残業ざんぎょう代だいを出ださない代かわりに、基本給きほんきゅうの4%を「教職きょうしょく調整ちょうせい額がく」として一律いちりつに上乗うわのせ支給しきゅうする。公立こうりつ学校がっこう教員きょういんの給与きゅうよに関かんしてそう定さだめた教員きょういん給与きゅうよ特措法とくそほう（給きゅう特とく法ほう）は、「定額ていがく働はたらかせ放題ほうだい」とも批判ひはんされてきた。この制度せいどの見直みなおしを含ふくむ教員きょういんの処遇しょぐう改善かいぜんの議論ぎろんが、質しつの高たかい教員きょういん確保かくほを目指めざして設もうけられた中央ちゅうおう教育きょういく審議しんぎ会かい（文部もんぶ科学かがく相しょうの諮問しもん機関きかん）の特別とくべつ部会ぶかいで近ちかく始はじまる。特別とくべつ部会ぶかい委員いいんである教育きょういく研究けんきゅう家かの妹尾せのお昌俊まさとしさんに、現行げんこう制度せいどの課題かだいや改革かいかくに必要ひつような視点してんを聞きいた。

　――給きゅう特とく法ほう廃止はいしを求もとめる声こえや、教職きょうしょく調整ちょうせい額がくの割合わりあいを10%以上いじょうまで上あげる自民党じみんとう案あんなどが出でています。

給きゅう特とく法ほうが抱かかえる三みっつの問題もんだい

　それぞれの案あんにメリット、デメリットがあり、悩なやましい。ただ、現行げんこうの給きゅう特とく法ほうには大おおきく三みっつの問題もんだいがあると考かんがえます。

　一ひとつは、時間じかん外がいの仕事しごとを労働ろうどうとみなしていない問題もんだい。給きゅう特とく法ほうでは、実習じっしゅう、学校がっこう行事ぎょうじ、職員しょくいん会議かいぎ、非常ひじょう事態じたいの4業務ぎょうむ（超勤ちょうきん4項目こうもく）を除のぞき、原則げんそく、時間じかん外がい労働ろうどうを命めいじてはならないとされています。4項目こうもく以外いがいの時間じかん外がいの保護ほご者しゃ対応たいおうや部活ぶかつ指導しどう、課題かだいの採点さいてん・添削てんさく、授業じゅぎょう準備じゅんびなどは、「自主じしゅ的てきな行為こうい」とみなされます。重要じゅうような仕事しごとをしているのに、労働ろうどうではないというのはおかしい。

　二ふたつ目めは、校長こうちょうや教育きょういく委員いいん会かいのコスト意識いしきが低ひくくなる問題もんだい。どんなに業務ぎょうむを追加ついかしても、教員きょういんは残業ざんぎょう代だいが生しょうじないため、業務ぎょうむ内容ないようの精選せいせんやアウトソーシングが進すすまない傾向けいこうが根強ねづよく残のこっています。例たとえば、平日へいじつの部活ぶかつ指導しどうは大勢おおぜいの教員きょういんらの無償むしょう奉仕ほうしに支ささえられ、委託いたくする予算よさんの確保かくほを国くにも自治体じちたいも怠おこたってきたわけです。

　三みっつ目めは、教員きょういん志望しぼう者しゃへの影響えいきょう。小学校しょうがっこう教員きょういんの新卒しんそつの受験じゅけん者しゃは減へっていないので、教員きょういん人気にんきが落おちているとは必かならずしも言いえませんが、優秀ゆうしゅうな人材じんざいが教職きょうしょくを目指めざさなくなったとは聞ききます。おそらく、処遇しょぐうの影響えいきょうもあるでしょう。「午後ごご5時じ過すぎたらアルバイト代だいは出ださないけど働はたらいて」という所ところで学生がくせいが働はたらく気きになるでしょうか。

　これらは、教職きょうしょく調整ちょうせい額がくの割合わりあいを上あげるだけでは解決かいけつしません。

　――では、給きゅう特とく法ほうを廃止はいしした場合ばあいは？

　働はたらいた分ぶんに残業ざんぎょう代だいを出だすのは当あたり前まえの考かんがえ方かた。ただし、給きゅう特とく法ほう廃止はいしには、デメリットも大おおきい可能かのう性せいがあります。

　給きゅう特とく法ほうの対象たいしょう外がいである私立しりつ学がく…