バリアーをなくすのは誰だれか②　障害しょうがい者しゃ文化ぶんか論ろん研究けんきゅう・荒井あらい裕樹ゆうきさん寄稿きこう

　2024年ねん4月がつ、「改正かいせい障害しょうがい者しゃ差別さべつ解消かいしょう法ほう」（以下いか「解消かいしょう法ほう」）が施行しこうされた。経緯けいいの詳細しょうさいは割愛かつあいするが、この改正かいせいによって、民間みんかんの事業じぎょう者しゃにも障害しょうがい者しゃに対たいする「合理ごうり的てき配慮はいりょの提供ていきょう」が義務ぎむづけられることになった（これまでは努力どりょく義務ぎむだった）。

　解消かいしょう法ほうについてコメントを求もとめられる際さい、しばしばケーススタディーを求もとめられる。誰だれに、何なにを、どこまでしたら「合理ごうり的てき配慮はいりょの提供ていきょう」を果はたせたことになるのか。具体ぐたい的てきな基準きじゅんや事例じれいを知しりたいというニーズが多おおい。

　ただ、こうした対応たいおう事例じれいについては、すでに多おおくの先例せんれいが積つみ重かさねられており、検索けんさくすれば容易よういに参照さんしょうすることができる。そこで本稿ほんこうでは少すこし視点してんを変かえて、そもそも、なぜ解消かいしょう法ほうなるものが必要ひつようなのかという点てんについて私見しけんを記しるしておきたい。

「反発はんぱつ」の背後はいごに何なにがあるのか

　結論けつろんから言いえば、解消かいしょう法ほうは「偏かたよりすぎた社会しゃかい」を見直みなおすためにある。

　この社会しゃかいは、街まちの構造こうぞうも、人々ひとびとの思考しこうや価値かち観かんも、種々しゅじゅの慣習かんしゅうや制度せいども、いわば「非ひ障害しょうがい者しゃ」仕様しようになっている。こうしたもろもろの事柄ことがらが有形ゆうけい無形むけいの障壁しょうへきとなり、障害しょうがい者しゃの社会しゃかい参加さんかが阻害そがいされてきた。

　この障壁しょうへきを取とり除のぞいていく必要ひつようがあるのだが、あまりにも長ながく「障害しょうがい者しゃが社会しゃかい参加さんかできない状態じょうたい」が続つづいていると、そもそも、どのようなことが障害しょうがい者しゃに対たいする障壁しょうへきになっていて、それが障害しょうがい者しゃの人生じんせいにどれだけ制約せいやくを与あたえるかについて、想像そうぞうすることさえ難むずかしくなってしまう。

　そこで、障害しょうがい者しゃからの申もうし出でをきっかけに、対話たいわを重かさねて、障壁しょうへきの除去じょきょに努つとめていくことが大切たいせつになる。

　解消かいしょう法ほうは、この「対話たいわ（建設けんせつ的てき対話たいわ）」を重おもんじている。まずは話はなし合あうことで、そこに障壁しょうへきがあることを知しったり、現時点げんじてんで対応たいおう可能かのうな落おとしどころを見みつけたり、何なにを今後こんごの課題かだいとして改あらためていくかを確認かくにんしたりすることはできる。

　現実げんじつには、障壁しょうへきの多おおくは一朝一夕いっちょういっせきに除去じょきょできない。だが、「できない前提ぜんてい」でいては、社会しゃかいはいつまでも変かわらない。それに、話はなし合あってみたら意外いがいなことで軽減けいげんできるということもあるだろう（実際じっさいにある）。

　個人こじん的てきな見解けんかいとしては、解消かいしょう法ほうを社会しゃかいに根付ねつかせるには、「うまくいかないこともあるだろうけれど試行しこう錯誤さくごしながらやっていこう」という根気こんき強つよさと、「今いま、この瞬間しゅんかんにも、様々さまざまな場面ばめんで障害しょうがい者しゃの人生じんせいが制約せいやくを受うけている現実げんじつを認識にんしきしよう」という危機きき感かんと、両方りょうほうの要素ようそが必要ひつようだと考かんがえている（ちなみに、後述こうじゅつする障害しょうがい者しゃ運動うんどう家か・横塚よこつか晃一こういちが残のこした有名ゆうめいな言葉ことばに「はやく、ゆっくり」がある）。

　解消かいしょう法ほうは、「ある特定とくていの人ひとた…