「今回こんかいの問題もんだいがなかったら自民党じみんとう総裁そうさい選せんは大だいチャンスだった。残念ざんねんだ」。5月中旬ちゅうじゅんのある夜よる、兵庫ひょうご県けん明石あかし市しの飲食いんしょく店てん。前ぜん経済けいざい産業さんぎょう相しょうの西村にしむら康かん稔みのるは、親したしい同どう市議しぎらに悔くやしさを隠かくさなかった。「あの人ひとにやられた」

　あの人ひととは、党とう幹事かんじ長ちょう、茂木もき敏さとし充たかしのこと。安倍あべ派はの裏金うらがね事件じけんによる党内とうない処分しょぶんを主導しゅどうしたのは、首相しゅしょうの岸田きしだ文雄ふみおと茂木もきだった。1年間ねんかんの党員とういん資格しかく停止ていしで、9月の総裁そうさい選せんに立候補りっこうほできない西村にしむらの怒いかりの矛先ほこさきは、「ポスト岸田きしだ」のライバルだった茂木もきに向むかう。

　西村にしむらは自民じみんが下野げやした後のちの2009年ねん総裁そうさい選せんに出馬しゅつば。本命ほんめいの谷垣たにがき禎一ていいちに退しりぞけられ、最下位さいかいの3位いだったが、安倍あべ派はの有力ゆうりょく者しゃ「5人にん衆しゅ」で立候補りっこうほにこぎつけた唯一ゆいいつの経歴けいれきを誇ほこる。政権せいけん復帰ふっき後ごも閣僚かくりょう経験けいけんを重かさね、派は内ないでも「総裁そうさい候補こうほ」（若手わかて）との見方みかたが広ひろまっていた。

　しかし、いま総理そうり総裁そうさいのイスははるか遠とおい。

　周囲しゅういが西村にしむらに課かせられている…