2023.12.18
(最終 さいしゅう 更新 こうしん :2023.12.18)
コーポレートガバナンスとは? 目的 もくてき や基本 きほん 原則 げんそく 、改訂 かいてい の内容 ないよう を解説 かいせつ
コーポレートガバナンスとは(デザイン:増渕 ますぶち 舞 まい )
関西大学 かんさいだいがく 総合 そうごう 情報 じょうほう 学部 がくぶ 准 じゅん 教授 きょうじゅ /中尾 なかお 悠 ゆう 利子 りし
コーポレートガバナンスとは、企業 きぎょう を統治 とうち するためのルール・慣行 かんこう ・プロセスの仕組 しく みを指 さ します。ニュースをみると、企業 きぎょう の不祥事 ふしょうじ が後 こう を絶 た ちません。そのため企業 きぎょう の環境 かんきょう ・社会 しゃかい 課題 かだい の影響 えいきょう を含 ふく めた企業 きぎょう 行動 こうどう を注視 ちゅうし すべく、コーポレートガバナンスの有効 ゆうこう 性 せい を考 かんが えていく必要 ひつよう があります。
中尾 なかお 悠 ゆう 利子 りし (なかお・ゆりこ)関西大学 かんさいだいがく 総合 そうごう 情報 じょうほう 学部 がくぶ 准 じゅん 教授 きょうじゅ 。博士 はかせ (経営 けいえい 学 がく )。日本 にっぽん 社会 しゃかい 関連 かんれん 会計 かいけい 学会 がっかい 理事 りじ 。主著 しゅちょ に『AIによるESG評価 ひょうか 』(編者 へんしゃ 、同文 どうぶん 館 かん )『利他 りた の構造 こうぞう 』(共著 きょうちょ 、ミネル みねる ヴァ書房 ぁしょぼう )、Sustainability Management and Business Strategy in Asia(分担 ぶんたん 執筆 しっぴつ 、World Scientific)などがある。
1.コーポレートガバナンスとは
コーポレートガバナンスとは、企業 きぎょう の統治 とうち (=企業 きぎょう を統治 とうち するための仕組 しく み)を意味 いみ する言葉 ことば で、企業 きぎょう を統治 とうち するためのルールや慣行 かんこう 、プロセスのことです。
従来 じゅうらい のコーポレートガバナンスは、経営 けいえい 者 しゃ が株主 かぶぬし 利益 りえき の最大 さいだい 化 か を達成 たっせい するための企業 きぎょう 運営 うんえい の仕組 しく みやプロセスを意味 いみ しました。
サステナビリティが求 もと められる現代 げんだい では、コーポレートガバナンスは株主 かぶぬし 利益 りえき の最大 さいだい 化 か だけでなく、社会 しゃかい からの期待 きたい に応 こた え、企業 きぎょう 価値 かち の向上 こうじょう につなげることが重要 じゅうよう になります。
2.コーポレートガバナンスの目的 もくてき
企業 きぎょう の目的 もくてき は利益 りえき の最大 さいだい 化 か であり、投資 とうし する株主 かぶぬし へ与 あた える価値 かち を最大 さいだい 化 か することです。株主 かぶぬし は経営 けいえい 者 しゃ に対 たい して、自分 じぶん たちの利益 りえき を重視 じゅうし する行動 こうどう を要求 ようきゅう できます。
しかし、経営 けいえい 者 しゃ が常 つね に株主 かぶぬし の利益 りえき を優先 ゆうせん して行動 こうどう するとは限 かぎ りません。両者 りょうしゃ の間 あいだ のコンフリクト(対立 たいりつ )を解消 かいしょう するために、コーポレートガバナンスが存在 そんざい します。コーポレートガバナンスには主 おも に三 みっ つの目的 もくてき があります。
(1)経営 けいえい 陣 じん による不祥事 ふしょうじ を防 ふせ ぐ
コーポレートガバナンスを強化 きょうか することで、株主 かぶぬし と経営 けいえい 者 しゃ の間 あいだ のコンフリクトが緩和 かんわ され、企業 きぎょう の不祥事 ふしょうじ のリスクが低減 ていげん されます。しかし、株主 かぶぬし の利益 りえき を考慮 こうりょ せずに経営 けいえい すると、むしろ企業 きぎょう 不祥事 ふしょうじ につながる可能 かのう 性 せい があります。経営 けいえい 者 しゃ の利益 りえき を高 たか めようとしてトラブルを隠蔽 いんぺい (いんぺい)した不祥事 ふしょうじ は、過去 かこ に日本 にっぽん でもみられました。
