自宅での熱中症なぜ夜に?上の階ほど重症化の懸念も 有効な対策は
き手 編集委員・石井徹
熱中症が心配になる暑さが続いています。熱中症は、自宅で夜間に発症することも珍しくないといいます。どんな対策が有効なのでしょうか。住宅と健康の関係に詳しい慶応大理工学部の伊香賀(いかが)俊治教授(建築・都市環境工学)に聞きました。
総務省消防庁によると、昨夏は約7万1千人が熱中症で救急搬送されています。発生場所のうち最も多いのが住宅で39・5%を占めています。この5年間を見ると、猛暑か冷夏かによって搬送数は4万8千~9万5千人と大きく違いますが、発生場所の4割が住宅であることは、ほぼ変わりがありません。また、65歳以上の高齢者は全体の搬送者のうちでも半分以上を占めますが、住宅での熱中症のうち4人のうち3人は高齢者です。
日本救急医学会の熱中症データベース(2010年)を分析すると、熱中症の発生場所は居間と寝室が多いという結果でした。熱中症患者のうち、エアコンを使用していた人はわずか12%。停止中は39%、設置していなかった人は49%もいました。エアコンを使用していなかった人の50%は、扇風機も使っておらず窓も開けていなかったのです。
多摩ニュータウン(東京都)で、昼過ぎに最高気温36・4度になった日に、室温がどう変化するかを測定しました。外気温は翌朝の午前5時前に24・1度に下がりました。これに対して集合住宅の最上階の部屋は、午後5時半にこの日最高の32・8度にまで上昇し、翌日午前5時にも32度とほとんど変わりませんでした。中間階の部屋も30・9度までしか下がりません。断熱されていないコンクリート製の建物の中は、外に比べて夜間が圧倒的に暑いのです。コンクリートは石と同じで熱を蓄えるので、昼間に吸収した熱を一晩中部屋に出し続けます。
また、重症度との関係でも、上の階ほど熱中症が重症化しやすいという結果が出ています。
住宅内での熱中症対策として、こまめな水分補給や、夜間の適切なエアコン使用はもちろん大切ですが、日よけや断熱による住宅環境の改善が有効です。私たちの研究で、すだれやよしずを設置して日射を防ぎ、断熱性能を上げることで、熱中症リスクを低減できることが分かりました。
しかし、日よけによって室温の上昇はある程度抑えられますが、断熱がないと屋根や外から熱が入ってきます。断熱性能が高いほど、外の熱が入りにくくなり、室温上昇を抑えられます。エアコンの利きがよくなり、電気代の節約にもつながります。断熱を良くすることは、血圧を下げて脳卒中やヒートショックのリスクを減らすなど冬の健康対策になることが知られていますが、夏の熱中症対策にも有効なのです。(き手 編集委員・石井徹)
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この記事を書いた人
- 石井徹
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