第1回「神さま。僕は犯人ではありません」 袴田巌さん、手紙が物語る人生
【動画】巌より~袴田さん獄中からの手紙 居間の押し入れに、プラスチック製のトレーが八つ、積み上げられている。静岡県浜松市のマンションの一室。中には、赤や黄など色とりどりのファイルに収められたはがきや、厚紙の間に束ねられた便箋(びんせん)がしまわれていた。一部には黄ばみや染みもある。
一人の「死刑囚」が半世紀に及ぶ獄中生活で、家族らに宛てて書き続けていた1万枚を超える手紙だ。ファイルなどは計30冊に及ぶ。
送り主は、みそ製造会社従業員だった袴田巌さん(87)。1966年、30歳の時に一家4人の強盗殺人容疑で逮捕され、死刑判決が確定した。裁判のやり直し(再審)が認められ、78歳になってまもなく釈放された。今月27日から再審公判が始まる。
「弁護活動は弁護士に任せときゃいい。私は、身の回りの世話を焼くというか、やれることをやろうと思ってたの。巌は片っ端から手紙を出していた。パンチで穴を開けて、まとめてきた。捨てるわけにもいかないからね」
姉の秀子さん(90)は今月中旬、そう言って、テーブルの上に手紙を広げていった。逮捕翌年、一審公判中の67年から、第一次再審請求中の95年に届いたものだ。私信ではあるが、冤罪(えんざい)を訴える巌さんの思いを広く知ってほしい、という思いが秀子さんにはある。
獄中から家族らに無実を訴える手紙を出し続けた。司法への期待と絶望、周囲の支援、獄中での日々、そしてむしばまれていく精神。手紙からその半生をたどる。
《神さま――。僕は犯人では…
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