(Translated by https://www.hiragana.jp/)
ドイツの水素普及・調達戦略を探る(前編) 熊谷徹のヨーロッパSDGリポート【8】:朝日新聞SDGs ACTION!
編集へんしゅうへのおわせはこちら

ドイツの水素すいそ普及ふきゅう調達ちょうたつ戦略せんりゃくさぐる(前編ぜんぺん) 熊谷くまがいとおるのヨーロッパSDGリポート【8】

ドイツの水素普及・調達戦略を探る(前編) 熊谷徹のヨーロッパSDGリポート【8】
Getty Images
ざいどくジャーナリスト/熊谷くまがいとおる

著者_熊谷徹さん
熊谷くまがいとおる(くまがい・とおる)
1959ねん東京とうきょうまれ。1982ねん早稲田大学わせだだいがく政治せいじ経済学部けいざいがくぶ卒業そつぎょう、NHKに入局にゅうきょく。ワシントン支局しきょく勤務きんむちゅうにベルリンのかべ崩壊ほうかいべい首脳しゅのう会談かいだんなどを取材しゅざい。1990ねんからドイツ・ミュンヘンを拠点きょてんにジャーナリストとして活動かつどう著書ちょしょに『ドイツの憂鬱ゆううつ』『新生しんせいドイツの挑戦ちょうせん』『ドイツびょうまねべ』『なぜメルケルは「転向てんこう」したのか』『ドイツ中興ちゅうこう ゲアハルト・シュレーダー』『ドイツじんはなぜ、年収ねんしゅうアップと環境かんきょう対策たいさく両立りょうりつできるのか』など。

日本にっぽん政府せいふ同様どうように、ドイツ政府せいふは、気候きこう変動へんどう歯止はどめをかけるための、産業さんぎょうだつ炭素たんそすすめるには、水素すいそによる化石かせき燃料ねんりょう代替だいたい不可欠ふかけつだとかんがえている。ドイツ政府せいふと、エネルギー業界ぎょうかいがどのように水素すいそ普及ふきゅうさせ、水素すいそをどのように調達ちょうたつするのかについて、上下じょうげ2かいけておつたえする。

どくエネルギー業界ぎょうかいは2040ねんまでに水素すいそ市場いちば構築こうちくする

次世代じせだいエネルギーとしての水素すいそかんする努力どりょくが、各国かっこく急激きゅうげきすすんでいる。日本にっぽん政府せいふは6がつ6にちに「水素すいそ基本きほん戦略せんりゃく」を6ねんぶりに改訂かいていして、今後こんご15年間ねんかん官民かんみんわせて15ちょうえん投資とうしするという方針ほうしんした。

日本にっぽんおなぶつづくり国家こっかであるドイツも、けてはいない。こんドイツの政界せいかい学界がっかい、エネルギー業界ぎょうかいでは、水素すいそ市場いちば構築こうちくをめぐって、活発かっぱつ議論ぎろんがおこなわれている。ドイツ連邦れんぽう政府せいふは7がつ26にち国家こっか水素すいそ戦略せんりゃく(NWS)を3ねんぶりに改訂かいていし、2030ねん国内こくない水素すいそ生産せいさん能力のうりょくについての目標もくひょうを、これまで予定よていしていた5GW(ギガワット)から2ばいの10GWにやした。2030ねんまでに、水素すいそ輸送ゆそうするためのパイプライン1800kmを建設けんせつする。

政府せいふはNWSのなかで、「2030ねんまでに水素すいそとその派生はせい物質ぶっしつは、産業さんぎょうかいだけではなく、船舶せんぱく航空機こうくうき使つかっている化石かせき燃料ねんりょう代替だいたいする重要じゅうようなエネルギーげんになる」と強調きょうちょうした。

ドイツのエネルギー業界ぎょうかい今年ことし7がつ4にち公表こうひょうした文書ぶんしょも、注目ちゅうもくあつめた。日本にっぽん電気事業連合会でんきじぎょうれんごうかい相当そうとうするドイツ連邦れんぽうエネルギー水道すいどう事業じぎょう連合れんごうかい(BDEW)は、「水素すいそ市場いちばデザインのためのディスカッション・ペーパー」と名付なづけた提案ていあんしょ公表こうひょうし、2040ねんまでに水素すいそ普及ふきゅうのためのインフラを整備せいびするという道筋みちすじしめした。

