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　ベッドが四よっつ並ならぶ病室びょうしつで、目めを覚さます。すぐにスポーツバッグに手てを伸のばす。両りょう腕うではきょうも痛いたみ、高たかく上あげられない。

　バッグには大量たいりょうの錠剤じょうざいが入はいっている。1日にち分ぶんは計けい58錠じょう。肝臓かんぞうや腸ちょうの薬くすり、鎮痛ちんつう剤ざいや抗こううつ剤ざい。絶たえ間まなく、「叫さけび声ごえ」が頭あたまに響ひびく。

　この幻聴げんちょうに、この日常にちじょうに、慣なれることはあるだろうか。四肢ししが、心身しんしんが、元もとに戻もどる日ひはくるだろうか。またいつか、息子むすこを思おもいきり高たかく抱だき上あげられるだろうか。

　わからない。でも、少すくなくとも生いきている。拷問ごうもんや空腹くうふくを耐たえ抜ぬき、ロシアからウクライナに戻もどってきた。領土りょうどや家族かぞくを守まもるために戦たたかい、命いのちを守まもるためにミミズやネズミだって食たべた。

愛国心あいこくしんとは何なにか

　そして、自分じぶんの国くにに帰かえってきた。

　オレクシー・アヌリアさん（30）はいま、ウクライナ西部せいぶテルノピリの病院びょういんでリハビリを続つづける。捕虜ほりょとして9カ月かげつ間あいだをロシア側がわで過すごし、拷問ごうもんや暴力ぼうりょく、飢うえや絶望ぜつぼう感かんに、体からだも、心しんもむしばまれた。2022年ねん末まつに139人にんのウクライナ人じんとともに捕虜ほりょ交換こうかんで帰還きかんしてから、国内外こくないがいで治療ちりょうを受うけ、1年ねん以上いじょう、病院びょういんを転々てんてんとしている。

　「愛国心あいこくしん」とは何なにか、時々ときどき考こう…