映画えいが怪物かいぶつ』クィアめぐる批判ひはん是枝これえだ裕和ひろかず監督かんとく応答おうとう 3あいだはん対話たいわ

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構成こうせい=映画えいが文筆ぶんぴつ児玉こだま美月みづき
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 昨年さくねん6がつ公開こうかいされた映画えいが怪物かいぶつ』。是枝これえだ裕和ひろかずさんが監督かんとくつとめ、カンヌ国際映画祭かんぬこくさいえいがさいでは坂元さかもと裕二ゆうじさんが脚本きゃくほんしょう受賞じゅしょうするなどたか評価ひょうかされた。一方いっぽう、「クィア」をめぐる表現ひょうげん発信はっしんのありかたについて当事とうじしゃたちから批判ひはんこえがった。クィアの表象ひょうしょうについては近年きんねん、そのかたや、当事とうじしゃたちにもたらす影響えいきょうについて国際こくさいてきにも議論ぎろんたかまっている。なに問題もんだいとされたのか。どうすればいいのか。当初とうしょから指摘してきしていた映画えいが文筆ぶんぴつ児玉こだま美月みづきさんとライターの坪井つぼい里緒りおさんが、是枝これえだ監督かんとくと3あいだはんにわたってかたった。

「クィア」をめぐる発信はっしんとスタンスについて、ラストシーンをふく物語ものがたり批評ひひょうについて、さらに日本にっぽん映画えいがかい変化へんか課題かだいについて。「おにん作品さくひんぼく言葉ことばって批判ひはんしてくれたことで、今回こんかいとてもいいづきになりました」と是枝これえだ監督かんとくやくまんという異例いれいながさではありますが、あえて分割ぶんかつはせず、1ほん記事きじとして3構成こうせいでおつたえします。

だい】クィアをかくさないで マイノリティーをまなざす

 【坪井つぼい】 はじめに、「クィア」という言葉ことば既存きそん社会しゃかい規範きはん・カテゴリーにそくさない性的せいてきマイノリティーおよ態度たいどおもしますが、かれらへの連帯れんたいしめ表現ひょうげんとしても使用しようされます。ただ、この説明せつめいはあくまでクィアをおおくの意味いみのひとつにぎません。クィアという言葉ことば意味いみひろ多様たようであり、「定義ていぎ」してしまうことによってその包括ほうかつせいせばめるべきではないとかんがえています。

つぼい・りお ライター。1995ねんまれ。在学ざいがくちゅう映画えいが脚本きゃくほん専攻せんこう言葉ことばかんする活動かつどう幅広はばひろおこなはん差別さべつのクィア。

 【児玉こだま】 まずこの鼎談ていだん(ていだん)にいたった経緯けいいですが、わたしは『怪物かいぶつ』を試写ししゃはや段階だんかい(み)て、マスコミけに規範きはんてきなセクシュアリティーやジェンダーかかわる展開てんかいを「ネタバレ」あつかいするような箝口令かんこうれい(かんこうれい)がかれていることをりました。これまで映画えいが宣伝せんでんにおいて性愛せいあい、シスジェンダー規範きはんのもとでそれらをギミック(仕掛しかけ)としてあつかい、批判ひはんされてきた歴史れきしがあります。当初とうしょSNSで作品さくひんめいせてそのことを批判ひはんしていましたが、そのカンヌ国際映画祭かんぬこくさいえいがさいで『怪物かいぶつ』がクィア・パルムを受賞じゅしょうした報道ほうどうがされ、そこではじめてひろく『怪物かいぶつ』が「クィア映画えいが」として認知にんちされることになり、その作品さくひんが『怪物かいぶつ』だったとかしました。

 それがきたのが日本にっぽん代表だいひょうする映画えいが監督かんとく脚本きゃくほん作品さくひんだったこともあり、批判ひはんしたままでわってしまってはいけないとおもっていました。

 一方いっぽうで、こうした経緯けいいがありながら、そもそも是枝これえださんがよくこのてくださった、ともおもいます。

こだま・みづき 映画えいが文筆ぶんぴつ映画えいがかんする文章ぶんしょうをさまざまな媒体ばいたい寄稿きこう

 【是枝これえだ】 カンヌでの記者きしゃ会見かいけん友人ゆうじんから、「(LGBTQに)とくした映画えいがではない」というぼく発言はつげんについて「炎上えんじょうしている」とおしえてもらいました。「LGBTQの映画えいがではない」とったとほうじられている、とわれて「えっ」とおもったのが最初さいしょでした。『ベイビー・ブローカー』(2022ねん公開こうかい)でもそうでしたが、SNSで意図いとちがとらえられかたをしたことや炎上えんじょうたいし、反論はんろんすると「反論はんろん自体じたい権力けんりょく勾配こうばいが……」とわれたこともあり、SNSはちょっとむずかしいとおもってやめていた。ただ、(誤解ごかいとはことなる意味いみで)批判ひはんかんしてはみみはいってきて、それにたいする応答おうとうはしたほうがいいとおもいながらも、でもSNSでやるのはいやだとおもっていた。

 すると、事務所じむしょ若手わかてから「その態度たいどはどうか」「失望しつぼうする」とわれて。それでSNSをるなかで坪井つぼいさんの批評ひひょう記事きじ出会であって、反省はんせいしたしづきにもなった。ただ、すべてに納得なっとくできているわけじゃなかったから、「ぼくはこうかんがえるんだけど」というのをやりとりしたいとおもった。

 児玉こだまさんの『文藝ぶんげい』に寄稿きこうさ…

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    仲岡なかおかしゅん
    弁護士べんごし
    2024ねん3がつ15にち1933ふん 投稿とうこう
    視点してん

    さんぽう鼎談ていだんなかで、「クィア」「当事とうじしゃ」という言葉ことばがよくてくるが、当然とうぜんながらクィアの当事とうじしゃでもまった一枚岩いちまいいわではなく、角度かくど目線めせんはそれぞれおおきくことなるというてん指摘してきしておかなければならない。 わたしはいわゆるクィアの当事とうじしゃ一人ひとりではあるが、

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Re:Ron

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対話たいわつうじて「ろん」をふかう。論考ろんこうやインタビューなど様々さまざま言葉ことばとおして世界せかいひろげる。そんなをRe:Ronはめざします。[もっと]