つまりドイツは、いまから17ねんかけて、競争きょうそう良好りょうこう機能きのうする水素すいそ市場いちば構築こうちくする。当初とうしょ政府せいふ援助えんじょ必要ひつようになるが、2040ねん水素すいそ市場いちばは、政府せいふ助成じょせいがなくてもひとちしなくてはならない。この文書ぶんしょは、電力でんりょく業界ぎょうかいなど、民間みんかん企業きぎょう立場たちばからた、水素すいそ普及ふきゅうさせるためのロードマップだ。BDEWは、この文書ぶんしょを、ガス業界ぎょうかい製造せいぞう業界ぎょうかい、ドイツ政府せいふ欧州おうしゅう連合れんごう(EU)加盟かめいこく欧州おうしゅう委員いいんかいなどとの水素すいそをめぐるディスカッションのためのたたきだいにする。

BDEWのケアスティン・アンドレー専務せんむ理事りじは、「水素すいそエネルギーの実用じつようは、エネルギー転換てんかんだけではなく、ドイツの産業さんぎょうかいにとってもおおきなチャンスだ。今後こんごすう年間ねんかんは、ドイツそして欧州おうしゅう全体ぜんたい水素すいそ普及ふきゅうにとって、決定的けっていてき意味いみつだろう。我々われわれは、欧州おうしゅう水素すいそ市場いちばデザインをめぐる議論ぎろんなか主導しゅどうてき役割やくわりたすべきだ」とべ、このくにのエネルギー業界ぎょうかい水素すいそ普及ふきゅうける意気込いきごみを強調きょうちょうした。

アンドレー専務せんむ理事りじは、2002ねんから17ねんにわたりみどりとう連邦れんぽう議会ぎかい議員ぎいんつとめたのち、2019ねんにエネルギー業界ぎょうかいによって現在げんざい要職ようしょく抜擢ばってき(ばってき)された。このためBDEWは、エネルギー事業じぎょうのグリーン水素すいそ実用じつよう積極せっきょくてきなのだ。日本にっぽん電事連でんじれん相当そうとうする団体だんたい専務せんむ理事りじみどりとう党員とういんえらばれ、エネルギー転換てんかん牽引けんいん(けんいん)やくになるというてんに、ドイツのエネルギー業界ぎょうかいのグリーンけた「真剣しんけんさ」がかんじられる。

BDEWは、2040ねんまでにドイツの水素すいそ関連かんれんインフラが完成かんせいし、市場いちばメカニズムが有効ゆうこう機能きのうするようになるというシナリオをえがいているが、それまでの17年間ねんかんよっつの時期じきけている。

BDEWが想定そうていする、水素すいそ市場いちば構築こうちく行程こうていひょう

BDEWの描くロードマップ
出所しゅっしょ:BDEW

政府せいふたいし「水素すいそほう」の制定せいてい要求ようきゅう

だい1(2023/2024ねん初期しょき段階だんかい

現在げんざいドイツは、この段階だんかいにある。BDEWは、2024ねんまでに市場いちば構築こうちく必要ひつよう前提ぜんてい条件じょうけんととのえる必要ひつようがあると主張しゅちょうする。だい1には、政府せいふ民間みんかん企業きぎょうたいする助成じょせいきん枠組わくぐみを確立かくりつする。BDEWは、「現在げんざい時点じてんでは水素すいそ製造せいぞう輸送ゆそう蓄積ちくせきのためのテクノロジーは成熟せいじゅくしている。しかし水素すいそのバリューチェーンの様々さまざま段階だんかいにおける実証じっしょう実験じっけん不足ふそくしている。さらに、民間みんかん投資とうし十分じゅうぶんにおこなわれていない」と指摘してきする。

BDEWによると、その理由りゆうひとつは、長期ちょうきてき水素すいそ市場いちば見通みとおしがまだ明確めいかくなので、投資とうしにとっては経済けいざいてきなリスクがおおきすぎるためだ。政府せいふたいし、「水素すいそ普及ふきゅう促進そくしんほう」を制定せいていすることによって将来しょうらい水素すいそ関連かんれんインフラなどについての明確めいかくなビジョンをしめすとともに、透明とうめいせいたかめて企業きぎょう信頼しんらい醸成じょうせいし、投資とうしリスクを最小限さいしょうげんにするための法的ほうてき枠組わくぐみをととのえるようもとめている。

BDEWがもとめているのは、2000ねん施行しこうされた再生さいせい可能かのうエネルギー促進そくしんほう(EEG)のような法律ほうりつだ。EEGの最新さいしんばんであるEEG2023は、2030ねんさいエネ発電はつでんりょうを600TWh(テラワット)にげるための道筋みちすじや、2040ねんまでの陸上りくじょう風力ふうりょく発電はつでん設備せつび太陽光たいようこう発電はつでん設備せつび設置せっち容量ようりょう目標もくひょう明記めいきしている。さらに2030ねんまでにドイツの電力でんりょく消費しょうひりょうさいエネがめる比率ひりつすくなくとも80%にげるという、目標もくひょう設定せっていした。

