プロ野球のペナントレースはいよいよ終盤戦を迎えているが、特にセ・リーグはCS争いを含め上位4チームがペナントを争う大混戦の様相を呈している。
そんな中、今シーズンの混戦を呼んだ1つの大きな要因として、明らかな「投高打低」を生んでしまった「低反発球」が挙げられるのではないか。
この問題に関して、プロ野球OBたちの本音はどうなのか。その舌戦の模様はというと…。
9月7日に更新された高橋慶彦氏のYouTubeチャンネル「よしひこチャンネル」にゲスト出演したのは、投手として広島や巨人で活躍した金石昭人氏。ここで金石氏は、シーズン中に「飛ばないボール」で苦戦していた各打者に、オールスターでは多くの安打、本塁打が出た点に着目している。オールスターの時だけボールが違っていたのではないか、どうにも腑に落ちないと独自の見解を語ったのだ。
一方でホストの高橋氏は、NPBの統一球を使っている以上は「反発係数の規定範囲内に収まっているだろう」としながらも、その範囲内での「飛ぶボール」だった可能性があると、金石氏の見解に同調した。
お祭りムードで行われたオールスター戦だけに、それはファンにとっても「良いこと」と両氏は一定の理解を示したわけだが…。
だとすれば「飛ばないボール」であることをファンは望んでないという、逆説的な考え方ができるのではないか。
一方で「投高打低」と言われる現状を低反発球のせいにするなと語るのは、打撃の天才と呼ばれた落合博満氏だ。
同氏は6日に更新した自身のYouTubeチャンネル「落合博満のオレ流チャンネル」で、「投高打低」の一番の理由を「打者の技術が低下しているから」と、バッサリ斬った。
この日の動画では低迷する中日ドラゴンズを引き合いに、規定打席に到達する打者の少なさを指摘。「ちゃんとした技術があればレギュラーとして試合に出られるんだろうけども、その時々の調子のいい、悪いでゲームに出られないというのはレギュラーじゃないってことでしょ?」と、当事者が聞いたらぐうの音も出ないコメントを発した。
また、落合氏は現代の野球のスタイルが変わってきていることに理解は示しつつ、打撃技術を上げることが最優先なのに、調子のいい悪いで試合に使われる起用法で打てないからといって低反発球のせいにするのは「ボールが可哀相」と独特な表現で現状を語ったのだ。
とはいえ、投手陣に夏場の疲れが出てきて、これから打撃成績が上がる時期だという分析を付け加えてはいたが…。
打ちまくる野球が見たいか、投手が抑え込む野球が見たいかは、それぞれの好みだ。しかし9月9日現在、3割打者がセ・パ合わせて3人、終盤戦になっても本塁打王争いが20本台前半のせめぎ合いになっているセ・リーグの低レベルには「盛り上がらない」「夢がない」と嘆くファンが多いのは確かだ。
「オールスター戦では、金石氏が語っていたように確かにボールが飛びました。セ・リーグの指揮を執った阪神の岡田彰布がそう指摘していましたね。賛否はありましたが、おかげで観客やテレビ視聴者が盛り上がったのは事実。このことから、タイトル争いとは無関係となるプレーオフでは再び反発係数が甘めに戻された『飛ぶボール』が採用される可能性は少なからずあります」(野球記者)
こうした「飛ぶ、飛ばない」への対応は、はたして落合氏の言うように「技術の向上」でどうにかなるものなのか。同じ野球とはいえ、大谷翔平の「50-50」で盛り上がるメジャーリーグとは似て非なるスポーツエンタメのような気がしてならない。
(カタタキケン)