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異常気象とは? 種類や原因、具体例、地球温暖化との関係性を解説:朝日新聞SDGs ACTION!
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異常いじょう気象きしょうとは? 種類しゅるい原因げんいん具体ぐたいれい地球ちきゅう温暖おんだんとの関係かんけいせい解説かいせつ

異常気象とは? 種類や原因、具体例、地球温暖化との関係性を解説
異常いじょう気象きしょうとは(デザイン:増渕ますぶちまい
筑波大学つくばだいがくじょきょうがまこう陽一よういち

異常いじょう気象きしょうとは極端きょくたん気象きしょう天候てんこう不順ふじゅんのことで、農作物のうさくもつ不作ふさく自然しぜん災害さいがいをもたらします。近年きんねんはこれまでにれいがないほど、世界せかい各地かくち多数たすう異常いじょう気象きしょう発生はっせいしています。この記事きじでは、異常いじょう気象きしょうれいやその原因げんいん地球ちきゅう温暖おんだんとの関係かんけいについて、地球ちきゅう温暖おんだん異常いじょう気象きしょうのメカニズムを研究けんきゅうしている専門せんもん解説かいせつします。

筆者_釜江陽一さん
がまこう陽一よういち(かまえ・よういち)
1984ねんまれ。2012ねん筑波大学つくばだいがく博士はかせごう取得しゅとく東京大学とうきょうだいがくとくにん研究けんきゅういんなどを現職げんしょくく。地球ちきゅう温暖おんだん異常いじょう気象きしょうのメカニズムの研究けんきゅうみ、2014ねん日本にっぽん気象きしょう学会がっかい山本やまもとしょう、2023ねん日本にっぽん気象きしょう学会がっかい正野しょうのしょう日本にっぽん気象きしょう協会きょうかい岡田おかだしょう受賞じゅしょう

目次もくじ

1.異常いじょう気象きしょうとは

異常いじょう気象きしょうとは、普段ふだん天候てんこうとはかけはなれた極端きょくたん気象きしょうのことです。気象庁きしょうちょうとIPCC(気候きこう変動へんどうかんする政府せいふあいだパネル)は、異常いじょう気象きしょうことなる方法ほうほう定義ていぎしています。気象庁きしょうちょう気象きしょう要素ようそ過去かこ30ねん以上いじょうにわたって観測かんそくされていないほど極端きょくたんである様子ようすを、IPCCは気象きしょう要素ようそかくりつ分布ぶんぷてはめたときに上位じょういまたは下位かい10%に相当そうとうする極端きょくたん様子ようす異常いじょう気象きしょうんでいます。

猛暑もうしょ大雨おおあめ寒波かんぱかんばつなど、人々ひとびと生活せいかつおおきく影響えいきょうするため、異常いじょう気象きしょう予測よそくすることはとても重要じゅうようです。異常いじょう気象きしょうによる被害ひがい世界中せかいじゅうきており、持続じぞく可能かのう開発かいはつ目標もくひょう(SDGs)の目標もくひょう13にかかげられているように、気候きこう変動へんどう具体ぐたいてき対策たいさくこうじることは世界せかいてき目標もくひょうとされています。

SDGs目標13アイコン

2.異常いじょう気象きしょうかず増加ぞうか傾向けいこうにある

地球ちきゅう温暖おんだんによってわたしたちを気候きこうわると、ある地域ちいきすうじゅう年間ねんかんに1しか発生はっせいしなかった極端きょくたん高温こうおん大雨おおあめが、頻繁ひんぱん発生はっせいすることがあります(参照さんしょう気候きこう異常いじょう気象きしょうについて|気象庁きしょうちょう)。

実際じっさい、WMO(世界せかい気象きしょう機関きかん)が集計しゅうけいしたデータでは、1970ねんから2019ねんまでの50ねんあいだに、気象きしょう災害さいがい発生はっせいすうは5ばいほどにえていることがわかりました(参照さんしょうWMO Atlas of Mortality and Economic Losses from Weather, Climate and Water Extremes〈1970-2019〉 p.16|WMO)。

日本にっぽんわたしたちのなかにも、「むかしくらべて猛暑もうしょ大雨おおあめおおくなった」「ゆきった」とかんじているひとおおいのではないでしょうか。気象庁きしょうちょうのデータを確認かくにんしてみると、にち最高さいこう気温きおんが35える「猛暑もうしょ」のかずは100年間ねんかんで4.6ばいに、にち降水こうすいりょうが200mmをえる非常ひじょうつよあめかずは1.8ばいえています。

