はたらきながらほんめる社会しゃかいへ 三宅みやけかおりかいさんがう「ノイズ」のゆたかさ

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きて佐藤さとう美鈴みすず
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そんなにいそいでどこへゆく~スロー再考さいこう

 「なぜはたらいているとほんめなくなるのか」。そんなタイトルをかんしたほん反響はんきょうひろがっている。著者ちょしゃは、ほんめなかったから会社かいしゃめたという文芸ぶんげい評論ひょうろんいえ三宅みやけかおりかいさん。読書どくしょ労働ろうどうをめぐる歴史れきしについて、社会しゃかい構造こうぞう変化へんか教養きょうよう自己じこ啓発けいはつとの関係かんけいせいまじえながらかし、現代げんだいにこそ読書どくしょがもたらす「ノイズ」=自分じぶんからとおはなれた文脈ぶんみゃくれることの重要じゅうようせいく。三宅みやけさんがかんがえる「スロー」の価値かち、「はたらきながらほんめる社会しゃかい」とは。

なにかとタイパがもとめられるファスト社会しゃかいで、「スロー」を重視じゅうしするうごきが相次あいついでいます。ときにはまって、じっくり、ふかく……スローをめぐる価値かち思考しこう意味いみなおすインタビューシリーズです。

 ――4がつ発売はつばいされて1週間しゅうかんで10まん突破とっぱしたとのことですが、反響はんきょうをどうめていますか。

 ほん提示ていじした「半身はんしん」(=全身ぜんしんではなく半身はんしんはたらき、半身はんしん仕事しごと以外いがいのこしておくこと)というはたらかたたいして、想像そうぞう以上いじょうにたくさんのほう賛否さんぴ両論りょうろんとなえてくれていることがうれしいです。いまはたらかたつづけていていいのか、といういにたいして、どこか「ほんめないくらいつかれている状態じょうたいつづけているのはくない」という危機ききかんはあるのにやりごしている……そんなほう意外いがいおおいのではないか、とかんじるようになりました。わたし自身じしんは、ほんめないくらいつかれている、余裕よゆうがなくなっている、ということを認識にんしきするだけでも全然ぜんぜんちがう、それははたらかたえるいちになりるのではないかとおもっているのですが。

 ――今回こんかいほんへの反響はんきょうふくめ、「ファスト社会しゃかい」とわれるなかで「スロー」の価値かち見直みなおうごきが目立めだはじめているのではないかとおもいます。三宅みやけさんはスローを意識いしきすることはありますか。

 「ほん」というメディア自体じたいがスローなものだとおもいます。インターネットの情報じょうほうにも日々ひびれるけど、ほんもとめているものはちが役割やくわりです。ほんむこと自体じたいいま価値かちかんだと「スローな知識ちしき取得しゅとく方法ほうほう」であり、ほんにはほんさがある。

 ――インターネットとほんもとめるものはどうちがうのですか。

 自分じぶんしい情報じょうほうだけを素早すばやられる、それがインターネットの一番いちばんいところです。ぎゃくほんは、自分じぶんしい情報じょうほう周辺しゅうへんにある知識ちしき背景はいけい文脈ぶんみゃく一緒いっしょおしえてくれる。そのぶんむのに時間じかんはかかるんですよ。でも、自分じぶんろうとしていた情報じょうほうじゃない「ノイズ」もふくめた知識ちしきられるところが、ほんゆたかさだとおもっています。

 たとえば、「こん世界せかい戦争せんそうこっているのはなぜだろう」とかんがえたとき、「なんにちばくげきこって、いまどんな状況じょうきょうになっているか」という情報じょうほうはインターネットですぐられますよね。けれど、ほんひとつのメディアとしてまとまっているので、たとえばその戦争せんそう背景はいけいには歴史れきしてき宗教しゅうきょう戦争せんそうがあったとか、じつくにかかわっているといったはなしなど、背景はいけい周辺しゅうへん知識ちしきやすい。ほんとおして、自分じぶんはこういう文脈ぶんみゃく問題もんだいりたかったんだとづいたり、ろうとおもっていなかったけど必要ひつようだったことをったりできる。わたし自身じしんほんのノイズせいにすごくたすけられているとおもいます。

ほんめないけどスマホられる?

 ――ただ、「ほんめない」ということは、そうした「ノイズ」にれる機会きかいすくなくなっているのでしょうか。

 現代げんだいにおいては、はたらかた問題もんだいおおきいとおもっています。現代げんだいは「個人こじん目標もくひょうて、個人こじん行動こうどう自分じぶんえて、個人こじん人生じんせいかしていこう」という価値かちかん主流しゅりゅうになっています。そんな社会しゃかいだと、自分じぶんしい情報じょうほう最速さいそくて、それ以外いがい情報じょうほうをシャットアウトすることが効率こうりつてきはたらくことにつながりますよね。はたらかた問題もんだいと、どういう知識ちしき情報じょうほうたいかという問題もんだいは、すごく密接みっせつかかわっているとおもいます。

 ――三宅みやけさん自身じしんほんめなくて会社かいしゃめた、と。

 IT企業きぎょうで3ねんはんくらいつとめ…

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佐藤さとう美鈴みすず
デジタル企画きかく報道ほうどう|Re:Ron編集へんしゅうちょう
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    中川なかがわぶん
    朝日新聞あさひしんぶんスポーツ次長じちょう
    2024ねん6がつ14にち1611ふん 投稿とうこう
    視点してん

    ほんむことと、SNSやインターネットを、対比たいひさせてかんがえてみました。 ほんむことは、能動のうどう受動じゅどう思索しさくなのだとおもいます。ほんって、能動のうどうてきにそのいちさつえらんでって、能動のうどうてきにページをっていって、能動のうどうてき一文字ひともじいち文字もじっていかなければ、読

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対話たいわつうじて「ろん」をふかう。論考ろんこうやインタビューなど様々さまざま言葉ことばとおして世界せかいひろげる。そんなをRe:Ronはめざします。[もっと]