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廃棄貝殻で作ったエコプラスチックをヘルメットに 社会貢献を目指すメーカーの挑戦:朝日新聞SDGs ACTION!
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廃棄はいき貝殻かいがらつくったエコプラスチックをヘルメットに 社会しゃかい貢献こうけん目指めざすメーカーの挑戦ちょうせん

廃棄貝殻で作ったエコプラスチックをヘルメットに 社会貢献を目指すメーカーの挑戦
甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう企画きかく開発かいはつ南原なんばら徹也てつやさん(甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう提供ていきょう
甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう企画きかく開発かいはつ南原なんばら徹也てつや

廃棄はいきホタテ貝殻かいがらさい利用りようしたエコプラスチックでつく環境かんきょう配慮はいりょがたヘルメット「HOTAMET(ホタメット)」が話題わだいんでいる。大阪おおさか東大阪ひがしおおさかのプラスチックメーカー、甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう北海道ほっかいどう猿払さるふつむらとタッグをみ、広告こうこく会社かいしゃのTBWA HAKUHODO、スタートアップ・スタジオのquantumと共同きょうどう開発かいはつした。一般いっぱん発売はつばい間近まぢかせまるヘルメットの開発かいはつ経緯けいいについて、甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう企画きかく開発かいはつ南原なんばら徹也てつやさんにいた。(ききて 編集へんしゅう池田いけだ美樹みき

なくすのではなく「う」

——プラスチックという素材そざいとおして社会しゃかい影響えいきょうあたえる活動かつどう積極せっきょくてきにおこない、発信はっしんしています。なにがきっかけでしたか。

わたしたちは東大阪ひがしおおさかにあるまち工場こうじょうで、祖父そふが1969ねん会社かいしゃおこし、現在げんざいちち社長しゃちょうつとめています。プラスチックの部品ぶひんつく事業じぎょうをずっとおこなってきましたが、すうねんまえから急速きゅうそくに、社会しゃかい環境かんきょう配慮はいりょがたわりはじめました。

プラスチックを使つかうのはもうダメだ、といった論調ろんちょうたかまり、なかからプラスチックをなくそうという議論ぎろんまでてきていました。

わたしたちはプラスチックがどういった場所ばしょ使つかわれているかをっているので、現在げんざい生活せいかつでプラスチックとえんって生活せいかつするのはむずかしいということがわかっていました。どういうふうにっていくかをかんがえるほうがいのではないかとおもっていたのです。

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職人しょくにんたすけがないとものづくりはできない。協力きょうりょく関係かんけい大切たいせつ」という南原なんばらさん(甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう提供ていきょう

じつ大量たいりょう廃棄はいきプラスチックのさい利用りようは、すうじゅうねんまえからおこなわれてきました。ただ、さい利用りようひん粗悪そあくひんだという認識にんしきがあり、普段ふだんえないような部品ぶひんなどでしか使つかわれてこなかったので、消費しょうひしゃにはあまりつたわっていなかったかもしれません。

そこで、もっと環境かんきょう配慮はいりょしたプラスチックをつくることはできないかとかんがはじめたのがそもそものきっかけです。

ホタテの廃棄はいき貝殻かいがら使つかったしん素材そざい開発かいはつ

——ホタテの廃棄はいき貝殻かいがら使つかったあたらしい素材そざい「カラスチック」を開発かいはつされた経緯けいいおしえてください。

貝殻かいがらまえに、まずたまごから着目ちゃくもくしました。日本にっぽんでは毎年まいとしやく26まんtのたまごから廃棄はいきされています。炭酸たんさんカルシウムを主成分しゅせいぶんとするたまごからをプラスチックにぜることで、素材そざい強度きょうど向上こうじょうし、環境かんきょう負荷ふか軽減けいげんできるとかんがえました。

実際じっさいにやってみると、面白おもしろ風合ふうあいのプラスチックができました。具体ぐたいてきには、からいろによって出来上できあがるプラスチックのいろわるんです。これは面白おもしろいとおもってSNSで発信はっしんしたところ、おおきな反響はんきょうがありました。ただ、たまごからぜたプラスチックをつくっている企業きぎょうはほかにもあったのです。

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プロパンガスのキャップに利用りようされた卵殻らんかくキャップシール(甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう提供ていきょう

