Re:Ron連載れんさい「小林こばやし啓あきら倫りんのテックのジレンマ」第だい11回かい

　生成せいせいAIの衝撃しょうげきがまだ世界せかいを駆かけ巡めぐっており、関連かんれんニュースを目めにしない日ひはないと言いっても過言かごんではないが、「その話はなしはそろそろいいから、次つぎに来くるのは何なに？」と考かんがえたくなるのが人間にんげんというものだ。そんな中なかで最近さいきん、「次つぎに来くるもの」の候補こうほとして挙あげられている技術ぎじゅつのひとつが「ウェアラブルAI」である。

　「ウェアラブル（Wearable）」というのは英語えいごで「身みに付つけられる」という意味いみの形容詞けいようしで、「ウェアラブル・デバイス」という単語たんごを耳みみにしたことがあるという方ほうも多おおいのではないだろうか。こちらは文字通もじどおり「身みに付つけられるデバイス（端末たんまつ）」という意味いみで、たとえばおなじみApple社しゃのApple Watchや、歩数ほすうなど身体しんたいの活動かつどう状じょう況きょうを測定そくていするためのデジタル歩数ほすう計けい（最近さいきんはフィットネストラッカーとも呼よばれている）などが挙あげられる。

　それでは、「身みに付つけられるAI」とは、どのような技術ぎじゅつなのだろうか？

胸元むなもとに装着そうちゃくするデバイスにAI

　まずは、ウェアラブルAIの代表だいひょう例れいとして挙あげられることの多おおいHumane社しゃが開発かいはつした「AI Pin（AIピン）」という製品せいひんから紹介しょうかいしよう。

　これは、その名なの通とおり胸元むなもとにピンのように装着そうちゃくするデバイスで、AIが搭載とうさいされていてさまざまなタスクをこなせるようになっている。ユーザーが自然しぜんな言葉ことばでAIに指示しじを出だすと、AIがさまざまなタスクを実行じっこうしてくれるのだ。

　たとえば、ピンの前まえに食たべ物ものをかざすとその栄養えいよう成分せいぶんを教おしえてくれる、自分じぶんが口くちにした言葉ことばを瞬時しゅんじに翻訳ほんやくして、機械きかい音声おんせいで読よみ上あげてくれる、いま自分じぶんがいる場所ばしょの周囲しゅういにある施設しせつを検索けんさくして教おしえてくれる、といった具合ぐあいである。

　Humane社しゃがChatGPT（チャットGPT）の開発かいはつ企業きぎょうであるOpenAI社しゃと提携ていけいしていることから、AI Pinの裏側うらがわで動うごいているのもChatGPTに使つかわれているのと同おなじAIモデルであると目めされている（製品せいひんのプロモーション映像えいぞうはhttps://www.youtube.com/watch?v=XdAlAI9TLww）。

　こうした機能きのうは、既すでに最新さいしんのスマホでも実現じつげんされている。しかし、スマホをいちいち取とり出だして操作そうさしなくても、音声おんせいやジェスチャーで指示しじを与あたえさえすれば、目的もくてきが達成たっせいされるというのがウェアラブルAIのセールスポイントだ。そのため「生成せいせいAIの次つぎにくるもの」というだけでなく、ポスト・スマートフォンの座ざを狙ねらえる技術ぎじゅつではないかと期待きたいする声こえも多おおい。

　調査ちょうさ会社かいしゃStraits Researchが発表はっぴょうしたリポートによれば、こうしたウェアラブルAIの市場いちば規模きぼは、2031年ねんまでに約やく2200億おくドル（日本円にほんえんで約やく34兆ちょう円えん）に達たっすると予測よそくされている。スマートフォンの世界せかい市場いちばが、22年ねんに5千せん億おくドルを超こえていたと推定すいていされている（グローバルインフォメーション社しゃ調しらべ）ことを考かんがえると、スマートフォンには及およばずともかなりの普及ふきゅうが見込みこまれる技術ぎじゅつであることが分わかるだろう。

報告ほうこく書しょの作成さくせいを支援しえん

　実じつはいま、ウェアラブルAIが静しずかに普及ふきゅうしつつある分野ぶんやがある。

　警察官けいさつかんが着用ちゃくようするボディーカメラだ。

　もともと、捜査そうさの効率こうりつ化かや警…