自民党総裁の岸田文雄首相は9日、10日に実施する内閣改造・党役員人事の全容を固めた。閣僚人事では、浜田靖一元防衛相を再度防衛相に、高市早苗政調会長を経済安全保障担当相に、加藤勝信前官房長官を厚生労働相にそれぞれ起用する意向を固めた。
林芳正外相、鈴木俊一財務相、山際大志郎経済再生担当相、斉藤鉄夫国土交通相は留任させる。このほか、河野太郎・党広報本部長をデジタル相、西村康稔・前経済再生相を経済産業相に起用する方針だ。
非主流派の処遇 「挙党態勢」演出
初入閣では、寺田稔首相補佐官を総務相、葉梨康弘・元法務副大臣を法相、永岡桂子衆院議員を文部科学相、野村哲郎・元参院農水委員長を農林水産相、西村明宏・元官房副長官を環境相、秋葉賢也元首相補佐官を復興相、谷公一・元復興副大臣を国家公安委員長、小倉将信・党青年局長を少子化相、岡田直樹・前官房副長官を地方創生相にそれぞれ起用する方針だ。
首相は9日午前、長崎市での平和祈念式典に参列。その後、現地で行った記者会見で、今回の人事について「我が国は今、国の内外で戦後最大級の難局に直面している」とし、「難局突破のために政府・与党の結束がこれまで以上に重要だ。内閣改造はこの認識のもとで行う」と述べた。
今回、首相はまず、松野博一官房長官のほか、自民党の麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長を続投させ、政権の「骨格」を維持する方針を早々に固めた。
続いて党役員人事に着手。党四役には茂木氏のほか、政調会長に萩生田光一経済産業相、総務会長に遠藤利明選挙対策委員長をそれぞれ充てる方向。選挙対策委員長に森山裕総務会長代行を充て、高木毅国会対策委員長は留任させる。
党内第2派閥の茂木派と第3派閥の麻生派をそれぞれ率いる茂木、麻生両氏に加え、最大派閥の安倍派に所属する萩生田、高木両氏を起用。さらに、谷垣グループの遠藤氏のほか、非主流派に位置づけられる森山派領袖(りょうしゅう)の森山氏も処遇することで、「挙党態勢」をアピールするねらいとみられる。
今回の人事では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治との関係性も焦点の一つで、とりわけ教団との接点が取りざたされる議員が多い安倍派の議員をどれだけ処遇するか注目されている。
松野官房長官は8日、全閣僚に対し、教団との関係を点検し、厳正に見直しを行うよう指示。首相は9日の会見で、「岸田政権においては、当該団体との関係について自ら点検し、厳正に見直していただくことが、新閣僚、あるいは党役員などにおいても前提となる」と明言した。
また、森山氏の処遇が明らかになったものの、菅義偉前首相や、二階俊博元幹事長が率いる二階派など非主流派への対応も焦点。菅氏は、8日収録のTBSのCS番組で入閣の意欲を問われ、「閣内でということで限定すれば、そこは考えていない」と否定的な考えを示している。
☆総務 寺田 稔 64
☆法務 葉梨 康弘 62
外務 林 芳正 61
財務 鈴木 俊一 69
☆文部科学永岡 桂子 68
厚生労働加藤 勝信 66
☆農林水産野村 哲郎 78
経済産業西村 康稔 59
国土交通斉藤 鉄夫 70
☆環境 西村 明宏 62
防衛 浜田 靖一 66
官房 松野 博一 59
デジタル河野 太郎 59
☆復興 秋葉 賢也 60
☆国家公安谷 公一 70
☆少子化 小倉 将信 41
☆地方創生岡田 直樹 60
経済再生山際大志郎 53
経済安保高市 早苗 61
自民党役員
副総裁 麻生 太郎 81
幹事長 茂木 敏充 66
総務会長 遠藤 利明 72
政調会長 萩生田光一 58
選対委員長森山 裕 77
(敬称略。☆は初入閣。名前の後の数字は年齢)