日最高気温が35度を超える「猛暑日」の数
出典しゅってん気候きこう変動へんどう監視かんしレポート 2023 p.52|気象庁きしょうちょう

見方みかた
みどりぼうグラフはかくとし年間ねんかん日数にっすう合計ごうけいかくとし有効ゆうこう地点ちてんすう合計ごうけいった
あおせん上記じょうきの5ねん移動いどう平均へいきんせん
あか直線ちょくせん長期ちょうき変化へんか傾向けいこう

あおせんあか直線ちょくせん右肩みぎかたがりであることから、猛暑もうしょかず年々ねんねん増加ぞうかしていることがわかる。

<span><ruby><rb>日</rb><rt>にち</rt></ruby><ruby><rb>降水</rb><rt>こうすい</rt></ruby><ruby><rb>量</rb><rt>りょう</rt></ruby>が200mmを<ruby><rb>超</rb><rt>こ</rt></ruby>える<ruby><rb>非常</rb><rt>ひじょう</rt></ruby>に<ruby><rb>強</rb><rt>つよ</rt></ruby>い<ruby><rb>雨</rb><rt>あめ</rt></ruby>の<ruby><rb>数</rb><rt>かず</rt></ruby></span>
出典しゅってん気候きこう変動へんどう監視かんしレポート 2023 p.60|気象庁きしょうちょう

見方みかた
あおせんあか直線ちょくせん右肩みぎかたがりであることから、降水こうすいりょう年々ねんねん増加ぞうかしていることがわかる。

気温きおん上昇じょうしょうするとともにゆきりょうり、東日本ひがしにっぽん日本海にほんかいがわでは60年間ねんかん半分はんぶんってしまっています。下図したず東日本ひがしにっぽん日本海にほんかいがわ最深さいしん積雪せきせつしめしたものです。

東日本日本海側の最深積雪
出典しゅってん気候きこう変動へんどう監視かんしレポート 2023 p.65|気象庁きしょうちょう

見方みかた
ぼうグラフは基準きじゅんくらべてひくいことをしめす。

あおせんあか直線ちょくせん右肩みぎかたがりであることから、積雪せきせつりょう年々ねんねん減少げんしょうしていることがわかる。

3.これまでに発生はっせいした異常いじょう気象きしょう具体ぐたいれい

異常いじょう気象きしょう日本にっぽんのみならず、世界せかい各地かくち発生はっせいしています。とくに2023ねんには世界せかい各地かくち異常いじょう気象きしょう頻発ひんぱつしました。ここでは、世界せかいおよび日本にっぽん異常いじょう気象きしょうれい紹介しょうかいします(参照さんしょう世界せかいとしごとの異常いじょう気象きしょう気象庁きしょうちょう)。

(1)世界せかいきた異常いじょう気象きしょうれい

2020ねんから2023ねんにかけて、世界せかいでは以下いかのような異常いじょう気象きしょう発生はっせいしています。

とし くに地域ちいき 異常いじょう気象きしょう 概要がいよう
2020ねん 中国ちゅうごく長江ちょうこう流域りゅういき 大雨おおあめ洪水こうずい 大雨おおあめにより死者ししゃ行方ゆくえ不明ふめいしゃ160にん以上いじょうとなった。
2021ねん 欧州おうしゅう 大雨おおあめ洪水こうずい 欧州おうしゅう中部ちゅうぶひろ範囲はんい洪水こうずい発生はっせいした。
2021ねん 欧州おうしゅう 猛暑もうしょ イタリア南部なんぶで44.4記録きろくした。
2022ねん 欧州おうしゅう 猛暑もうしょ イギリス東部とうぶで40.3記録きろくした。
2023ねん 欧州おうしゅうきたアフリカ 少雨しょうう スペイン、モロッコで2~4がつ記録きろくてき少雨しょうう記録きろくした。
2023ねん みなみアジア 大雨おおあめ洪水こうずい アフガニスタン~インドで6〜8がつにかけて発生はっせいした大雨おおあめにより1010にん以上いじょう死亡しぼうした。
2023ねん 欧州おうしゅうひがしアジア・東南とうなんアジア・北米ほくべい南米なんべい中部ちゅうぶ・オセアニア 猛暑もうしょ ベトナム北部ほくぶで5がつに44.2記録きろく中国ちゅうごく新疆しんきょうウイグル自治じちで7がつに52.2記録きろく、ブラジル南東なんとうで11月に44.8記録きろくした。

