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ポール・クルーグマン

　先週せんしゅう（4月がつ中旬ちゅうじゅん）、米べい南部なんぶテネシー州しゅうチャタヌーガにある独どく自動車じどうしゃ大手おおてフォルクスワーゲン工場こうじょうの従業じゅうぎょう員いんが、投票とうひょうの結果けっか、ほぼ3対たい1で全米ぜんべい自動車じどうしゃ労組ろうそ（UAW）への加入かにゅうを決きめた。わずか数すう千せん人にんの労働ろうどう者しゃが加くわわるもので、1億おく6千せん万まん人にん近ちかくの雇用こようを抱かかえる全米ぜんべい自動車じどうしゃ業界ぎょうかいの経済けいざいにおいては、人数にんずうでいえば大おおきなものではない。だが、全盛期ぜんせいきでさえ米べい南部なんぶで広ひろがることはなかった労働ろうどう運動うんどうにとっては、重大じゅうだいで象徴しょうちょう的てきな勝利しょうりだった。

　そして、歴史れきし家かたちがいつか、チャタヌーガの投票とうひょうは、かつて米国べいこくにあった中流ちゅうりゅう階級かいきゅう社会しゃかいへと戻もどる道みちの一里塚いちりづかだったと、振ふり返かえるかも知しれないと想像そうぞうすることは、ばかげたことではない。

　もちろん、私わたしたちは真しんの平等びょうどう主義しゅぎ者しゃではなかった。第だい2次じ世界せかい大戦たいせん後ごの、繁栄はんえいが広ひろく共有きょうゆうされた時代じだいでさえ、多おおくのアメリカ人じん、特とくに有色ゆうしょく人種じんしゅは貧まずしく、裕福ゆうふくだったのはごく少数しょうすうの人々ひとびとだった。しかし、所得しょとくや富とみについて言いえば、我々われわれは現在げんざいよりもずっと格差かくさの少すくない国くにだった。このことは、ジニ係数けいすうや所得しょとくの上位じょういと下位かいの比率ひりつといった統計とうけい的てきな手法しゅほうで数値すうち化かすることができる。その時代じだいに育そだった者ものとして私わたしは、アメリカはかつて、ほとんどの人々ひとびとが同おなじような物質ぶっしつ的てき世界せかいに暮くらしている場所ばしょだと感かんじていたと証言しょうげんできる。今いまは、全まったくそのようには感かんじられない。

■なぜ労働ろうどう組合くみあいは衰退すいたいしたのか…