4月がつ16日にち、国土こくど交通省こうつうしょう11階かい。

　特別とくべつ会議かいぎ室しつは緊張きんちょう感かんが張はりつめていた。航空こうくう会社かいしゃの社長しゃちょう4人にんと執行しっこう役員やくいん2人にんが横よこ一いち列れつに座すわる。それぞれ青あお、赤あか、黄き、黄き緑みどり――。自社じしゃのイメージカラーのネクタイが光ひかる。

　ロの字形じけいの席せきで対面たいめんに座すわるのは国土こくど交通省こうつうしょう航空局こうくうきょくの幹部かんぶたち。間あいだに挟はさまれる形かたちでこの会議かいぎを取とり仕切しきる竹内たけうち健蔵けんぞう委員いいん長ちょう（東京女子大とうきょうじょしだい教授きょうじゅ）らが座すわっていた。「公おおやけの場ばでの足あしの引ひっ張ぱり合あい」（航空こうくう関係かんけい者しゃ）が始はじまろうとしていた。

　議題ぎだいは羽田空港はねだくうこう国内線こくないせんの「発着はっちゃく枠わく」だ。「スロット枠わく」とも呼よばれ、5年ねんに1度ど、国交こっこう省しょう主催しゅさいの有識者ゆうしきしゃ会議かいぎ「羽田はた発着はっちゃく枠わく配分はいぶん基準きじゅん検討けんとう小しょう委員いいん会かい」で議論ぎろんされる。

　対象たいしょうは465枠わく。ドル箱ばこの羽田はた路線ろせんは、「1枠わく20億おく円えんの売うり上あげ」とも言いわれ、航空こうくう関係かんけい者しゃは「あの場ばに出でる役員やくいんたちは会社かいしゃ員いん人生じんせいがかかっている」と話はなす。

　羽田はたの発着はっちゃく枠わくは評価ひょうか項目こうもくごとに点数てんすう化かされて決きめられる。項目こうもくは、運賃うんちんを下さげる努力どりょくをしているか▽安全あんぜんを確保かくほした運航うんこうができているか▽羽田はたから地方ちほうにどのくらい路線ろせんを飛とばしているか▽行政ぎょうせい処分しょぶんを過去かこ5年間ねんかん受うけていないか――などだ。

　前回ぜんかいの委員いいん会かい（2019年ねん）後ごの配分はいぶんはこうだった。

　日本航空にほんこうくう（JAL）…180・5枠わく（38・8%）

　全日空ぜんにっくう（ANA）…168・5枠わく（36・2%）

　スカイマーク（SKY）…37枠わく（8・0%）

　ソラシドエア（SNJ）…25枠わく（5・4%）

　エア・ドゥ（ADO）…23枠わく（4・9%）

　スターフライヤー（SFJ）…23枠わく（4・9%）

　※端はし数すうは片道かたみち分ぶんの枠わく

　ここに、自治体じちたいと航空こうくう会社かいしゃが組くんで地方ちほう路線ろせんの利用りよう者しゃを増ふやすための案あんを競きそう「政策せいさくコンテスト枠わく」（5枠わく）と「新規しんき参入さんにゅう枠わく」（3枠わく）が加くわわる。前回ぜんかいの委員いいん会かいでは19枠わくが国交こっこう省しょうに回収かいしゅうされ、16枠わくが航空こうくう各社かくしゃに再さい配分はいぶんされた。大手おおて2社しゃは減へり、スカイマークだけが1枠わく増ふえた。

　今回こんかいの議論ぎろんでは19～23年度ねんどの各社かくしゃの取とり組くみが評価ひょうかされる予定よていだった。ただ、この5年間ねんかんはコロナ禍かが約やく3年ねんを占しめるため、「正常せいじょうな評価ひょうかが難むずかしい」として、3月にあった初回しょかいの会議かいぎでの有識者ゆうしきしゃの意見いけんは「今回こんかいの回収かいしゅう・再さい配分はいぶんは見送みおくり」が大勢おおぜいを占しめていた。

空気くうきを変かえたJALのプレゼン

　この日ひの会議かいぎ。報道陣ほうどうじんも見みつめる前まえで、社長しゃちょうや役員やくいんによるプレゼンが始はじまった。持もち時間じかんはひとり15分ふん。この5年間ねんかんの「自社じしゃの頑張がんばり」を自みずからプレゼンしていった。

　スターフライヤーの町田まちだ修おさむ社長しゃちょうとエア・ドゥの鈴木すずき貴博たかひろ社長しゃちょうは「今回こんかいは見送みおくり」を主張しゅちょう。「コロナ禍かで傷いたんだ経営けいえい状じょう況きょうが回復かいふくしきっていない」ということが主おもな理由りゆうだ。　ただ、3人にん目めのプレゼンから会場かいじょうの空気くうきが一変いっぺんする。日本航空にほんこうくうの小山こやま雄司ゆうじ経営けいえい企画きかく本部ほんぶ長ちょうの発言はつげんだった。

　「羽田はたでの（2社しゃ以上いじょうの航空こうくう…