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　太鼓たいこをたたき、手作てづくりアートに挑戦ちょうせんする子こどもを見守みまもりながら、大人おとなはコーヒーやお菓子かしを手てに談笑だんしょうする。仮設かせつ住宅じゅうたくの集会しゅうかい所しょに、明あかるく穏おだやかな時間じかんがゆったりと流ながれる。小町こまち史華ふみかさん（30）は「イメージしていたことが現実げんじつになった」と目めを細ほそめた。

　能登半島のとはんとう地震じしんで大おおきな被害ひがいがあった石川いしかわ県けん珠洲すず市し正院しょういん町まち出身しゅっしん。まだがれきが多おおく残のこる町内ちょうないの仮設かせつ住宅じゅうたくで5月がつ、「心しんの復興ふっこうマルシェ」を開ひらいた。

　マルシェはフランス語かたりで「市場いちば」を意味いみする。人ひとが集あつまるきっかけをつくり、コミュニティーを取とり戻もどしたいと思おもい、企画きかく。イベント開催かいさいのノウハウはゼロだったが、持もち前まえの行動こうどう力りょくで人ひとをつなぎ、出店しゅってんや協賛きょうさんを募つのった。当日とうじつは晴天せいてんにも恵めぐまれ、約やく150人にんが訪おとずれた。

　故郷こきょうを離はなれた経験けいけんが糧かてになっている。

　高校こうこうから始はじめたウエイトリフティングで全国ぜんこく8位いになり、スポーツ推薦すいせんで早稲田大わせだだいに進学しんがく。卒業そつぎょう後ごは、衣料いりょう品ひん会社かいしゃの営業えいぎょう職しょくを経へて教育きょういく、美容びよう、飲食いんしょくなど多様たような業界ぎょうかいで働はたらき、事業じぎょうを立たち上あげたこともあった。自分じぶんのやりたいことを見みつけ、成長せいちょうし、成功せいこうしたかった。

　昨秋さくしゅう、体調たいちょうを崩くずし、やむなく故郷こきょうに戻もどった。「まだ東京とうきょうの人ひとだと思おもっていた。誰だれにも知しられたくなかった」。それでも、家族かぞくや友人ゆうじんは「おかえり」と再会さいかいを喜よろこび、これまでと同おなじように接せっしてくれた。肩かたひじ張はっていた自分じぶんが、ほぐれていくような感覚かんかくだった。

　そんな矢先やさきに襲おそった地震じしん。公民館こうみんかん長ちょうの父ちち・康夫やすおさん（70）を中心ちゅうしんに、家族かぞく総出そうでで避難ひなん所しょ運営うんえいを担になった。「このために呼よび戻もどされたんだ」と思おもった。

　大好だいすきな歌うたでまちの現状げんじょうを発信はっしんしようと、めいの一嘉かずよしさん（13）と音楽おんがくユニット「のとのおと」を始はじめた。崩くずれた家屋かおくの前まえでも、いきいきと、伸のびやかに、ハーモニーを響ひびかせる。インスタグラムに投稿とうこうした動画どうがには、応援おうえんのコメントが相次あいついで寄よせられている。

　次回じかいのマルシェは9月に開催かいさいが決きまった。県内けんないの特別とくべつ支援しえん学校がっこうで教おしえる傍かたわら、準備じゅんびを進すすめる。「次つぎは何なにができるか、ワクワクが止とまりません」（藤谷ふじたに和広かずひろ）