(社説)日米2+2 一体化 主体性保てるか
社説
日本は米国と肩を組んで立ち上がる――。岸田首相が訪米し、連邦議会での演説で、そう約束してから3カ月余り。東京で開かれた日米の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で、主に中国を念頭にした、日米の「一体化」のさらなる加速が確認された。
自由で開かれた国際秩序を守るための協力は重要だが、軍事偏重となれば、かえって地域の緊張を高めかねない。また、同盟関係にあっても、常にすべての利害が一致するわけではない。圧倒的な装備や情報力を持つ米国に対し、日本が主体的な判断を貫けるかが厳しく問われる。
2プラス2では、自衛隊が来春までに、陸海空の部隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を設けるのにあわせて、米国が在日米軍を再編し、統合軍司令部を新設する方針が示された。4月の日米首脳会談で合意した、自衛隊と米軍の「指揮統制」の向上を具体化するもので、作戦指揮権を持たせる予定だ。
安保3文書の改定で、日本は敵基地攻撃能力の保有を決めた。米軍頼みだった打撃力の一部を担うわけだが、標的に関する情報は米国に依存せざるをえないのが実態だろう。米国の判断に従うだけにならないか懸念は尽きない。
日米の一体化は指揮・統制面だけではない。共同発表には、迎撃ミサイルなどの共同生産も盛り込まれた。ウクライナへの支援によって在庫が減っている米国を、日本が下支えすることになる。
サイバーセキュリティーに関する協力強化も確認された。日本はサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に向けた議論を進めており、日本政府が民間通信事業者から取得した情報の米国との共有も検討対象になっている。自国のデータを自国で管理する「データ主権」が守られるのか。ここでも日本の主体性が試される。
共同発表は、沖縄を中心に頻発する米軍関係者の性暴力事件に直接言及はしていないが、再発防止に向けた在日米軍の取り組みを「前向きに評価」した。実効性のある対策がとられ、犯罪がなくなるという結果を伴わねば、不信が増すだけだと心すべきだ。
2プラス2の後、同じ4閣僚によって、「核の傘」を含む米国の戦力で日本への攻撃を思いとどまらせる「拡大抑止」をめぐる初の閣僚会合が開かれた。事務レベルから格上げすることで、実効性を高める狙いというが、日本に求められるのは、ほころびが目立つ核抑止に安住することではなく、核廃絶に向けた具体的な行動のはずである。
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