もっとオリジナリティーを追求ついきゅうしたいとかんがえていたこともあり、SNSへの投稿とうこうがきっかけでったさまざまなひとはなしくうちに、ホタテの大量たいりょう生産せいさんである北海道ほっかいどうで、加工かこう過程かていしょうじるから処理しょりこまっているということをりました。一部いちぶはリサイクルされているものの、だい部分ぶぶん廃棄はいきされており、そのりょう年間ねんかん20まんtにのぼるというのです。

ホタテのから主成分しゅせいぶんたまご同様どうよう炭酸たんさんカルシウムですから、プラスチックとぜることができるのではないかとかんがえ、3ねんまえから具体ぐたいてきみをはじめました。まずは実験じっけんてきつくってみようとかんがえ、廃棄はいきするホタテ貝殻かいがら提供ていきょうしてくれるところをさがはじめたのですが、そのとき出会であったのが、SNSとう積極せっきょくてき発信はっしんをしている北海道ほっかいどう猿払さるふつむらでした。

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猿払さるふつむら廃棄はいきホタテ貝殻かいがらあつめる南原なんばらさん(甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう提供ていきょう

村役場むらやくば担当たんとうしゃにSNSをつうじて連絡れんらくり、現地げんちって貝殻かいがらあつめたり洗浄せんじょうしたりするところからはじめました。最初さいしょ遠巻とおまきにていたむらひとたちも次第しだい手伝てつだってくれるようになり、余剰よじょう貝殻かいがら提供ていきょう支援しえんけることができることになったので、大阪大学おおさかだいがく宇山うやまひろし教授きょうじゅともしん素材そざい開発かいはつ着手ちゃくしゅしました。

そして出来上できあがったのがホタテの貝殻かいがらはいプラスチックをわせたしん素材そざい「カラスチック」です。

新品しんぴんのプラスチックを100%利用りようするのと比較ひかくして、最大さいだいやく36%のCO2が削減さくげんできる、強度きょうど弾性だんせいりつ)がやく33%向上こうじょうするなど、あたらしいエコプラスチックを開発かいはつすることができました。

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「カラスチック」のペレット(甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう提供ていきょう

共同きょうどう開発かいはつ飛躍ひやくしたアイデア

——「カラスチック」でつくるヘルメット「HOTAMET」は、TBWA HAKUHODOとの共同きょうどう開発かいはつです。プロジェクトはどのようにすすめたのでしょうか。

TBWA HAKUHODOのほうから、カラスチックを使つかって一緒いっしょになにかをやりましょうという連絡れんらくをいただいたのがきっかけです。日本にっぽん震災しんさいおおいので防災ぼうさい用品ようひんつくりたいというおもいがわたしにあったこともあり、貝殻かいがらはもともとかいまもるものだという発想はっそうから、ヘルメットというアイデアがてきました。

スタートアップ・スタジオであるquantumがプロダクトデザインを担当たんとうし、「生物せいぶつ模倣もほう(バイオミミクリー)」のかんがかたもとづき、ホタテかい構造こうぞう模倣もほうした特殊とくしゅなリブ構造こうぞうをデザインにれることになりました。

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HOTAMETの最終さいしゅう製品せいひんイメージ(甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう提供ていきょう

このデザインをれたことで、強度きょうどすといった実用じつようてきなメリットがありましたし、のわかりやすさというめんでもとてもかったとおもっています。ネーミングも「HOTAMET」ですし、一目いちもくなにかい関係かんけいしているんだろうなとわかりますよね。

また、わたしにとっては共同きょうどう開発かいはつという経験けいけんがとてもまなびになりました。わたしたちの会社かいしゃだけでできることはかぎられています。しかし、自社じしゃにない部分ぶぶんをそのみちのプロにおぎなってもらうことでおおきく発想はっそうひろがりますし、スピードもアップすることがわかりました。

おおきな会社かいしゃも、ちいさな会社かいしゃも、実働じつどうするのは結局けっきょくひとなんですよね。複数ふくすう企業きぎょうからなるプロジェクトチームをひとつの仮想かそう企業きぎょうととらえて結果けっかしていく方法ほうほうが、わたしたちのようなちいさな会社かいしゃっているのではないかというづきがありました。