参照さんしょう世界せかい異常いじょう気象きしょう気象庁きしょうちょう世界せかいとしごとの異常いじょう気象きしょう 対象たいしょう期間きかん:2023ねん気象庁きしょうちょう

(2)日本にっぽんきた異常いじょう気象きしょうれい

日本にっぽんでも大雨おおあめ猛暑もうしょ暖冬だんとうといった異常いじょう気象きしょうつづけに発生はっせいしています。とくに、なつ時期じきには、毎年まいとしのようにひろ範囲はんい記録きろくてき大雨おおあめ観測かんそくしています。

とし 地域ちいき 異常いじょう気象きしょう 概要がいよう
2014ねん 西日本にしにほん 大雨おおあめ 広島ひろしま豪雨ごうう」や「平成へいせい26ねん8がつ豪雨ごうう」とばれる。
2018ねん 西日本にしにほんから東海とうかい地方ちほうにかけて 大雨おおあめ 西日本にしにほん豪雨ごうう」や「平成へいせい30ねん7がつ豪雨ごうう」とばれる。
2018ねん きたひがし西日本にしにほん 猛暑もうしょ 東日本ひがしにっぽんの7がつ統計とうけい開始かいし以降いこうもっと気温きおんたかかった。
2020ねん 日本にっぽん全国ぜんこく 暖冬だんとう 統計とうけい開始かいし以降いこうもっと気温きおんたかふゆだった。
2020ねん 西日本にしにほん東日本ひがしにっぽん 大雨おおあめ れい2ねん7がつ豪雨ごうう」とばれる。
熊本くまもとけん人吉盆地ひとよしぼんちながれる球磨川くまがわ洪水こうずい発生はっせいした。
2021ねん 西日本にしにほん東日本ひがしにっぽん 大雨おおあめ 西日本にしにほん日本海にほんかいがわ西日本にしにほん太平洋たいへいようがわの8がつ統計とうけい開始かいし以降いこうもっと降水こうすいりょうおおかった。
2022ねん 西日本にしにほん東日本ひがしにっぽん 猛暑もうしょ 6がつ下旬げじゅん〜7がつはじめに、全国ぜんこく914地点ちてんのうち24地点ちてんで、観測かんそく史上しじょうもっとたか高温こうおん記録きろく東京とうきょうでも、観測かんそく史上しじょう1となる9日間にちかん連続れんぞく猛暑もうしょ記録きろくした。
2023ねん 西日本にしにほん東日本ひがしにっぽん 大雨おおあめ ひがし西日本にしにほん太平洋たいへいようがわせんじょう降水こうすいたい相次あいついで発生はっせい。167地点ちてんにおいて、6月としての24あいだ降水こうすいりょう1更新こうしんした。

参照さんしょう日本にっぽん異常いじょう気象きしょう気象庁きしょうちょう

全国ぜんこく降水こうすいりょう統計とうけいによると、2018ねん以降いこう発生はっせいしたなつ大雨おおあめがトップ3をめています。

アメダス1029地点降水量の総量
アメダス全国ぜんこく1029地点ちてんでの降水こうすいりょう総量そうりょう(「れい3ねん8がつ記録きろくてき大雨おおあめ特徴とくちょうとその要因よういんについて p.4|気象庁きしょうちょう」をもとに筆者ひっしゃ作成さくせい

4.異常いじょう気象きしょう原因げんいんおおくは「自然しぜんのゆらぎ」

異常いじょう気象きしょう原因げんいんおおくが「自然しぜんのゆらぎ」とかんがえられています。自然しぜんのゆらぎとは、自然しぜん本来ほんらい仕組しくみによって特定とくてい地域ちいき極端きょくたん天候てんこう見舞みまわれることです。自然しぜんのゆらぎには、たとえば以下いかのようなものがふくまれます。

時期じきによって海水温かいすいおんがったりがったりする
てい気圧きあつ高気圧こうきあつ通過つうかする
大気たいきながれがかたよ

以下いかでは、かく現象げんしょう概要がいようとそれによってこされる異常いじょう気象きしょうについて説明せつめいします。

(1)エルニーニョ現象げんしょう、ラニーニャ現象げんしょう

広大こうだい太平洋たいへいようでは、すうねんおきに海水温かいすいおん異常いじょう発生はっせいします。これは赤道せきどう中央ちゅうおう東部とうぶ太平洋たいへいよう水温すいおん上昇じょうしょうし、ぎゃくきた太平洋たいへいよう西部せいぶ水温すいおん低下ていかする、またはそのぎゃくのパターンをつという特徴とくちょうがあります。この現象げんしょうをそれぞれ「エルニーニョ現象げんしょう」「ラニーニャ現象げんしょう」とびます。