例 たと えば2011年 ねん 、当時 とうじ のオリンパスの最高 さいこう 経営 けいえい 責任 せきにん 者 しゃ マイケル・ウッドフォード氏 し がその役職 やくしょく から突然 とつぜん 追放 ついほう されました。理由 りゆう は「日本 にっぽん の企業 きぎょう 史上 しじょう 、最大 さいだい かつ最 もっと も長期 ちょうき にわたる損失 そんしつ 隠蔽 いんぺい 事件 じけん 」を暴露 ばくろ したためです。
この事件 じけん では、オリンパスが過去 かこ に資産 しさん の減損 げんそん を隠蔽 いんぺい していたことが明 あき らかになりました。この事件 じけん が発覚 はっかく した後 のち 、同社 どうしゃ の株式 かぶしき 価値 かち は大幅 おおはば に下落 げらく し、多 おお くの取締役 とりしまりやく の辞任 じにん につながりました(参照 さんしょう :第三者 だいさんしゃ 委員 いいん 会 かい など調査 ちょうさ 委員 いいん 会 かい 報告 ほうこく |オリンパス )。
コーポレートガバナンスが効果 こうか 的 てき に機能 きのう すれば、このような経営 けいえい 陣 じん の不正 ふせい 行為 こうい を防止 ぼうし できると考 かんが えられています。不正 ふせい 行為 こうい によるリスクを回避 かいひ するには、コーポレートガバナンスが効果 こうか 的 てき に機能 きのう し、公正 こうせい に運営 うんえい することが重要 じゅうよう です。
(2)サステナビリティへの取 と り組 く みを促進 そくしん させる
コーポレートガバナンスに求 もと められる役割 やくわり は、企業 きぎょう と社会 しゃかい とのつながりが挙 あ げられます。つまり、コーポレートガバナンスは企業 きぎょう のサステナビリティを重視 じゅうし する従業 じゅうぎょう 員 いん ・顧客 こきゃく ・取引 とりひき 先 さき ・消費 しょうひ 者 しゃ との関係 かんけい 性 せい を改善 かいぜん する役割 やくわり を担 にな います。これらの視点 してん は、コーポレートガバナンスのルール・指針 ししん である「コーポレートガバナンス・コード」が2021年 ねん に改訂 かいてい されたことで高 たか まりました(改訂 かいてい の詳 くわ しい内容 ないよう は5.の「コーポレートガバナンス・コードは2021年 ねん に改訂 かいてい 」で解説 かいせつ します)。
例 れい として、ドイツの自動車 じどうしゃ メーカーであるフォルクスワーゲンが2015年 ねん に起 お こした不祥事 ふしょうじ を紹介 しょうかい します。同社 どうしゃ は排 はい ガス検査 けんさ の際 さい に、装置 そうち の使用 しよう によってディーゼル車 しゃ の排出 はいしゅつ 物質 ぶっしつ を不正 ふせい に低 ひく く見 み せていたことが、アメリカの環境 かんきょう 保護 ほご 庁 ちょう により発覚 はっかく しました。
これはグリーンウォッシング(実態 じったい がないにもかかわらず、環境 かんきょう に配慮 はいりょ していると良 よ く見 み せかける行為 こうい )に関 かん する事例 じれい として知 し られています。フォルクスワーゲンに対 たい する株主 かぶぬし からのプレッシャーも、この事件 じけん の原因 げんいん として考 かんが えられています。結果 けっか として、フォルクスワーゲンは数 すう 百 ひゃく 億 おく ドルの罰金 ばっきん を支払 しはら い、経営 けいえい 体制 たいせい も見直 みなお されました(参照 さんしょう :Volkswagen’s Greenwashing Backfires: The Road to Redemption〈フォルクスワーゲンのグリーンウォッシュが裏目 うらめ に: 汚名 おめい 返上 へんじょう への道 みち 〉|Sage knowledge )。
つまり、短期 たんき 的 てき な視点 してん で株主 かぶぬし ばかり重視 じゅうし すると、サステナビリティ課題 かだい への対応 たいおう が不誠実 ふせいじつ になる恐 おそ れがあります。企業 きぎょう 経営 けいえい にとっても大 おお きな損失 そんしつ につながる可能 かのう 性 せい があります。上記 じょうき の事例 じれい では、サステナビリティの課題 かだい 対応 たいおう はもはやコーポレートガバナンスとして取 と り組 く む必要 ひつよう 性 せい があることを示 しめ しています。
