【動画】都内で開催された漬物グランプリ 日本の伝統的な食品を揺るがす事態が、ひそかに進行している。そんな話を聞きつけて4月末、東京湾岸へと向かった。(文中敬称略)
前年にあった東京五輪・パラリンピックで、メインプレスセンターが置かれていた国内最大級の展示場、東京ビッグサイト。都内であったすべての競技が無観客だった五輪から一転、3年ぶりに行動制限のないゴールデンウィークを迎え、会場は盛況だった。
人を集めていたのは「漬物グランプリ」というイベントだ。漬物メーカーでつくる業界団体の全日本漬物協同組合連合会が主催し、「漬物日本一を決める」と銘打って毎年開かれている。
今年は日本一をめざす189点の応募があった。
グランプリには「ズッキーニで千枚漬け」「筍(たけのこ)の味噌(みそ)漬け」「国産しょうがワイン漬」といった創造性豊かな漬物が出品された。
個人の部には大学生や高校生も参加。このうち、岩手県立遠野緑峰高校の生徒が作った「琴畑かぶと三種の豆のしその実漬け」が学生特別賞を受賞した。地元の岩手県遠野市の特産品「琴畑かぶ」をたくさんの人に知ってもらいたいと漬物を作ったという。
コンテストはいくつかの部門に分かれている。漬物メーカーが作る法人部門でグランプリに選ばれたのは、マダイと野菜を重ねて酢漬けにした「真鯛(まだい)のミルフィーユ」。個人部門では、山口県の高校教諭が授業で作った「シャキ旨!セロリのSDGs漬け」が選ばれた。
会場では、漬物メーカーなどがブースで日本各地の漬物を販売し、買い物客でにぎわっていた。
主催していた全日本漬物協同組合連合会の会長、野崎伸一は言う。
「個人部門では例年の倍近い応募があった。高校生、大学生、一般と幅広く関心をもってもらい、非常に喜んでいる」
しかし、盛り上がる漬物の世界で、土台を揺るがすような問題が起きているという。
「農家が作るような小規模な漬物の販売が厳しくなった」
そう話すのは、漬物の専門家でグランプリの審査委員長を務めた東京家政大客員教授の宮尾茂雄だ。
漬物メーカーの製品から、農家が自分で育てた野菜で作る漬物、家庭で漬けるぬか漬け……。多種多様で、当たり前のように食卓にあった漬物に何が起きているのか――。
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宮尾によると、きっかけになったのは、ある食中毒事故だった。
10年前の2012年、札幌…