一番いちばん最初さいしょにガツンときたのは鬼おに兄弟きょうだい！【対談たいだん】岸本きしもと斉ひとし史し×堀越ほりこし耕平こうへい

　ついに完結かんけつを迎むかえた『NARUTO―ナルト―』とその連載れんさい終了しゅうりょうと時じを同おなじくして、少年しょうねんマンガシーンのトップに躍おどり出でた『僕ぼくのヒーローアカデミア』。この2作さくには多おおくの共通きょうつう点てんから『ジャンプ』のDNAが脈々みゃくみゃくと受うけ継つがれているように感かんじられてならない。『ダ・ヴィンチ』5月がつ号ごうの『NARUTO』特集とくしゅうでは、そんな2作さくの著者ちょしゃによる対談たいだんが実現じつげんした。

――『NARUTO』の最終さいしゅう話ばなしが掲載けいさいされた『ジャンプ』の巻末かんまつで、堀越ほりこしさんはこんなコメントを出だされていました。「NARUTOは僕ぼくの青春せいしゅんそのものです。最高さいこうの少年しょうねん漫画まんがを有難ありがたう御座ございました！」。ぜひ“青春せいしゅん”の中身なかみをお伺うかがいしたいです。

【堀越ほりこし】　『ジャンプ』で『NARUTO』の連載れんさいが始はじまってからは、学校がっこうの友達ともだちと毎週まいしゅうのように話はなしをしていました。「今週こんしゅう、あそこヤバかったよね！」みたいな。とにかくナルトのことを追おいかけて、ナルトが喜よろこんだり悲かなしんだりする気持きもちを僕ぼくも体験たいけんしていって……。あっ、僕ぼくが一番いちばん最初さいしょにガツンときたのは……。

【岸本きしもと】　そういう話はなしってあんまり聞きけないから面白おもしろい（笑）。

【堀越ほりこし】　タズナを護衛ごえいする任務にんむの依頼いらいが来きた回かいで、霧隠きりがくれの中なか忍にん２人組にんぐみが出でてくるじゃないですか。

【岸本きしもと】　えーと、再さい不ふ斬き（ザブザ）と白しろ（ハク）じゃなくて？

【堀越ほりこし】　その前まえです。その前まえにちょっと出でてくる鬼おに兄弟きょうだいって覚おぼえてますか。

【岸本きしもと】　おわ！　久ひさしぶりに思おもい出だしました！　描えがきましたね。「描えがきましたね」って言いうのもヘンだけど（笑）。

【堀越ほりこし】　そいつが出でてきた時ときに、首くびが前後ぜんごに2つくっついて体からだは1つで。ガスマスクをしてている姿すがたが超ちょうかっこ良よくて。

【岸本きしもと】　あれに食くいついたの（笑）！？

【堀越ほりこし】　はい（笑）。鬼おに兄弟きょうだいのデザインもそうなんですけど、その回かいの演出えんしゅつもすごくて。「たいしたことない任務にんむだろう」みたいなことを言いってたら急きゅうに出でてきて、その回かいの最後さいごはカカシ先生せんせいがバラバラになるって“引びき”だったじゃないですか。しかも、あそこでナルトとサスケの差さが明確めいかくに出でる。戦たたかいでビビるやつと、ガンガン行いくやつと……。しびれました。

【岸本きしもと】　やっぱり見みるところが違ちがいますね。キャラが行動こうどうをはっきり示しめすところを見みてるんだ。

【堀越ほりこし】　絵え的てきなすごさでいうと、鬼おに兄弟きょうだいは手てが武器ぶきになっていますよね。サスケはクナイを手てに持もって戦たたかって、ナルトは自分じぶんの弱よわい気持きもちを奮ふるいたせるために、手てにクナイを刺さして。そのへんのシーンをずっと見みているうちに、手ての細こまかい表現ひょうげんが気きになり出だしたんです。あれ他ほかのマンガ家かさんとは手ての描えがき方かたが根本こんぽん的てきに違ちがうぞ、と。

【岸本きしもと】　そういえば、『僕ぼくのヒーローアカデミア』のコミックス2巻かんで「手てを描えがくのが好すきです」と書かいてましたよね。

【堀越ほりこし】　『NARUTO』のおかげで手てを描えがくのが大好だいすきになったんです。顔かおのアップとかでも、必要ひつようないのにわざわざ手てを入いれたりしています。手ては顔かおの次つぎに感情かんじょうが出でると思おもうんです。

【岸本きしもと】　僕ぼくもそう思おもいますね。手てって強つよく握にぎったグーと軽かるく握にぎったグーでは、全然ぜんぜん表情ひょうじょうが違ちがう。顔かおとおなじぐらい、気持きもちが手てで表現ひょうげんできる。なんか手てをずうっと見みてると、だんだん「かっこいい……」となってくるんですよねえ。「神様かみさますげえ！」って。

