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サプライチェーンの関係者の協働による持続可能な養殖業の実現 WWFと考える~SDGsの実践~【16】:朝日新聞SDGs ACTION!
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サプライチェーンの関係かんけいしゃきょうはたらけによる持続じぞく可能かのう養殖ようしょくぎょう実現じつげん WWFとかんがえる~SDGsの実践じっせん~【16】

サプライチェーンの関係者の協働による持続可能な養殖業の実現 WWFと考える~SDGsの実践~【16】
エビ養殖ようしょく生産せいさんしゃほうとミサヤミトラしゃ日本生協連にほんせいきょうれん、WWFインドネシア、WWFジャパンのプロジェクト関係かんけいしゃ © WWF Indonesia
WWFジャパン/吉田よしだまこと

いまひろ認識にんしきされるようになったSDGs。その達成たっせい期限きげんとされる2030ねんまでのこされた時間じかんながくありません。目標もくひょう達成たっせいのためにいまなにもとめられているのか。そこにかかわるビジネスのありかたは、今後こんごどう変化へんかしていくのか。連載れんさいとウェビナーで展開てんかいするほんシリーズでは、国際こくさい環境かんきょう保全ほぜん団体だんたいWWFジャパン(世界せかい自然しぜん保護ほご基金ききんジャパン)が、とくにビジネスにおいて重視じゅうしすべき、SDGs達成たっせいつうじる視点してんみを紹介しょうかいします。

著者_吉田誠さん
吉田よしだまこと(よしだ・まこと)
WWFジャパン海洋かいよう水産すいさんグループ所属しょぞく南米なんべい東南とうなんアジア、中国ちゅうごくなどで、日本にっぽん輸入ゆにゅう消費しょうひしている水産物すいさんぶつ(シーフード)の持続じぞく可能かのう生産せいさんと、現地げんち自然しぜん保護ほご活動かつどう支援しえん担当たんとう海外かいがいのWWFスタッフとも協力きょうりょくし、おおくの生物せいぶついきづくうみ自然しぜんと、漁業ぎょぎょう養殖ようしょくぎょう流通りゅうつう消費しょうひのサプライチェーンをむすんだ視点してん活動かつどうむ。

【おらせ】
この記事きじ筆者ひっしゃ吉田よしだまことさんと、日本にっぽん生活協同組合せいかつきょうどうくみあい連合れんごうかい ブランド戦略せんりゃく本部ほんぶ サステナビリティ戦略せんりゃくしつ水産すいさん担当たんとう)の松本まつもとあきらさんが登壇とうだんするウェビナー「WWFとかんがえる SDGsの実践じっせんセミナー『持続じぞく可能かのうなサプライチェーンへ ~インドネシア・エビ養殖ようしょく事例じれいから』」を、2024ねん6がつ27にち午後ごご2~3、オンラインで開催かいさいします(無料むりょう、アーカイブ配信はいしんあり)。詳細しょうさい告知こくち記事きじをごらんください

重要じゅうようせいたかまる水産物すいさんぶつ持続じぞく可能かのうせい

サケ(サーモン)、マグロ、ブリ、エビ、イカなど、ゆたかなうみめぐみとして、日本にっぽんしょくかせない水産物すいさんぶつ

水産物すいさんぶつ問題もんだいは、乱獲らんかくによる水産すいさん資源しげん悪化あっか養殖ようしょくじょう開発かいはつによる自然しぜん環境かんきょう破壊はかいなどにくわえ、水産すいさんぎょうたずさわる労働ろうどうしゃ人権じんけん侵害しんがい養殖ようしょくぎょう先住民せんじゅうみん地域ちいき住民じゅうみんとの対立たいりつなど、多岐たきにわたり複雑ふくざつしています。

日本にっぽん国内外こくないがいから多種たしゅ多様たよう水産物すいさんぶつ調達ちょうたつしていますが、サプライチェーンが複雑ふくざつで、こうした問題もんだい把握はあくすること自体じたいむずかしい場合ばあいすくなくありません。

そのため、生産せいさん加工かこう流通りゅうつう販売はんばいつうじた一貫いっかんしたトレーサビリティを確保かくほしていくことが、リスク管理かんり観点かんてんからも急務きゅうむです。

そのうえで、サプライチェーンの関係かんけいしゃきょうはたらかし、調達ちょうたつする水産物すいさんぶつ問題もんだい対処たいしょ持続じぞく可能かのう生産せいさんけてんでいくことが、これまで以上いじょう重要じゅうようになっています。

