アメリカに過剰かじょう依存いぞん･過剰かじょう同調どうちょうする日本にっぽんへの警告けいこくインドは日本にっぽんの戦中せんちゅう戦後せんごをじっと見みつめている

井い艸そうこう恵美えみ　野中のなか大樹だいき : 東洋とうよう経済けいざい記者きしゃ

2024/09/03 6:20

インドと向むき合あう時とき、「ビジネス機会きかい」という認識にんしきしか持もてていなければ冷笑れいしょうされると語かたる寺島てらしま実みのる郎ろう氏し（撮影さつえい／梅谷うめたに秀司しゅうじ）

人口じんこうで中国ちゅうごくを抜ぬいたインド。2029年ねんにはGDP（国内こくない総そう生産せいさん）でドイツ、日本にっぽんを抜ぬいてアメリカ、中国ちゅうごくにつぐ世界せかい3番目ばんめの経済けいざい大国たいこくになると言いわれている。9月2日にち発売はつばいの週刊しゅうかん東洋とうよう経済けいざいは特集とくしゅう「インドが熱あつい――『脱だつ中国ちゅうごく』で脚光きゃっこう」を組くんだ。

急きゅう成長せいちょうするインドにビジネスチャンスを見みいだす企業きぎょうや投資とうし家かは多おおい。そんな中なか、インドと向むき合あう以上いじょうは日本人にっぽんじんとして知しっておかなければならないことがあると語かたるのが一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじん・日本にっぽん総合そうごう研究所けんきゅうじょ会長かいちょうの寺島てらしま実みのる郎ろう氏しである。寺島てらしま氏しに、インドと向むき合あううえでの覚悟かくごを聞きいた。

――インドは人口じんこうで中国ちゅうごくを抜ぬき、近ちかい将来しょうらい、日本にっぽんのGDPも追おい抜ぬくといわれています。インドの経済けいざい成長せいちょうをどのように見みていますか。

人口じんこう増加ぞうかが後押あとおししているのは言いうまでもないが、人口じんこう増加ぞうかだけでは説明せつめいできない。

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インドは1947年ねんに独立どくりつを果はたすまでイギリスの植民しょくみん地下ちかにあった。インド人じんにとっては屈辱くつじょく的てきな歴史れきしだが、「英語えいご」という植民しょくみん地ち時代じだいの遺物いぶつをインド人じんは自分じぶんたちの武器ぶきに変かえた。インドIT産業さんぎょうの中心地ちゅうしんちベンガルール（バンガロール）と、アメリカ・シリコンバレーの人的じんてきネットワークの深ふかさを見みるだけでも、英語えいご圏けんであることの強つよみが見みえる。

大だい英えい帝国ていこくの中心ちゅうしん地ちロンドンからドバイ、ベンガルール（インド）、シンガポール、シドニー（オーストラリア）をつないだネットワークを私わたしは「ユニオンジャックの矢や」と呼よんでいる。大だい英えい帝国ていこくそのものはなくなったが、英国えいこくの影響えいきょう力りょくは言語げんごや文化ぶんか、スポーツに至いたるまで世界中せかいじゅうに残のこり、現代げんだいにおいてもイギリスの力ちからの源泉げんせんになっている。

英えい連邦れんぽうネットワークの一翼いちよくを担になっていたことが、皮肉ひにくにもインドにポジティブな意味いみを持もたせ始はじめている。イギリスのリシ・スナク前ぜん首相しゅしょうはイギリス初はつの非ひ白人はくじんおよびインド系けい首相しゅしょうだった。アメリカの民主党みんしゅとう大統領だいとうりょう候補こうほカマラ・ハリス氏しはインド系けい移民いみん2世せい。かつてイギリスがインドの地中ちちゅうに埋うめた種たねが、地上ちじょうで花はなを咲さかせているということだ。

インドからの視線しせん

――巨大きょだいな市場いちばにビジネスチャンスを見みいだし、日本にっぽんの企業きぎょうや投資とうし家かがインド投資とうしを強つよめています。

日本人にっぽんじんがインドと向むき合あう時とき、「ビジネスの機会きかい」という認識にんしきしか持もてていないのなら、浅薄せんばくさを冷笑れいしょうされるだろう。日本人にっぽんじんが忘わすれかけている日ひ印しるし関係かんけいの歴史れきしやインドからの視線しせんを、今いま一いち度ど視界しかいに入いれてほしいと私わたしは思おもう。

第だい2次じ世界せかい大戦たいせんで戦争せんそうに突つき進すすみ、敗戦はいせん国こくとなった日本にっぽんの歩あゆみを、インドはじっと見みつめてきた。たとえばチャンドラ・ボースという、日本にっぽん軍ぐんのインパール作戦さくせん（連合れんごう軍ぐんの拠点きょてんだったインド北東ほくとう部ぶインパールの攻略こうりゃくを目指めざし、1944年ねん3月がつに日本にっぽん軍ぐんが開始かいしした作戦さくせん＝編へん注ちゅう）に関かかわった人物じんぶつがいる。

これほど日本にっぽんと縁えんのあったインド人じんもいないのだが、「西洋せいよう列強れっきょうの植民しょくみん地ち支配しはいからアジアを解放かいほうする」という日本にっぽんの大義たいぎを逆手さかてに取とったボースは、祖国そこく独立どくりつのためにインド国民こくみん軍ぐんを率ひきいて日本にっぽん軍ぐんとともに英国えいこく軍ぐんと戦たたかった。しかし、インパール作戦さくせんは壊滅かいめつ的てきな敗北はいぼくに終おわってしまう。

私わたしが驚おどろかされたのは、現代げんだいインドにおけるボースの評価ひょうかだ。軍国ぐんこく主義しゅぎ日本にっぽんと手てを組くんだ人物じんぶつとしてさげすまれているのかと想像そうぞうしていたら、まったく逆ぎゃくだった。ボースはインド独立どくりつの英雄えいゆうの一人ひとりとして初代しょだい首相しゅしょうジャワハルラール・ネルーや非ひ暴力ぼうりょく不ふ服従ふくじゅうを貫つらぬいたマハトマ・ガンディーらとともに歴史れきし博物館はくぶつかんに展示てんじまでされていた。インドはボースを忘わすれていない。