(3)利益 りえき をステークホルダーに還元 かんげん する
コーポレートガバナンスは、単 たん に株主 かぶぬし 価値 かち 最大 さいだい 化 か だけではなく、ステークホルダーへの利益 りえき 還元 かんげん につながる視点 してん も重要 じゅうよう です。ステークホルダーとは企業 きぎょう 活動 かつどう によって影響 えいきょう を与 あた える人 ひと を指 さ し、消費 しょうひ 者 しゃ や従業 じゅうぎょう 員 いん のみならず株主 かぶぬし なども含 ふく まれます。
企業 きぎょう の意思 いし 決定 けってい プロセスにサステナビリティの課題 かだい を取 と り入 い れることで、事業 じぎょう 活動 かつどう に及 およ ぼす環境 かんきょう や社会 しゃかい への影響 えいきょう を考慮 こうりょ できるようになります。これは短期 たんき 志向 しこう から脱却 だっきゃく し、長期 ちょうき 的 てき な視点 してん をもって企業 きぎょう 活動 かつどう に取 と り組 く むためです。
昨今 さっこん のESG投資 とうし のように、機関 きかん 投資 とうし 家 か が受託 じゅたく 者 しゃ 責任 せきにん のもとで長期 ちょうき 的 てき 視点 してん から環境 かんきょう ・社会 しゃかい ・ガバナンス要因 よういん を組 く み込 こ んで運用 うんよう する動 うご きが活発 かっぱつ になっています。そのため、企業 きぎょう はステークホルダーとの信頼 しんらい 関係 かんけい を構築 こうちく すべく、透明 とうめい 性 せい あるESG情報 じょうほう 開示 かいじ をおこなう必要 ひつよう があります。
うわべだけの情報 じょうほう 開示 かいじ ではなく、透明 とうめい 性 せい を確保 かくほ した情報 じょうほう 開示 かいじ もコーポレートガバナンスにおける要素 ようそ の一 ひと つです。このようなESG投資 とうし やESG情報 じょうほう 開示 かいじ の流 なが れは、長期 ちょうき 的 てき に多 おお くのステークホルダーに利益 りえき をもたらす可能 かのう 性 せい を生 う み出 だ すでしょう。
3.コーポレートガバナンスの実効 じっこう 性 せい を高 たか めるために
企業 きぎょう が社会 しゃかい のために正 ただ しい意思 いし 決定 けってい をおこなうために、コーポレートガバナンスの実効 じっこう 性 せい を高 たか める三 みっ つのポイントを示 しめ します。
(1)監査 かんさ と透明 とうめい 性 せい の強化 きょうか
企業 きぎょう が不健全 ふけんぜん な状況 じょうきょう (不祥事 ふしょうじ など)におちいったとき、しっかり運営 うんえい されているかを確認 かくにん することがコーポレートガバナンスの要求 ようきゅう 事項 じこう となります。企業 きぎょう の職務 しょくむ 執行 しっこう や会計 かいけい 報告 ほうこく をチェックする役割 やくわり として、外部 がいぶ の監査 かんさ 人 じん が導入 どうにゅう されました。外部 がいぶ の監査 かんさ 人 じん が入 はい ることで、企業 きぎょう の動 うご きをより客観 きゃっかん 的 てき にチェックできるようになります。
2014年 ねん には「監査 かんさ 等 とう 委員 いいん 会 かい 」という新 あたら しい制度 せいど も導入 どうにゅう されました。監査 かんさ 委員 いいん 会 かい の導入 どうにゅう により、外部 がいぶ の監査 かんさ 人 じん がより大 おお きな発言 はつげん 権 けん を持 も ちます。このような変化 へんか が生 う まれた背後 はいご には、企業 きぎょう の透明 とうめい 性 せい を向上 こうじょう させる意図 いと があります。「企業 きぎょう がどう動 うご いているか」「どのような決定 けってい をしているか」を明確 めいかく にすれば、問題 もんだい が起 お きたときにいち早 はや く対応 たいおう できるようになります(参照 さんしょう :監査 かんさ 役 やく 制度 せいど 監査 かんさ 役 やく とは|日本 にっぽん 監査 かんさ 役 やく 協会 きょうかい )。
(2)機関 きかん 投資 とうし 家 か の責任 せきにん