SDGsの目標もくひょう「14. うみゆたかさをまもろう」「12. つくる責任せきにん、つかう責任せきにん」「17. パートナーシップで目標もくひょう達成たっせいしよう」にも貢献こうけんする、持続じぞく可能かのう水産物すいさんぶつ生産せいさんけたサプライチェーンの関係かんけいしゃによるきょうはたらけ事例じれいとして、インドネシアのエビ(ブラックタイガー)養殖ようしょくぎょうみについて紹介しょうかいしたいとおもいます。

持続じぞく可能かのうなエビ養殖ようしょくぎょう必要ひつようせい

「エビ」は、すし、てんぷら、フライなど、なじみのふか水産物すいさんぶつひとつではないでしょうか。

そんな身近みぢか水産物すいさんぶつのエビのだい部分ぶぶん海外かいがいからの輸入ゆにゅうによるものですが、主要しゅよう産地さんちであるインドネシアの養殖ようしょく現場げんばでは、さまざまな問題もんだいしょうじています。

インドネシアは、世界せかい最大さいだいのマングローブ(海岸かいがん河口かこう形成けいせいされるヒルギるいなどの森林しんりん)をゆうしていますが、エビの養殖ようしょくをつくるためにマングローブが伐採ばっさいされてきました。

エビ養殖ようしょくさかんにおこなわれるようになった1980年代ねんだいごろから、その面積めんせきおおきくらし、近年きんねん減少げんしょうつづいています。

また、とく小規模しょうきぼ零細れいさい生産せいさんしゃによるブラックタイガー(エビの一種いっしゅ養殖ようしょくでは、生産せいさんせいひくさも問題もんだいになっています。

不十分ふじゅうぶん管理かんり原因げんいんで、養殖ようしょくでは病気びょうき発生はっせい。これがさらなる生産せいさんせい低下ていかまねき、周辺しゅうへん水域すいいき水質すいしつや、生産せいさんしゃ生計せいけいへの悪影響あくえいきょうなどが懸念けねんされています。

上空から見たインドネシアの沿岸域
上空じょうくうからたインドネシアの沿岸えんがんいき。マングローブりん緑色みどりいろ部分ぶぶん)のおおくがうしなわれ、エビ養殖ようしょくえられています。
© WWF Japan

そこでWWFは、インドネシアで、ブラックタイガー養殖ようしょくぎょう持続じぞく可能かのう生産せいさん目指めざみに着手ちゃくしゅ。2018ねん7がつ開始かいししたスラウェシとう皮切かわきりに、2021ねん7がつにはジャワ島じゃわとうにも活動かつどう展開てんかいし、現地げんちのエビ加工かこう会社かいしゃ同社どうしゃからエビを調達ちょうたつする日本にっぽん生活協同組合せいかつきょうどうくみあい連合れんごうかい日本生協連にほんせいきょうれん)とともに、「インドネシア エビ(ブラックタイガー)養殖ようしょくぎょう改善かいぜんプロジェクト」をすすめてきました。

継続けいぞくしたみがむすび、ジャワ島じゃわとう持続じぞく可能かのうなブラックタイガー養殖ようしょくぎょう実現じつげんすることができましたが、ここにいたるまでにはさまざまな困難こんなんがあり、一筋縄ひとすじなわではいきませんでした。

ブラックタイガー
ブラックタイガー
© WWF Indonesia

ASC認証にんしょう取得しゅとく目指めざ挑戦ちょうせん

プロジェクトで目標もくひょうとしたのが、養殖ようしょくぎょう国際こくさい認証にんしょうである「ASC(水産すいさん養殖ようしょく管理かんり協議きょうぎかい認証にんしょう」の取得しゅとくです。

自然しぜん環境かんきょう労働ろうどうしゃ地域ちいき社会しゃかい配慮はいりょしたASC認証にんしょう基準きじゅんたすことで、持続じぞく可能かのうなブラックタイガー養殖ようしょくぎょう実現じつげん目指めざしてきました。

しかし、ASCのエビ基準きじゅんななつの原則げんそくにもとづく、100をえる要件ようけん構成こうせいされており、これらすべてをたすことは簡単かんたんではありません。