——HOTAMETは大阪おおさか関西かんさい万博ばんぱく実施じっし主体しゅたいである「2025ねん日本にっぽん国際こくさい博覧はくらんかい協会きょうかい」が推進すいしんする「Co-Design Challenge」プログラムに採択さいたくされ、「大阪おおさか関西かんさい万博ばんぱく」の防災ぼうさいよう公式こうしきヘルメットの一種いっしゅとして導入どうにゅうされる予定よていです。

いただいた機会きかいで、「廃棄はいきぶつをもっと使つかいませんか」という提案ていあんへのひとつの選択肢せんたくしを、なかしめしたいとかんがえています。

じつはカラスチックやHOTAMETについては海外かいがいからのわせもおおいんです。世界中せかいじゅううみのある地域ちいき廃棄はいき貝殻かいがら問題もんだいがありますので、こういう解決かいけつ方法ほうほうがあるということをひろげていきたいとおもいます。

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HOTAMETを着用ちゃくようする北海道ほっかいどう猿払さるふつむら漁師りょうしたち(甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう提供ていきょう

社会しゃかい課題かだい解決かいけつするものづくりを

——プラスチックメーカーという家業かぎょうつうじて社会しゃかい課題かだい解決かいけつしたいという南原なんばらさんのおもいはどこからまれてきているのでしょうか。

わたし大学だいがく卒業そつぎょうしてゼネコンではたらき、2020ねん実家じっかもどってきたんですけれど、そのとき社会しゃかいてきなにいことをしたいとおもっていたわけではありませんでした。どちらかというと、社会しゃかい課題かだい解決かいけつ会社かいしゃ理念りねんかかげるようなことは苦手にがてで、そういう会社かいしゃはただっているだけじゃないのか、とすらおもっていました。

家業かぎょう手伝てつだうことになって、はじめはもうかることをしなくちゃいけないというおもいで、さまざまな事業じぎょうかんがえていました。しかしなかなかうまくいかなかったんです。わたしたちは15にんちいさな会社かいしゃですが、下請したうけをするだけではなくて、自分じぶんたちでものづくりをしたいというおもいがありました。

転機てんきおとずれたのがコロナです。ニュースで医療いりょう従事じゅうじしゃ方々かたがた奮闘ふんとうり、いのちがけで業務ぎょうむにあたられていることに尊敬そんけいねんいだきました。

できるだけ会社かいしゃ出費しゅっぴおさえておかねのこしておかなくてはならなかったのですが、わたしたちもメーカーとしてできることをしたいと、大学だいがく共同きょうどうで20まん以上いじょうのフェースシールドをつくり、全国ぜんこく病院びょういん寄付きふしました。

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フェースシールドの寄付きふ活動かつどうは、「東大阪ひがしおおさかCSR経営けいえい表彰ひょうしょう地域ちいき社会しゃかい部門ぶもん優秀ゆうしゅうしょう受賞じゅしょうした(甲子きのえね化学かがく工業こうぎょう提供ていきょう

そうすると、感謝かんしゃこえをいただいたり、にこういうものをつくれないかという依頼いらいたりするようになりました。社会しゃかいのため、というおもいだけでおこなったことが、結果けっかとしてさまざまなビジネスの機会きかいんだことで、こういうかんがかたをすればいのだと気付きづけたのです。

それから、わたしたちの会社かいしゃ方針ほうしんが「社会しゃかい課題かだい解決かいけつするものづくりをする」という方向ほうこうわっていきました。

もちろん、そんはしないようにそろばんをはじきながら事業じぎょうをおこなっているのですが、社会しゃかい課題かだい解決かいけつんでいると、まわまわって、最終さいしゅうてきには会社かいしゃ利益りえきにつながるのではないかとおもうようになりました。これからも、そうしんじてつづけていくつもりです。

 池田美樹
池田いけだ美樹みき ( いけだ ・みき )
朝日新聞あさひしんぶんSDGs ACTION! 契約けいやく編集へんしゅうしゃ株式会社かぶしきがいしゃマガジンハウスで『Olive』『Hanako』『anan』『クロワッサン』などの雑誌ざっし編集へんしゅうしゃ米国べいこくテック会社かいしゃのニュース編集へんしゅうしゃてフリーランスに。ウェルビーイング、テクノロジー、女性じょせいはたらかたたびなどをおも取材しゅざいテーマとする。
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