株主 かぶぬし のなかでも、多 おお くの資金 しきん を運用 うんよう している機関 きかん 投資 とうし 家 か がとるべき行動 こうどう についての指針 ししん も求 もと められています。投資 とうし 家 か がどの企業 きぎょう に投資 とうし するかを決 き める際 さい には、その企業 きぎょう が良 よ いマネジメントをしているかどうか、企業 きぎょう マネジメントの健全 けんぜん 性 せい を図 はか る「目的 もくてき を持 も った対話 たいわ (エンゲージメント)」が重要 じゅうよう です。
このエンゲージメントによって、投資 とうし 家 か は企業 きぎょう を支援 しえん し、企業 きぎょう はより良 よ いコーポレートガバナンスを実現 じつげん できるといわれています。機関 きかん 投資 とうし 家 か と企業 きぎょう は車 くるま の両輪 りょうりん のような関係 かんけい であると考 かんが えられており、双方 そうほう が良好 りょうこう な関係 かんけい を築 きず くことで効果 こうか 的 てき なコーポレートガバナンスを確保 かくほ できます(参照 さんしょう :「責任 せきにん ある機関 きかん 投資 とうし 家 か 」の諸 しょ 原則 げんそく ≪日本 にっぽん 版 ばん スチュワードシップ・コード≫|金融 きんゆう 庁 ちょう )。
(3)内部 ないぶ 統制 とうせい の仕組 しく みを整 ととの える
コーポレートガバナンスを効果 こうか 的 てき に実行 じっこう するには、企業 きぎょう 内 ない のルールやチェックの仕組 しく みを整 ととの えるための内部 ないぶ 統制 とうせい が重要 じゅうよう です。まず、企業 きぎょう は適切 てきせつ なルールを作 つく り、従業 じゅうぎょう 員 いん はそれに順 じゅん ずる必要 ひつよう があります。「誰 だれ が何 なに をして」「どのようにして」「いつまでにするのか」を明確 めいかく にすることで、企業 きぎょう の目的 もくてき を達成 たっせい できるようにします。
次 つぎ に、企業 きぎょう は作成 さくせい したルールが守 まも られているかを定期 ていき 的 てき にチェックする仕組 しく みを設 もう けます。ルールが守 まも られていない場合 ばあい や問題 もんだい が発生 はっせい した場合 ばあい には、解決 かいけつ 方法 ほうほう を考 かんが えて実行 じっこう することが大切 たいせつ です。
さらに、誰 だれ が何 なん の責任 せきにん を持 も っているのか、経営 けいえい 陣 じん や従業 じゅうぎょう 員 いん の責務 せきむ を明確 めいかく にすることで企業 きぎょう の運営 うんえい がスムーズに進 すす みます。もし何 なに か問題 もんだい が起 お きたとしても、どこで間違 まちが ったのかを見 み つけて、その人 ひと が責任 せきにん を取 と って問題 もんだい を解決 かいけつ できます。
この内部 ないぶ 統制 とうせい の仕組 しく みにより、企業 きぎょう はルールやチェックの仕組 しく みが適切 てきせつ かつ効果 こうか 的 てき かどうかを確認 かくにん でき、コーポレートガバナンスの実効 じっこう 性 せい を高 たか められます(参考 さんこう 文献 ぶんけん :松田 まつだ 千恵子 ちえこ 著 ちょ 『サステナブル経営 けいえい とコーポレートガバナンスの進化 しんか 』p.51 日 にち 経 けい BP 2021)。
4.コーポレートガバナンス・コードと基本 きほん 原則 げんそく
コーポレートガバナンス・コードとは、企業 きぎょう 経営 けいえい を健全 けんぜん にするためのルールや指針 ししん のことで、2015年 ねん に金融 きんゆう 庁 ちょう により初 はじ めて導入 どうにゅう されました。コーポレートガバナンス・コードの基本 きほん 原則 げんそく にもとづく具体 ぐたい 的 てき な取 と り組 く みは以下 いか の五 いつ つがあります。
コーポレートガバナンス・コードの基本 きほん 原則 げんそく
具体 ぐたい 的 てき な取 と り組 く み
株主 かぶぬし の権利 けんり ・平等 びょうどう 性 せい の確保 かくほ
企業 きぎょう が新 あたら しい株 かぶ を売 う るときは、現在 げんざい の株主 かぶぬし に対 たい して購入 こうにゅう の機会 きかい を優先 ゆうせん 的 てき かつ公平 こうへい に提供 ていきょう することなど
株主 かぶぬし 以外 いがい のステークホルダーとの適切 てきせつ な協力 きょうりょく