参考さんこう情報じょうほう】ASCエビ基準きじゅん(ASCウェブサイトをもとに作成さくせい
1. くにおよび地域ちいき法律ほうりつ規制きせいへの準拠じゅんきょ
2. 生物せいぶつ多様たようせいおよび生態せいたいけい保全ほぜん
3. 地域ちいき社会しゃかい配慮はいりょした養殖ようしょくじょう運営うんえい
4. 責任せきにんある労働ろうどう環境かんきょうゆうした養殖ようしょくじょう運営うんえい
5. 養殖ようしょくエビの健康けんこう福祉ふくし責任せきにんある管理かんり
6. おやエビおよび養殖ようしょくエビの管理かんり
7. 自然しぜん環境かんきょう保全ほぜんじょう効果こうかてきかつ責任せきにんある方法ほうほうでの資源しげん利用りよう

プロジェクトではこの基準きじゅんにもとづき、生産せいさん方法ほうほう改善かいぜん、エビ養殖ようしょくかんする環境かんきょう影響えいきょう社会しゃかい影響えいきょう評価ひょうか公文書こうぶんしょ取得しゅとく労働ろうどう環境かんきょうかんする資料しりょう作成さくせいといった作業さぎょうなど、幅広はばひろみをおこなってきました。

とりわけ、養殖ようしょく周辺しゅうへんなどでのマングローブの再生さいせいは、生態せいたいけい生物せいぶつ多様たようせい回復かいふく保全ほぜんだけでなく、地域ちいき住民じゅうみん防災ぼうさいげんわざわい炭素たんそ吸収きゅうしゅう貯留ちょりゅうによる気候きこう変動へんどう対策たいさく観点かんてんからも、重要じゅうようせいたかみのひとつです。

しかし、一度いちどうしなわれたものを再生さいせいするのは容易よういではありません。

実際じっさいに、再生さいせいすすめていたマングローブの半分はんぶん以上いじょうが、自然しぜん環境かんきょう人為じんいてき理由りゆうにより活着かっちゃく生存せいぞん)していないことが途中とちゅう確認かくにんされるなど、困難こんなん直面ちょくめんしました。

強い波の影響を受け活着(生存)しなかったマングローブの苗木
つよなみ影響えいきょう活着かっちゃく生存せいぞん)しなかったマングローブの苗木なえぎ
© WWF Indonesia

しかしそうした困難こんなんかてに、活着かっちゃくしなかった原因げんいん調査ちょうさをおこない、それをもとに再生さいせいとモニタリングのためのガイドラインを作成さくせいしました。

2023ねんからこのガイドラインをもとに、あらためて再生さいせい定期ていきてきなモニタリングにみ、これまで順調じゅんちょう活着かっちゃくしています。

マングローブの再生
エビの生産せいさんしゃのほか地域ちいき住民じゅうみん行政ぎょうせい機関きかんなど、さまざまな方々かたがた協力きょうりょくいただきマングローブの再生さいせいすすめています。
© WWF Indonesia

生計せいけい向上こうじょうにもつながる生産せいさん方法ほうほう改善かいぜん

持続じぞく可能かのう生産せいさん実現じつげんしたジャワ島じゃわとうでのエビ(ブラックタイガー)養殖ようしょくぎょう改善かいぜんは、中部ちゅうぶジャワしゅうブレベスけんのバンスリむらんできました。

ここは、日本生協連にほんせいきょうれん調達ちょうたつさきである、現地げんちエビ加工かこう会社かいしゃのミサヤミトラしゃのサプライヤーの情報じょうほうをもとに選定せんていした場所ばしょです。

ジャワ島のプロジェクト現場のエビ養殖池
ジャワ島じゃわとうのプロジェクト現場げんばのエビ養殖ようしょく
© WWF Japan

養殖ようしょく現場げんばでの生産せいさん改善かいぜんにおいてとく課題かだいとなったのが、なまざんりついけれたややエビが大人おとなまでそだ割合わりあい)の改善かいぜんです。

インドネシアのブラックタイガー養殖ようしょくぎょうでは、なまざんりつがおおむね10%前後ぜんこうひくく、病気びょうき発生はっせいして収穫しゅうかくにまでいたらないこともあります。

それは、この場所ばしょでも例外れいがいではありませんでした。

当初とうしょおこなった試験しけん養殖ようしょくで、対象たいしょうとした21めん養殖ようしょくのうち20めん病気びょうき発生はっせい収穫しゅうかくまでいたった1めんでもなまざんりつが13%と、ASC基準きじゅん要件ようけんもとめられている25%をえるには程遠ほどとお状況じょうきょうでした。

結果けっかおもわしくありませんでしたが、試験しけん養殖ようしょく参加さんかした20にんのうち4にん生産せいさんしゃほうから意欲いよくしめされ、改善かいぜんすすめていけることになりました。

