「DH(指名打者)でよかった~」
さすがの大谷翔平も、この日ばかりはそう思ったのではないだろうか。46号アーチが出たカージナルス戦(9月8日・現時時間)で「異変」が起きていたのだ。なんと本拠地ドジャー・スタジアムのスタンドは、ガラガラ状態だった…。
「50-50」(50本塁打&50盗塁)という前人未到の大記録に向けて、ドジャース戦はどの球場でも「満員御礼」が続いていたはずなのに、だ。
ドジャー・スタジアムのあるロサンゼルスに熱波が襲来し、気温は試合開始前で36度、試合が始まった時には40度を超えていた。
両チームとも暑さ対策で、試合前の練習はほとんどやっていない。球団は来場者全員にミネラルウォーターのペットボトルを配るなどしたが、それでも観客は激減。熱心なファンはもちろんいたが、スタンド席まで下りていったのはごく僅かで、ほとんどは室内のバーやレストランに入ってモニターテレビを見ていたそうだ。
もっとも、球団公式サイトにチケット払い戻しなどの案内文はない(9月10日時点)。前売り券で80%以上が売れているが、熱波襲来で球場にいけなかったから払い戻しを希望する、という声は今のところ、出ていないようである。
私見ではあるが、この未使用のチケットが、将来的に価値が出るのではないだろうか。「大谷が50-50を達成した年の9月8日は熱波襲来で、でも大谷は46号を放って、これがその時のチケットなんだ」と。アメリカのメジャー関係者に聞いてみたところ、笑っていたのだが…。
「大谷は打席から帰ってくると、ベンチの奥に行って水分補給をしていました」(現地ジャーナリスト)
守備に就かないDHの大谷でさえ、厳しい一日となったようだ。8回途中まで投げて勝利投手になったジャック・フラーティは、もっと評価されてもいいのでは。味方野手が熱波の中で守備に就いた際、DHの大谷は申し訳なさそうな表情を浮かべていた。これも、50-50達成までの試練だろうか。
(飯山満/スポーツライター)