目の前が学校「地獄だった」不登校から 母と探した道は壺焼き芋店
焼きたてをかじった。しっとりした食感と甘みが口いっぱいに広がる。石川県羽咋市で1月から店を構える「壺(つぼ)焼き芋 青空」。ここにたどり着くまで、子と母の長い旅路があった。
淡い青色の看板を掲げた店は国道249号沿いにある。開店は正午だが、店主の藤井寛人(ひろと)さん(27)は午前9時すぎに作業場に入る。
高さ30センチの壺が4個。底に穴があき、七輪の上に乗っている。まずは備長炭で火をおこす。千葉産の「紅はるか」を1本ずつ、壺の中の小さな網に入れていく。火の様子をみながら芋の上下を入れ替えて1時間ほど、冬場は2~3時間で約60本が焼き上がる。
昨夏から開店までの半年間、独学で試作を重ねた寛人さんは「芋の産地、品種や季節や炭によって、自分の体や心の状態によっても出来が違う。何度も失敗した」と振り返る。「今はほとんどロスがない状態。でも、思っていた以上に奥が深い世界です」
母親の静(しずか)さん(48)、弟の颯人(はやと)さん(24)、妹の大空(そら)さん(19)との4人暮らし。寛人さんは中学生になって同級生たちから言葉のいじめを受け、2年生から不登校になった。「家の目の前が学校で、外に出ることができなかった。地獄だった」。家に引きこもる日々は4年近く続いた。高校には進まず、「妹と遊び、しゃべる時間だけが生きている実感があった」という。
静さんは14年前に離婚し、3人を育ててきた。寛人さんが玄関で「学校に行きたくない」と泣き崩れた日から、「きょう、笑顔でいてくれたらいい」と見守ってきた。「この子にできることは何だろう。一緒に探そう」と思うようになった。
17歳になった寛人さんは働…
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