掛かけ布ぬの雅之まさゆき 鳥谷とりたには「つなぐ3番ばん」から「決きめる3番ばん」へ（2）

“かかと体重たいじゅう”のスイングでは、外角がいかくの球たまにはバットが届とどきませんし、内角ないかくの速はやいストレートにも差さし込こまれてしまいます。ヒットを打うっているコースは、真まん中なかやや内うち寄よりの甘あまい球たまが多おおいはずです。イチローが時ときには豪快ごうかいにライトスタンドにブチ込こむように、長距離ちょうきょり打者だしゃでなくとも、相手あいてバッテリーに怖こわさを植うえ付つける必要ひつようがあるのです。投手とうしゅに気持きもちで優位ゆういに立たたれ、内角ないかくを攻せめ込こまれるようになると、3割わりを打うつこと自体じたいも難むずかしくなります。

　もちろん、彼かれも出塁しゅつるい率りつだけにこだわる今いまの打撃だげきスタイルは本意ほんいではないはずです。1年間ねんかんのペナントレースを逆算ぎゃくさんし、自分じぶんの体調たいちょうを考かんがえ、チームのために今いまできるベストの答こたえとして、あえてやっていると信しんじています。だからこそ冒頭ぼうとうに書かいたように、交流こうりゅう戦後せんごの彼かれの打撃だげきが楽たのしみなのです。最大さいだいでも4連戦れんせんで日程にってい的てきにも楽らくな交流こうりゅう戦せん期間きかん中ちゅうに、体からだの状態じょうたいを万全ばんぜんに戻もどしながら、ヒットを積つみ重かさねてもらいたい。交流こうりゅう戦せんが終おわった段階だんかいで、打率だりつが3割わり2分ふん以上いじょうあれば気持きもちに余裕よゆうが生うまれます。そうなると、一発いっぱつ狙ねらいの割合わりあいも増ふえるはずです。その好こう循環じゅんかんの中なかで「3割わり20本ほん」という数字すうじが見みえてくるのではないかと思おもうのです。

　今年ことしの春季しゅんきキャンプで、私わたしは「“鳥谷とりたにの阪神はんしん”として優勝ゆうしょうしろ」と声こえをかけました。生はえ抜ぬきのキャプテンとして彼かれが強烈きょうれつなリーダーシップを発揮はっきしないと、優勝ゆうしょうできないと思おもったからです。性格せいかく的てきに前まえに出でて引ひっ張ぱっていくタイプではないのかもしれませんが、語かたらずともプレーで引ひっ張ぱることはできます。

　そのためには、13年ねんのWBCで見みせたような激はげしさが必要ひつようです。台湾たいわん戦せんの1点てんビハインドの9回かい二死にし、井端いばた弘和ひろかずの同点どうてん打だを生うんだ鳥谷とりたにの二に盗とうには、日ひの丸まるを背負せおう気迫きはくが伝つたわってきました。残念ざんねんながら阪神はんしんのユニホームを着きた鳥谷とりたにからは、あそこまでの熱あつさが感かんじられません。連続れんぞく試合しあい出場しゅつじょうという記録きろくが、無意識むいしきのうちに安全あんぜん運転うんてんに走はしらせてしまうのでしょうか。確たしかに連続れんぞく試合しあい出場しゅつじょうというのはすごく大切たいせつで立派りっぱな記録きろくです。でも、それをあまり大切たいせつにしすぎてほしくない。ワンプレー、ワンスイングに激はげしさが欲ほしいのです。

　今いまはまだ、好調こうちょうのゴメスやマートンの両りょう助すけっ人とへの「つなぎの3番ばん」に徹てっしている感かんじです。これからは右みぎ方向ほうこうへの強つよい打球だきゅうのある「決きめる3番ばん」の割合わりあいを増ふやしてほしいと思おもっています。鳥谷とりたにのプレーで勝かつ試合しあいが増ふえれば増ふえるほど、9年ねんぶりのリーグ優勝ゆうしょうが見みえてくるのですから。