新 あたら しい工場 こうじょう を建設 けんせつ する際 さい には、地域 ちいき 住民 じゅうみん との対話 たいわ の場 ば を設 もう けたり、従業 じゅうぎょう 員 いん に働 はたら きやすい職場 しょくば 環境 かんきょう を提供 ていきょう したりすることなど
適切 てきせつ な情報 じょうほう 開示 かいじ と透明 とうめい 性 せい の確保 かくほ
財務 ざいむ 状況 じょうきょう の法定 ほうてい 開示 かいじ 、適切 てきせつ な開示 かいじ 、リスク開示 かいじ やリスク情報 じょうほう 、ガバナンス情報 じょうほう の提供 ていきょう など
取締役 とりしまりやく 会 かい の責任 せきにん
企業 きぎょう 戦略 せんりゃく の方向 ほうこう 性 せい を示 しめ し、経営 けいえい 陣 じん の適切 てきせつ なリスクテイク(危険 きけん を承知 しょうち したうえで行動 こうどう すること)を支 ささ える環境 かんきょう を整備 せいび することなど
株主 かぶぬし との対話 たいわ
企業 きぎょう が将来 しょうらい の計画 けいかく を株主 かぶぬし に伝 つた え、株主 かぶぬし からの意見 いけん を聞 き くなどのコミュニケーションを図 はか ること
企業 きぎょう には、これら基本 きほん 原則 げんそく にもとづいた企業 きぎょう 経営 けいえい を実践 じっせん していくことが求 もと められています。
5.コーポレートガバナンス・コードは2021年 ねん に改訂 かいてい
2021年 ねん にコーポレートガバナンス・コードが改訂 かいてい されました。この改訂 かいてい は、サステナビリティと企業 きぎょう 価値 かち 向上 こうじょう を意識 いしき し、株主 かぶぬし とその他 た のステークホルダーの関係 かんけい 性 せい を考慮 こうりょ しながら、企業 きぎょう の中長期 ちゅうちょうき 的 てき な持続 じぞく 的 てき 成長 せいちょう を目指 めざ すことを意図 いと しています。
主 おも な変更 へんこう 点 てん は大 おお きく二 ふた つあります。まず、経営 けいえい トップが取締役 とりしまりやく 会 かい の役割 やくわり を効果 こうか 的 てき に果 は たすための変更 へんこう です。具体 ぐたい 例 れい として独立 どくりつ 社外 しゃがい 取締役 とりしまりやく の人数 にんずう および比率 ひりつ 、指名 しめい 委員 いいん 会 かい ・報酬 ほうしゅう 委員 いいん 会 かい の設置 せっち 、経営 けいえい 戦略 せんりゃく の明示 めいじ などが挙 あ げられます。
次 つぎ に、企業 きぎょう の中核 ちゅうかく 人材 じんざい の多様 たよう 性 せい を確保 かくほ するため、女性 じょせい や外国 がいこく 人 じん 、および中途 ちゅうと 採用 さいよう 者 しゃ の管理 かんり 職 しょく での登用 とうよう が盛 も り込 こ まれました。また、企業 きぎょう は財務 ざいむ 的 てき 価値 かち だけでなく、地球 ちきゅう 環境 かんきょう 問題 もんだい ・人権 じんけん ・消費 しょうひ 者 しゃ 課題 かだい などの社会 しゃかい 的 てき 課題 かだい も考慮 こうりょ すべきだと示 しめ されています。特 とく にプライム市場 いちば に上場 じょうじょう している企業 きぎょう においては、気候 きこう 関連 かんれん の情報 じょうほう 開示 かいじ が求 もと められるようになりました(参照 さんしょう :「コーポレートガバナンス・コードと投資 とうし 家 か と企業 きぎょう の対話 たいわ ガイドラインの改訂 かいてい について」の公表 こうひょう について|金融 きんゆう 庁 ちょう )。
6.サステナビリティ時代 じだい に求 もと められるコーポレートガバナンスの論点 ろんてん
サステナビリティ時代 じだい におけるコーポレートガバナンスの論点 ろんてん について、主 おも に三 みっ つ考 かんが えたいと思 おも います。上場 じょうじょう 企業 きぎょう のみならず、非 ひ 上場 じょうじょう 企業 きぎょう や中小 ちゅうしょう 企業 きぎょう においても重要 じゅうよう な論点 ろんてん であるため、どのように取 と り組 く むべきかの示唆 しさ が得 え られます。
(1)株主 かぶぬし 利益 りえき とサステナビリティは両立 りょうりつ できるか?
