1月7日から徴収が始まった「出国税」に関して、情報番組「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)が的外れの批判を垂れ流し、旅行好きの視聴者から批判を浴びているようだ。この出国税(国際観光旅客税)は日本から出国する2歳以上の旅行者を対象に、一人1000円を徴収するもの。空路であれば航空会社が徴収し、航空券を購入する際の“手数料・税”に「TK」の記号で表示される。
去る1月8日の放送では「出国税で“宙に浮く1000円”」と題して、チケットをキャンセルした場合に出国税の1000円が戻ってくるかどうかを検証。JALやANAでは手数料なしで全額返金するのに対し、LCC(格安航空会社)では払い戻しは可能だが、手数料がかかるとし、バニラエアでは4000円、ピーチ・アビエーションでは3240円かかると報じた。
これに対してコメンテーターの菅野朋子弁護士は「航空会社で対応が違うというのも問題になってくる」と指摘。またテレビ朝日解説委員の玉川徹氏は「(出国税の徴収が)見えないということが問題。航空券の中にインクルードされている」と指摘し、旅行者が自分で収めるべきとの見解を示した。この放送内容について、トラベルライターが眉をひそめて語る。
「あまりにも恣意的で的外れな論調には呆れました。まずLCCに関しては、番組でも『払い戻しができないチケットの場合』と前置きにしていたように、激安価格の航空券はキャンセル時にいっさいの返金を受けられないことを前提に購入するもの。払い戻しの手間を省くことで従来ではありえなかった低価格を実現しているのであり、それを無視して『航空会社で対応が違うのは問題』とするのは暴論でしょう。番組側では『税金は話が別』と言いたいようですが、同様の例には宿泊税や入湯税もありますし、航空券で以前から徴収されている『空港施設使用料』も、激安航空券のキャンセル時には返金されないことがほとんど。そういった他の例を挙げることなく、出国税だけをやり玉に挙げるのは、政府が決めたことには何でもかんでも反対したがる姿勢さえ感じずにはいられません」
同様に玉川氏の「航空券の中にインクルードされている」という指摘も誤りだ。出国税は“手数料・税”として航空運賃とは別に明確に示されており、その明細は旅行者に対して例外なく交付されている。それを“インクルード”(包含)と表現するのは、もはやフェイクの類ではないだろうか。
「他にも菅野弁護士は、インドネシアではすでに出国税が廃止になったと指摘し、今回の出国税新設を問題視していました。しかしインドネシアで出国税を廃止したのは旅行振興が理由ではなく、税徴収に関する手続きが不正の温床になっていたから。しかもインドネシアでは昨年、旅客サービス施設使用料(空港税)を最大73%も値上げしています。インドネシアの空港は事実上の国営で、空港税と出国税を区別する意味はないので、菅野弁護士の指摘はまったくの的はずれですね」(前出・トラベルライター)
さらに玉川氏は出国税の徴収に絡めて源泉徴収制度も批判し、「源泉徴収もやめてみんなで申告すればいい。諸外国はすべてそう」と主張していた。しかしイギリスやドイツでは源泉徴収を行っており、そもそも同制度はイギリスで始まったものだ。
このように航空券と関係ない部分でも“フェイク”を垂れ流し、的外れな批判を繰り返す「モーニングショー」には、旅行好き以外の視聴者からも厳しい目が注がれるのではないだろうか。
(金田麻有)