生産せいさん方法ほうほう改善かいぜんでは、ややエビをいけれするまえ養殖ようしょくみずきや日干ひぼし、いけ水質すいしつ成育せいいくじょうきょうのモニタリングなど、生産せいさんしゃほう協力きょうりょく試行しこう錯誤さくごしながらみをすすめていきました。

その結果けっか、2022ねん後半こうはんにおこなった生産せいさんなまざんりつが18~20%ちかくまで改善かいぜん。2023ねん後半こうはんにかけておこなった生産せいさんでは、対象たいしょうとなる6めんすべての養殖ようしょくで、なまざんりつが25%をえることができました。

生計せいけい向上こうじょうにもつながる重要じゅうよう成果せいかとなり、生産せいさんしゃほうからもよろこびのこえくことができました。

生産者向けのエビ養殖の改善に関する研修
生産せいさんしゃほう自身じしんみを理解りかい実践じっせんしていけるように、水質すいしつ成育せいいくじょうきょうのモニタリングの方法ほうほうなどエビ養殖ようしょく改善かいぜんかんする研修けんしゅう実施じっし
© WWF Indonesia

関係かんけいしゃきょうはたらけによる持続じぞく可能かのうなエビ養殖ようしょくぎょう実現じつげん

ジャワ島じゃわとうでのエビ(ブラックタイガー)養殖ようしょくぎょう改善かいぜんは、2024ねん3がつ29にち開始かいしからやく3ねんじゃく月日つきひてASC認証にんしょう取得しゅとく達成たっせいともんできた生産せいさんしゃ4にん所有しょゆうする養殖ようしょく6めんで、持続じぞく可能かのうなブラックタイガー養殖ようしょくぎょう実現じつげんすることができました。

さまざまな困難こんなんがありながらも目標もくひょう達成たっせいすることができたのは、サプライチェーンの関係かんけいしゃきょうはたらけがあったからこそ。

現場げんば生産せいさんしゃほうやミサヤミトラしゃ奮闘ふんとうはもちろん、エビを調達ちょうたつする日本生協連にほんせいきょうれん存在そんざい前向まえむきな姿勢しせいが、みをすすめるおおきな推進すいしんりょくとなりました。

実際じっさい日本生協連にほんせいきょうれんは、プロジェクトの進捗しんちょく会議かいぎ現場げんば視察しさつ積極せっきょくてき参加さんか。こうした行動こうどうが、ミサヤミトラしゃ養殖ようしょくぎょう改善かいぜんへの意欲いよく主体性しゅたいせいたかめることにつながりました。

さらにエビ生産せいさんしゃほうにとっても、ミサヤミトラしゃによるみつなコミュニケーションや日本生協連にほんせいきょうれん存在そんざいが、労力ろうりょくをかけてでも養殖ようしょく改善かいぜんすすめていく動機どうきづけになったとえます。

ミサヤミトラ社、日本生協連、WWFインドネシア、WWFジャパンのスタッフによる養殖現場の視察
ミサヤミトラしゃ日本生協連にほんせいきょうれん、WWFインドネシア、WWFジャパンのスタッフによる養殖ようしょく現場げんば視察しさつ
© WWF Indonesia

インドネシアのブラックタイガーのような小規模しょうきぼ零細れいさい養殖ようしょくぎょう場合ばあい生産せいさんしゃだけで持続じぞく可能かのう生産せいさんけたみを実行じっこうしていくのは容易よういではありません。

とく水産物すいさんぶつ調達ちょうたつ販売はんばいする企業きぎょうが、今回こんかい日本生協連にほんせいきょうれんのように、サプライヤーに積極せっきょくてきはたらきかけ、きょうはたらかして実施じっしすることが重要じゅうようとなります。

これは結果けっかてきに、SDGsの目標もくひょうだけでなく、生産せいさんしゃ生計せいけい向上こうじょうやサプライチェーンの関係かんけいしゃ調達ちょうたつ改善かいぜん、また事業じぎょう継続けいぞくにもおおきく貢献こうけんします。

そしてなによりも、うみゆたかさをまもり、将来しょうらい世代せだいにわたってそのめぐみである水産物すいさんぶつ享受きょうじゅつづけることができる、そんな未来みらいにつながります。

わたしたちWWFも、持続じぞく可能かのう社会しゃかいきずいていくために、水産物すいさんぶつのサプライチェーンの関係かんけいしゃと、持続じぞく可能かのう水産物すいさんぶつ生産せいさんけたみを、より一層いっそう推進すいしんしていきたいとおもいます。

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