ダノン(飲食 いんしょく 料 りょう 業界 ぎょうかい の多 た 国籍 こくせき 企業 きぎょう )の前 ぜん CEOであったエマニュエル・ファベール氏 し は、サステナビリティ経営 けいえい に熱心 ねっしん でした。しかし、2021年 ねん に取締役 とりしまりやく 会 かい によって解任 かいにん されています。ファベール氏 し は、健康 けんこう 食品 しょくひん への投資 とうし や持続 じぞく 可能 かのう なビジネスモデルを推進 すいしん していました。一方 いっぽう で、これらの施策 しさく によりダノンの売 う り上 あ げおよび利益 りえき マージンの成長 せいちょう は一部 いちぶ の競合 きょうごう 他社 たしゃ を下回 したまわ る結果 けっか となります。
彼 かれ の解任 かいにん は、主 おも に業績 ぎょうせき 不振 ふしん と株主 かぶぬし からの圧力 あつりょく が原因 げんいん でした。しかし、この事例 じれい はサステナビリティ経営 けいえい が必 かなら ずしも株主 かぶぬし から受 う け入 い れられなかったわけではありません。むしろ企業 きぎょう の業績 ぎょうせき 不振 ふしん のほうが解任 かいにん の主 おも な要因 よういん であった可能 かのう 性 せい が高 たか いと指摘 してき されています。
この事例 じれい からは、サステナビリティ経営 けいえい の採用 さいよう と株主 かぶぬし 価値 かち との関連 かんれん 性 せい のほか、企業 きぎょう 業績 ぎょうせき と両立 りょうりつ する重要 じゅうよう 性 せい がわかります。加 くわ えて、株主 かぶぬし とのコミュニケーションを強化 きょうか する必要 ひつよう 性 せい も、この事例 じれい の重要 じゅうよう な論点 ろんてん の一 ひと つです(参照 さんしょう :Danone board ousts boss Faber after activist pressure〈ダノン取締役 とりしまりやく 会 かい 、アクティビストの圧力 あつりょく を受 う けCEOファベール氏 し を更迭 こうてつ 〉|REUTERS )。
(2)長期 ちょうき 的 てき なコミットメントを持 も つ株主 かぶぬし の存在 そんざい
株主 かぶぬし が企業 きぎょう を規律 きりつ 付 つ けるには、企業 きぎょう と株主 かぶぬし 双方 そうほう の目的 もくてき が一致 いっち していることが重要 じゅうよう です。企業 きぎょう の安定 あんてい 性 せい を保 たも つべく、創業 そうぎょう 家 か 一族 いちぞく によるアンカー株主 かぶぬし としての役割 やくわり が必要 ひつよう とされています。長期 ちょうき 的 てき な目的 もくてき や戦略 せんりゃく づくりに注視 ちゅうし できると考 かんが えられているためです。
しかし、日本 にっぽん では創業 そうぎょう 家 か 一族 いちぞく による大 だい 規模 きぼ な上場 じょうじょう 企業 きぎょう の支配 しはい 権 けん はほとんど存在 そんざい せず、財閥 ざいばつ 家族 かぞく による株式 かぶしき 所有 しょゆう は第 だい 2次 じ 世界 せかい 大戦 たいせん 後 ご に解体 かいたい されました。
このような点 てん から、特 とく に日本 にっぽん では年金 ねんきん 積立 つみたて 金 きん 管理 かんり 運用 うんよう 独立 どくりつ 行政 ぎょうせい 法人 ほうじん (GPIF)が機関 きかん 投資 とうし 家 か として重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たしており、ESG投資 とうし を積極 せっきょく 的 てき に展開 てんかい しています。また、長期 ちょうき 保有 ほゆう 株主 かぶぬし の議決 ぎけつ 権 けん を相対 そうたい 的 てき に高 たか めることで、株主 かぶぬし による企業 きぎょう への長期 ちょうき 的 てき なコミットメントが期待 きたい されます(参考 さんこう 文献 ぶんけん :コリン・メイヤー 著 ちょ 『株式会社 かぶしきがいしゃ 規範 きはん のコペルニクス的 てき 転回 てんかい ―脱 だつ 株主 かぶぬし ファーストの生存 せいぞん 戦略 せんりゃく 』p.230 東洋経済新報社 とうようけいざいしんぽうしゃ 2021)。