【堀越ほりこし】　僕ぼくまだその領域りょういきにはいけてないです。まだまだです（笑）。

――鬼おに兄弟きょうだいで『NARUTO』に心しんをつかまれてからは、どんなふうに楽たのしまれていましたか？

【堀越ほりこし】　やっぱり「中ちゅう忍にん試験しけん」は最高さいこうでした。キャラで一番いちばん好すきなのが我わが愛あい羅ら（ガアラ）なんですけど、異質いしつな存在そんざいだらけの中なかでも際立きわだって異質いしつで、何なにより群ぐんを抜ぬいて強つよい。中学生ちゅうがくせいくらいの時ときって強つよさでキャラの好すき嫌きらいを分わけるので。

【岸本きしもと】　我わが愛あい羅らは頭あたま一ひとつ飛とび出でた強つよさにしたい、という思おもいはありましたね。「こいつと戦たたかうのはヤバい」という怖こわさを出だしたかった。『僕ぼくのヒーローアカデミア』でも最近さいきん、氷こおりと炎ほのおの半分はんぶんずつの、ヤバい感かんじの生徒せいとが出でてきたじゃないですか。

【堀越ほりこし】　轟とどろき焦こげ凍こお（とどろきしょうと）ですね。

【岸本きしもと】　父親ちちおやと母親ははおやのドラマを、うまいこと絡からめていってる。あのキャラは今後こんご伸のびるな、と思おもいましたね。「このキャラは伸のびしろがありそう」とか「このキャラならしばらくやっていける気きがする」という感覚かんかくを身みにつけるのは、週刊しゅうかん連載れんさいをするうえで結構けっこう大事だいじ。

【堀越ほりこし】　岸本きしもと先生せんせいが『NARUTO』の中なかで、描えがいていくうちに「こいついいかも」と思おもって膨ふくらませていったキャラクターは誰だれですか？

【岸本きしもと】　それはやっぱり、リーかな。彼かれがどういう人間にんげんなのか、あんまり考かんがえてなかったの。「忍術にんじゅつが使つかえない」って設定せっていだけ決きめて描えがいていったら、ガイとの師弟してい関係かんけいだとか、どんどん広ひろがっていった。

【堀越ほりこし】　リーも大好だいすきです！　中ちゅう忍にん試験しけんでサクラを守まもるために現あらわれたシーンは、今いま読よんでも泣なけます。

【岸本きしもと】　ぶっちゃけリーのデザインはちょっと問題もんだいありましたけどね。

【堀越ほりこし】　あのデザインだからいいと思おもいます（笑）。忍術にんじゅつがまったく使つかえず、しかも三枚目さんまいめのくせに超ちょう強しい、というギャップが新鮮しんせんでした。僕ぼくもこれから『NARUTO』みたいに、脇わきのキャラをどんどん立たたせていきたいんですけど……。

【岸本きしもと】　あんまりやると主人公しゅじんこうがないがしろになっちゃうから、『ジャンプ』的てきにはやめなさいって周まわりに言いわれる？

【堀越ほりこし】　そんな感かんじです（笑）。

【岸本きしもと】　読者どくしゃってやっぱりね、主人公しゅじんこうが見みたいんですよ。そこはブレちゃいけない。まあ、「この作品さくひんのタイトルは『NARUTO』じゃなくて『SASUKE』じゃないの？」ってツッコまれてた僕ぼくに言いわれても、説得せっとく力りょくないけどね（笑）。

岸本きしもと斉ひとし史し　きしもと・まさし●1974年ねん、岡山おかやま県けん生うまれ。1996年ねん、第だい132回かい2月がつ期きホップ☆ステップ賞しょうにて佳作かさくを受賞じゅしょうし、デビュー。1999年ねんから2014年ねん11月がつまで『NARUTO –ナルト–』を『週刊しゅうかん少年しょうねんジャンプ』で連載れんさい、世界せかい各国かっこくでテレビアニメ化かされ、空前くうぜんの大だいヒットとなった。

堀越ほりこし耕平こうへい　ほりこし・こうへい●1986年ねん、愛知あいち県けん生うまれ。2006年ねん、第だい72回かい手塚てづか賞しょう佳作かさくを受賞じゅしょうし、翌年よくねんデビュー。14年ねんより『週刊しゅうかん少年しょうねんジャンプ』で『僕ぼくのヒーローアカデミア』を連載れんさい中ちゅう。他たの代表だいひょう作さくは『逢魔ヶ刻こく動物どうぶつ園えん』『戦せん星ぼしのバルジ』など。

取材しゅざい・文ぶん＝吉田よしだ大助だいすけ/『ダ・ヴィンチ』5月がつ号ごう　“愛あい”と“継承けいしょう”の物語ものがたり『NARUTO―ナルト―』特集とくしゅうより一部いちぶ抜粋ばっすい

『ダ・ヴィンチ』2015年ねん5月がつ号ごう

KADOKAWA メディアファクトリー
定価ていか650円えん（税込ぜいこみ）

・第だい1特集とくしゅう　“愛あい”と“継承けいしょう”の物語ものがたり『NARUTO―ナルト―』
岸本きしもと斉ひとし史し描えがき下おろしイラスト
岸本きしもと斉ひとし史し×堀越ほりこし耕平こうへい
竹内たけうち順子じゅんこ、杉山すぎやま紀きの彰あきら、中村なかむら千絵ちえ
・第だい2特集とくしゅう　男おとこ　アラーキーの裸はだかノ顔かお
北野きたの武たけし×荒木あらき経けい惟おもんみ