命を分かつのは一つの書類 「どれほど不条理か」 喜べないガザ脱出
「今までとは全然違う」
10月7日午前6時半ごろ、パレスチナ自治区ガザ地区の中心都市ガザ市。建設エンジニアのサミさん(40)は、異変を感じていた。
アパート3階にある自宅の窓越しに、イスラエルに向けて飛んでいくロケット弾が見えた。数十はある。
珍しくはない。ただ、いつもより長い時間で、イスラエルの防空システム「アイアンドーム」で迎撃する「ボン」という音が、この日はあまり聞こえなかった。
ニュースやSNSを何度も見た。時間が経つにつれ、思った。
「やりすぎだ」
ガザを実効支配し、この奇襲攻撃を仕掛けたイスラム組織ハマスの行動について、そう感じた。しかも、イスラエルから多くの人質をガザに連れ去ったようだった。
「イスラエルは、人質1人を取り返すのにも『クレージー』になる。これから、とんでもないことが起こるんだと怖くなった」
やがて、イスラエルの報復攻撃が始まった。
イスラエル軍による侵攻が続き、1万8千人以上の命が奪われたパレスチナ自治区ガザ地区。11月中旬にガザを脱出してトルコに逃れたパレスチナ人男性が取材に応じ、ガザでの惨状を振り返りました。脱出後に募る安堵とやるせなさ。人の命運を分かつものとは。
■小さな娘たちに白髪が…
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この記事を書いた人
- 高野裕介
- 国際報道部次長|欧州、中東
- 専門・関心分野
- 中東、紛争、外交、国際政治
パレスチナとイスラエルの間で激しい武力衝突が起き、双方に多大な犠牲者が出ています。最新の動きをお届けします。[もっと見る]