BDEWは水素すいそについても、EEGとおなじようにとしごとの目標もくひょう設定せっていするべきだと主張しゅちょうしているのだ。

EEG2023に明記めいきされた、さいエネ電力でんりょく発電はつでんりょうさいエネ発電はつでん設備せつび容量ようりょう目標もくひょう

EEG2023で掲げられた再エネ電力の発電量、再エネ発電設備の設備容量の目標
出所しゅっしょEEG2023

グリーン水素すいそ普及ふきゅうのためには政府せいふ助成じょせい不可欠ふかけつ

さらにBDEWは、政府せいふたい水素すいそ関連かんれん事業じぎょうのための助成じょせいシステムの確立かくりつ要求ようきゅうしている。このくに電力でんりょく会社かいしゃ・ガス会社かいしゃのエンジニアたちのあいだでは、「水素すいそかんする技術ぎじゅつ成熟せいじゅくしており、実用じつよう可能かのうだが、まだ経済けいざいせいひくい」という意見いけん有力ゆうりょくだ。その理由りゆうは、政府せいふ重視じゅうしするグリーン水素すいそ、つまり再生さいせい可能かのうエネルギー(さいエネ)による電力でんりょくだけを使つかってみず電気でんき分解ぶんかいしてつくられる水素すいそ生産せいさん費用ひようが、水素すいそくらべてたかいからだ。

水素すいそ生産せいさん方法ほうほうによって、つぎのように分類ぶんるいされる。

水素すいそ種類しゅるい 生産せいさん方法ほうほう 気候きこう中立ちゅうりつせい
グリーン水素すいそ さいエネ電力でんりょくみず電気でんき分解ぶんかいして生産せいさん 気候きこう中立ちゅうりつてき
ブルー水素すいそ 天然てんねんガスを使つかって生産せいさん生成せいせい過程かてい発生はっせいしたCO2(二酸化炭素にさんかたんそ)は、CCS(炭素たんそ分離ぶんり貯留ちょりゅう)によって地下ちかなどに貯留ちょりゅうされるので、大気たいきちゅうには排出はいしゅつされない 気候きこう中立ちゅうりつてき
ターコイズ水素すいそ(ターコイズとはトルコせきのこと) 天然てんねんガスのメタンを直接ちょくせつ分解ぶんかいして生産せいさんする。炭素たんそ固形こけいぶつとして生成せいせいされるので大気たいきちゅうにCO2は放出ほうしゅつされない 気候きこう中立ちゅうりつてき
グレー水素すいそ 天然てんねんガスを使つかって生産せいさん 気候きこう中立ちゅうりつてきではない
レッド水素すいそ(またはピンク水素すいそ 原子力げんしりょく発電はつでん設備せつびによる電力でんりょくみず電気でんき分解ぶんかいして生産せいさんする 気候きこう中立ちゅうりつてき

世界せかい経済けいざいフォーラムの資料しりょうをもとに筆者ひっしゃ作成さくせい

だがグリーン水素すいそ生産せいさんコストはまだ割高わりだかだ。国際こくさいエネルギー機関きかん(IEA)の2022年度ねんどばんグローバル水素すいそレビュー」によると、2021ねんのグリーン水素すいそ平均へいきん生産せいさん費用ひようは1kgあたり4ドル~9ドルだった。これはグレー水素すいそ(1ドル~2.5ドル)、ブルー水素すいそ(1.5ドル~3ドル)、レッド水素すいそ(3.5~7ドル)を上回うわまわる。これでは、投資とうしが「グリーン水素すいそ本当ほんとう実用じつようされるのか」とあしむのは無理むりもない。

ドイツの製鉄せいてつ業界ぎょうかい化学かがく業界ぎょうかいも、熱源ねつげんとしてグリーン水素すいそ使つかうための準備じゅんびすすめているが、「政府せいふだい規模きぼ助成じょせいなしには、熱源ねつげん短期たんき変更へんこうすることは不可能ふかのう」という見方みかたっている。

つまり現状げんじょうでは、グリーン水素すいそ価格かかく競争きょうそうせいひくさがアキレス腱あきれすけん(けん)になっている。現在げんざいのところ、グリーン水素すいそ普及ふきゅうさせるには、政府せいふ助成じょせいきんして、生産せいさん費用ひよう市場いちば価格かかくあいだのギャップをめることが不可欠ふかけつえるだろう。