非常ひじょうひろ範囲はんい水温すいおん異常いじょうしょうじるため、世界せかい大気たいきながれをおおきくえ、熱帯ねったいちゅう緯度いど地域ちいき猛暑もうしょ寒波かんぱ大雨おおあめかんばつの原因げんいんになります。

(2)ブロッキング高気圧こうきあつ

ちゅう緯度いど上空じょうくう西にしからひがしながれる「偏西風へんせいふう」が通常つうじょうよりも南北なんぼく波打なみう現象げんしょうを「偏西風へんせいふう蛇行だこう」とびます。偏西風へんせいふう蛇行だこうつよまると、蛇行だこう部分ぶぶん偏西風へんせいふう本流ほんりゅうからはなされ、うずとなって停滞ていたいすることがあります。こうしておな場所ばしょ高気圧こうきあつてい気圧きあつまりつづける現象げんしょうを「ブロッキング現象げんしょう」とびます。

ブロッキング現象げんしょうによって欧州おうしゅうやシベリア、北米ほくべい上空じょうくう高気圧こうきあつ停滞ていたいすると、極端きょくたん高温こうおんこし、まわりの大気たいきながれに影響えいきょうしてさらなる異常いじょう気象きしょうこすことがあります。

(3)北極ほっきょく振動しんどう

北極ほっきょくいきとその外側そとがわなか緯度いどとのあいだで、平年へいねんよりも気圧きあつたか地域ちいきひく地域ちいきわることがあります。この現象げんしょうを「北極ほっきょく振動しんどう」とびます。北極ほっきょく振動しんどう偏西風へんせいふう位置いちつよさをえ、さらには蛇行だこう原因げんいんとなることがあります。この影響えいきょう日本にっぽんふくめたなか緯度いど暖冬だんとうかんふゆ見舞みまわれることがあります。

(4)大気たいきかわ

あめるためには水蒸気すいじょうき必要ひつようです。地球ちきゅうじょうにおいて水蒸気すいじょうき熱帯ねったいおおく、きょくかうほどすくなくなります。きょくかって水蒸気すいじょうきつよながれが細長ほそながびている現象げんしょうは、まるで大気たいきちゅうながれるかわのようであることから、「大気たいきかわ」とばれます。

大気たいきかわは、ちゅう緯度いど西にしからひがしすすてい気圧きあつともなって形成けいせいされた前線ぜんせん沿ってながれる現象げんしょうで、ちゅう緯度いど大気たいきのゆらぎによってしょうじます。一方いっぽうで、エルニーニョ現象げんしょうやラニーニャ現象げんしょうのようなうみのゆらぎが発生はっせいすると、大気たいきながれがかたよることによって、普段ふだんよりも大気たいきかわ通過つうかしやすくなったり、よりつよ大気たいきかわながれたりすることがあります。

5.異常いじょう気象きしょう地球ちきゅう温暖おんだん関係かんけい

異常いじょう気象きしょう地球ちきゅう温暖おんだん原因げんいんきているとかんがえられることがありますが、それはたして本当ほんとうなのでしょうか。じつは、異常いじょう気象きしょう地球ちきゅう温暖おんだん関係かんけいせいはまだあきらかでない部分ぶぶんおおのこされています。

(1)地球ちきゅう温暖おんだんすすむと異常いじょう気象きしょうえるといわれている理由りゆう

地球ちきゅう温暖おんだんすすむと、地上ちじょう気温きおん上昇じょうしょうし、これまでこりにくかった極端きょくたん高温こうおん頻度ひんどえます。また、あたたまった空気くうきはよりおおくの水蒸気すいじょうきふくむことができます。

なつ夕立ゆうだちをもたらす発達はったつした積乱雲せきらんうんのように、空気くうきはげしくたいながして大雨おおあめるときには、その雨量うりょう水蒸気すいじょうきりょう比例ひれいしておおくなるとかんがえられます。つまり、温暖おんだんすすむと、これまで観測かんそくされることがすくなかった極端きょくたん大雨おおあめ頻発ひんぱつするおそれがあります。

(2)地球ちきゅう温暖おんだんがどの程度ていどすすむと、異常いじょう気象きしょうはどのくらいえるのか

地球ちきゅう温暖おんだん気温きおんが1~2上昇じょうしょうする」というはなしいても、毎日まいにちよるひるとで5や10気温きおん変化へんか体感たいかんしているわたしたちにとっては、ちいさな数字すうじえるかもしれません。ですが、非常ひじょう広大こうだい範囲はんい平均へいきんして気温きおんが1~2上昇じょうしょうするというのは、環境かんきょう問題もんだいにとってはとてつもなくおおきな変化へんかです。

