新旧の絶対王者、天才2人がついにタイトル戦で直接対決することになった。
将棋の羽生善治九段が王将戦挑戦者決定リーグ戦で6戦全勝とし、藤井聡太王将(竜王・王位・叡王・棋聖を含む五冠)への挑戦権を獲得したのだ。
タイトル獲得通算99期の羽生にとっては、前人未踏の100期目へと前進する一歩となった。
かつての天才も、無冠となってからは不調続きだった。昨年度は14勝24敗で、初めての負け越し。29年連続で在籍したA級から陥落する屈辱にまみれた。
ところが今年度は打ってかわって20勝9敗と、V字復活。2年ぶりのタイトル戦にこぎつけたのである。この劇的な変化の裏には、いったい何があったのか。将棋関係者が言う。
「近年はAIによる打ち筋の分析、研究が一般的となり、羽生のような昔ながらの棋士は、結果を出せなくなっていきました。ところが一念発起して時代に沿った独自の研究に乗り出し、AI世代の棋士と対等、あるいはそれ以上に戦えるようになりました。ある棋士は『横歩取り』というエース戦法が復活したと分析し、これが羽生を再浮上させた象徴であるとみています」
「横歩取り」は、序盤から駒を激しく交換するなどの急展開となる好戦的な戦法で、
「AI世代にとってはある意味、当たり前の手ながら、羽生世代の棋士は慎重でした。それに順応し、新たな研究の成果を加えた、攻めの将棋に出てきたということですね」(前出・将棋関係者)
52歳にして新生「羽生マジック」を炸裂させる天才は、20歳の無敵カリスマを倒すことができるのか。来年1月8日から始まる王将戦七番勝負が待ち遠しくて仕方がない。