ちなみにドイツ政府せいふはグリーン水素すいそさい優先ゆうせんにしているが、ブルー水素すいそ使用しようについてもふくみをのこしている。その場合ばあい、CCS(炭素たんそ貯留ちょりゅう技術ぎじゅつ)によって、水素すいそ生産せいさん発生はっせいするCO2を大気たいきちゅう放出ほうしゅつしないことが条件じょうけんになる。

ただしドイツ政府せいふは、原子げんしからの電力でんりょく使つかって生産せいさんされるレッド水素すいそ使用しようには反対はんたいしている。同国どうこく今年ことし4がつ15にちだつ原子力げんしりょく完遂かんすいしたからだ。(これにたい発電はつでんりょうやく70%を原子力げんしりょく依存いぞんするフランス政府せいふは、レッド水素すいそをグリーン水素すいそ同様どうよう地球ちきゅう温暖おんだん抑制よくせい貢献こうけんする水素すいそなしている)

水素すいそ輸送ゆそうには、既存きそんのガスパイプラインを改修かいしゅうして使つか

だい2(2025~2032/2035ねん構築こうちく段階だんかい

BDEWによるとだい2は、2032ねんから2035ねんごろに水素すいそ基幹きかん系統けいとうや、長距離ちょうきょり短距離たんきょりのパイプラインが完成かんせいするまでつづく。基幹きかん系統けいとうとは、水素すいそ輸入ゆにゅうこうまたはみず電解でんかい設備せつびから、メーカーや家庭かてい輸送ゆそうするパイプラインのことだ。全国ぜんこく規模きぼ水素すいそ普及ふきゅうさせるうえでかせない。

ドイツのガス業界ぎょうかいは、インフラ建設けんせつ費用ひよう最小限さいしょうげんおさえるために、現在げんざい使つかわれている天然てんねんガスの輸送ゆそうパイプラインを改修かいしゅうして、水素すいそ輸送ゆそう使つか方針ほうしんだ。天然てんねんガスを輸送ゆそうするパイプラインのあみは、ルール工業こうぎょう地帯ちたいなど、重厚じゅうこう長大ちょうだい産業さんぎょうおおいドイツ北西ほくせいみつになっているので、この輸送ゆそうルートを水素すいそのために使用しようするのだ。ただし、ドイツのガス業界ぎょうかいは、新設しんせつ必要ひつようになる部分ぶぶんもあるとかんがえている。

たとえばドイツの長距離ちょうきょり天然てんねんガス輸送ゆそう企業きぎょう団体だんたいであるFNBガスが最近さいきん公表こうひょうした計画けいかくしょによると、ニーダーザクセンしゅうのヴォルフスブルク付近ふきんには、あたらしい水素すいそパイプラインが建設けんせつされる予定よていだ。その理由りゆうは、欧州おうしゅう最大さいだい自動車じどうしゃメーカー、フォルクスワーゲン(VW)の本社ほんしゃ工場こうじょうがここにあるからだ。

同社どうしゃは、自動車じどうしゃ生産せいさんラインで使つか電力でんりょく暖房だんぼうようねつ供給きょうきゅうするために、1939ねん以来いらいおも石炭せきたん使つかねつでん併給へいきゅうがた発電はつでんしょ(コジェネ)を敷地しきちないっていた。VWは2011ねん石炭せきたん火力かりょく発電はつでん設備せつび天然てんねんガス火力かりょく発電はつでん設備せつび更新こうしんした。将来しょうらい同社どうしゃはCO2の排出はいしゅつりょうをさらにらすために、水素すいそだけを発電はつでんしょ燃料ねんりょうとして使つかうことを計画けいかくしている。このためヴォルフスブルクに水素すいそのパイプラインが新設しんせつされるのだ。

だい2には、外国がいこくからの最初さいしょ本格ほんかくてき水素すいそ供給きょうきゅうはじまり、水素すいそ関連かんれんプロジェクトが拡大かくだいされる。またドイツでは、北部ほくぶ中心ちゅうしんだい規模きぼ天然てんねんガスの地下ちか貯蔵ちょぞう設備せつび使つかわれているが、将来しょうらいこれらの備蓄びちく設備せつびは、水素すいそ貯蔵ちょぞうのためにも使つかわれる予定よていだ。

どくエネ業界ぎょうかいはグリーン水素すいそ生産せいさん費用ひよう下落げらく想定そうてい

だい3(2032/2035~2040ねん浸透しんとう段階だんかい

BDEWは、「政府せいふ業界ぎょうかいは2035~2040ねんまでに市場いちばメカニズム、つまり需要じゅよう供給きょうきゅうのバランスにもとづいて機能きのうする水素すいそ市場いちば構築こうちくするべきだ」と主張しゅちょうする。2040ねんまでには、政府せいふ水素すいそ関連かんれん事業じぎょうのための助成じょせいプログラムも終了しゅうりょうする。