(3)中小 ちゅうしょう 企業 きぎょう におけるコーポレートガバナンスの実践 じっせん
サステナビリティ経営 けいえい の視点 してん からも、中小 ちゅうしょう 企業 きぎょう にはコーポレートガバナンスが求 もと められます。コーポレートガバナンスは、企業 きぎょう のリスク管理 かんり とコンプライアンスの強化 きょうか に加 くわ え、サスビリティ経営 けいえい の促進 そくしん を可能 かのう にするのがポイントです。さらに、コーポレートガバナンスは企業 きぎょう の透明 とうめい 性 せい と責任 せきにん を高 たか めるため、投資 とうし 家 か や金融 きんゆう 機関 きかん からの信頼 しんらい を得 え られます。
これらの理由 りゆう から、中小 ちゅうしょう 企業 きぎょう にもコーポレートガバナンスが求 もと められ、サステナビリティ経営 けいえい の実践 じっせん においても重要 じゅうよう な役割 やくわり を果 は たします(参照 さんしょう :Handley, K., & Molloy, C. (2022). SME corporate governance: a literature review of informal mechanisms for governance. Meditari Accountancy Research, 30(7), 310-333 )。
7.コーポレートガバナンスにおける経営 けいえい 者 しゃ の役割 やくわり
コーポレートガバナンスは企業 きぎょう の健全 けんぜん な運営 うんえい を保証 ほしょう する仕組 しく みであり、経営 けいえい 者 しゃ の役割 やくわり と責任 せきにん を明確 めいかく にするものです。また、経営 けいえい 者 しゃ は単 たん に企業 きぎょう の利益 りえき を追求 ついきゅう するだけではなく、社会 しゃかい 的 てき な役割 やくわり も重要 じゅうよう で、その行動 こうどう は企業 きぎょう や多 おお くの関係 かんけい 者 しゃ に影響 えいきょう を与 あた えます。コーポレートガバナンスは、経営 けいえい 者 しゃ の行動 こうどう を適切 てきせつ にチェックし、規律 きりつ をもたらす役割 やくわり を果 は たします。
重要 じゅうよう な点 てん は、企業 きぎょう 活動 かつどう が多様 たよう なステークホルダー(例 たと えば従業 じゅうぎょう 員 いん ・取引 とりひき 先 さき ・地域 ちいき 社会 しゃかい ・環境 かんきょう )や将来 しょうらい の世代 せだい に与 あた える影響 えいきょう を考慮 こうりょ し、経営 けいえい 者 しゃ が社会 しゃかい 的 てき なコミットメントを持 も って行動 こうどう することです。つまり、経営 けいえい 者 しゃ がステークホルダーとの間 あいだ で良好 りょうこう な関係 かんけい を築 きず き、透明 とうめい 性 せい と責任 せきにん を確保 かくほ することが、コーポレートガバナンスに求 もと められます。これらがうまく機能 きのう すれば、サステナビリティ時代 じだい における「企業 きぎょう 価値 かち 向上 こうじょう 」と「ステークホルダーの利益 りえき 」の両立 りょうりつ が実現 じつげん できます(参考 さんこう 文献 ぶんけん :伊丹 いたみ 敬之 たかゆき 、 加護 かご 野 の 忠男 ただお 著 ちょ 『ゼミナール経営 けいえい 学 がく 入門 にゅうもん 〈第 だい 3版 はん 〉』日本経済新聞社 にほんけいざいしんぶんしゃ 2003)。
(編集 へんしゅう 協力 きょうりょく スタジオユリグラフ・高橋 たかはし 純 じゅん )
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