねん以内いないで時価じか総額そうがく10億おくドル（約やく1400億おく円えん）を超こえる未み上場じょうじょう企業きぎょう「ユニコーン企業きぎょう」とゼブラ企業きぎょうはどう違ちがうのでしょう。

ユニコーン企業きぎょうは事業じぎょう規模きぼが大おおきいので雇用こよう創出そうしゅつや経済けいざい成長せいちょう促進そくしんという点てんでは存在そんざい価値かちがある。だが、ユニコーンを目指めざす企業きぎょうの中なかにはガバナンスが弱よわく、社会しゃかい的てき責任せきにんより企業きぎょう価値かち最大さいだい化かに重おもきを置おく傾向けいこうがあるのも事実じじつだ。

ユニコーンはその、際きわだった存在そんざい感かんから伝説でんせつ上じょうの生いき物ものの名称めいしょうが用もちいられたが、ゼブラの名称めいしょうはシマウマの縞しま模様もようと、群むれで行動こうどうする習性しゅうせいに由来ゆらいしている。集団しゅうだんとして共存きょうぞんしていく相あい利り共生きょうせいがゼブラ企業きぎょうの生いき方かただ。

10倍ばい成長せいちょうのスピードで競争きょうそうを勝かち抜ぬき、市場いちばを独占どくせんするほど大おおきくなったところで株式かぶしきや事業じぎょうを売却ばいきゃくしてゴールとするのがユニコーン企業きぎょうなら、ゼブラ企業きぎょうは同業どうぎょう他社たしゃや地域ちいき社会しゃかいと協力きょうりょくし合あいウィンウィンの関係かんけいを築きずいていく。上場じょうじょうや売却ばいきゃくを目的もくてきとはせず、ゆっくりだが持続じぞく的てきな繁栄はんえいを目指めざす。ゴールはあくまでも社会しゃかい課題かだいの解決かいけつだ。

ひと昔むかし前まえまで、アクティビストなど強欲ごうよくなもの言いう株主かぶぬしは投資とうし先さき企業きぎょうが成長せいちょうしさえすればいいという目線めせんで投資とうし活動かつどうをしていたが、徐々じょじょに変かわってきている。環境かんきょう（Environment）、社会しゃかい（Social）、ガバナンス（Governance）を投資とうし基軸きじくにするESG投資とうしは広ひろく浸透しんとうした。そこからさらに踏ふみ込こみ、投資とうしによって社会しゃかい課題かだいの解決かいけつを目指めざそうとするインパクト投融資とうゆうしも台頭たいとうしている。

――社会しゃかいを無視むしする企業きぎょうは資金しきん調達ちょうたつすら難むずかしくなってきているわけですね。

そういうことだ。ここで強調きょうちょうしておきたいのは、ゼブラ企業きぎょうと100年ねん企業きぎょうの共通きょうつう項こう。社会しゃかい課題かだい解決かいけつや自然しぜんとの共生きょうせい、利他りたの精神せいしんといったゼブラの理念りねんは、100年ねん企業きぎょうの理念りねんそのものだ。ゼブラ企業きぎょうは100年ねん企業きぎょうに向むかって走はしっている。