この時期じきには、水素すいそ生産せいさん需要じゅよう反応はんのうしておこなわれ、さいエネ電力でんりょく発電はつでん費用ひよう低下ていかするとともに、水素すいそ生産せいさん費用ひよう下落げらくする。ドイツ製造せいぞう業界ぎょうかいやく99%をめる中規模ちゅうきぼ企業きぎょう(ミッテルシュタント)のだい部分ぶぶん水素すいそ供給きょうきゅうける。ドイツの水素すいそのための基幹きかん系統けいとうは、EU全体ぜんたい水素すいそ系統けいとうなかまれる。

BDEWはこのシナリオのなかで、将来しょうらい水素すいそ調達ちょうたつ価格かかくがることを想定そうていしている。実際じっさいIEAも、将来しょうらいはグリーン水素すいそ生産せいさん費用ひよう下落げらくすると予想よそうしている。たとえばIEAによると、2021ねんには陸上りくじょう風力ふうりょく発電はつでん設備せつび使つかったグリーン水素すいそ生産せいさん費用ひようは、1キログラムあたりやく3.9ドル~やく8ドルだったが、2050ねんには1キログラムあたりやく1.8ドル~やく3.9ドルにがると予想よそうしている。洋上ようじょう風力ふうりょく発電はつでん設備せつび太陽光たいようこう発電はつでん設備せつび使つかったグリーン水素すいそについても価格かかくがるとられている。

IEAによる、将来しょうらいのグリーン水素すいそ生産せいさん費用ひようかんする予測よそく

IEAによるグリーン水素の生産費用の予想
出所しゅっしょIEA

だい4(2040ねん以降いこう良好りょうこう機能きのうする水素すいそ市場いちば完成かんせい

BDEWは、2040ねんまでに水素すいそ市場いちば完成かんせいさせ、スムーズに機能きのうさせることを目指めざしている。この時期じきには需要じゅようをカバーするために十分じゅうぶんりょう水素すいそ派生はせい物質ぶっしつ(グリーン・アンモニアや、水素すいそ使つか合成ごうせい燃料ねんりょう)が生産せいさんされ、取引とりひきされる。水素すいそ派生はせい物質ぶっしつ市場いちば確立かくりつされ、デジタル・プラットフォームを使つかった取引とりひき市場いちば完成かんせいする。水素すいそのためのインフラが完成かんせいし、欧州おうしゅう全域ぜんいきむす水素すいそ系統けいとう水素すいそ消費しょうひしゃ企業きぎょうとどける。

アンドレー専務せんむ理事りじは、「水素すいそかんする透明とうめいせいたかめるために、EUは、水素すいそがどのようなエネルギーを使つかって生産せいさんされたかをしめ認証にんしょう制度せいど確立かくりつしてほしい。さらに、電力でんりょく天然てんねんガスとおなじように、水素すいそ卸売おろしうり市場いちば取引とりひきするための枠組わくぐみを整備せいびすることも重要じゅうようだ」とうったえている。

ドイツのエネルギー業界ぎょうかい水素すいそ市場いちば構築こうちくするための前提ぜんていは、水素すいそ調達ちょうたつである。次回じかいは、ドイツ政府せいふとエネルギー業界ぎょうかい将来しょうらい水素すいそをどのようにして調達ちょうたつしようとしているのかについておつたえする。

この連載れんさい筆者ひっしゃ熊谷くまがいとおるさんの最新さいしんかんつぎ日本にっぽんのエネルギー危機きき』(青春せいしゅん出版しゅっぱんしゃ)が2023ねん8がつ出版しゅっぱんされました。

ロシアのウクライナ侵攻しんこうで、エネルギー危機きき瀬戸際せとぎわめられたドイツ。熊谷くまがいさんは、ドイツの経験けいけん原油げんゆの9わり以上いじょう中東ちゅうとうからの輸入ゆにゅう依存いぞんする日本にっぽんにとっても「他人事たにんごとではない」と指摘してきします。著書ちょしょでは、ウクライナ侵攻しんこうきたドイツ経済けいざい混乱こんらんぶりを紹介しょうかいするとともに、日本にっぽん同様どうようのエネルギー危機ききけるためにとるべき施策しさく提言ていげんしています。

詳細しょうさい青春せいしゅん出版しゅっぱんしゃのウェブサイトをごらんください。

この記事きじをシェア
関連かんれん記事きじ