地球ちきゅう温暖おんだんすすむほど、極端きょくたん高温こうおんこりやすくなります。これまで10ねんに1程度ていどしかこらなかった極端きょくたん高温こうおんは、世界せかい平均へいきん温暖おんだんが1.5すすむとやく4.1ばい、2すすむとやく5.6ばい、4すすむとやく9.4ばいえるといわれています。10ねんに1大雨おおあめは1.5やく1.5ばい、2やく1.7ばい、4やく2.7ばいえると予測よそくされています(参照さんしょうIPCC AR6 WG1報告ほうこくしょ 政策せいさく決定けっていしゃ要約ようやく〈SPM〉暫定ざんていやく〈2022ねん12月22にちばん〉p.18|IPCC)。

1.5上昇じょうしょうすると 2上昇じょうしょうすると 4上昇じょうしょうすると
10ねんに1程度ていど高温こうおん発生はっせい頻度ひんど やく4.1ばい やく5.6ばい やく9.4ばい
10ねんに1程度ていど大雨おおあめ発生はっせい頻度ひんど やく1.5ばい やく1.7ばい やく2.7ばい

地球ちきゅう温暖おんだんすこしでもやわらげたり、おそくしたりできれば、そのぶん異常いじょう気象きしょうへの対策たいさくすすめるための時間じかんかせげます。

6.異常いじょう気象きしょう連鎖れんさする「テレコネクション」

異常いじょう気象きしょう原因げんいんとなる「自然しぜんのゆらぎ」は、じつは1カ所かしょこるだけでなく、世界せかい各地かくち同時どうじ多発たはつてきしょうじることもあります。たとえばエルニーニョ現象げんしょうやラニーニャ現象げんしょう発生はっせいすると、水温すいおん異常いじょう影響えいきょう熱帯ねったいふうながれがわり、あめりやすい地域ちいきわります。通常つうじょう熱帯ねったい西部せいぶ太平洋たいへいよう降水こうすいりょうおおいのですが、エルニーニョ現象げんしょうやラニーニャ現象げんしょう発生はっせいするとべつ海域かいいき降水こうすいりょうおおくなります。

くわえて、この熱帯ねったい大気たいきながれや降水こうすいりょう分布ぶんぷわることで、いけ小石こいしれたときに波紋はもんひろがるように、その影響えいきょうちゅう緯度いどにもつたわります。その結果けっかちゅう緯度いど猛暑もうしょかんふゆ大雨おおあめかんばつに見舞みまわれることがあります。このようにはなれた地域ちいき天候てんこう異常いじょう連鎖れんさする様子ようすを「テレコネクション」とびます。偏西風へんせいふう位置いち蛇行だこう様子ようすわると、その影響えいきょう偏西風へんせいふう下流かりゅうつたわります。これもテレコネクションのいちしゅです。

7.異常いじょう気象きしょうがもたらす影響えいきょう

世界中せかいじゅう発生はっせいしている異常いじょう気象きしょうは、さまざまな分野ぶんや影響えいきょうをもたらします。ここでは、異常いじょう気象きしょう具体ぐたいてきにどのような影響えいきょうをもたらすのかについて解説かいせつします。

(1)住宅じゅうたく人命じんめい健康けんこうかかわる影響えいきょう

大雨おおあめによる河川かせん氾濫はんらん(はんらん)や土砂崩どしゃくずれは住居じゅうきょへの浸水しんすい損壊そんかいこし、さらには人々ひとびといのちうばうことがあります。2018ねん西日本にしにほん豪雨ごううでは、死者ししゃ237にん行方ゆくえ不明ふめいしゃは8にんにのぼりました。猛暑もうしょ熱中ねっちゅうしょうによる健康けんこう被害ひがいを、大雪おおゆき交通こうつう障害しょうがい雪下ゆきおろしちゅう事故じこやすなど、人々ひとびと生活せいかつ多大ただい影響えいきょうをおよぼします(参照さんしょうれい元年がんねんばん 防災ぼうさい白書はくしょ特集とくしゅう だい1しょう だい1せつ 1-1 平成へいせい30ねん7がつ豪雨ごうう西日本にしにほん豪雨ごうう災害さいがい内閣ないかく)。

また、異常いじょう気象きしょうによって媒介ばいかいするデング熱でんぐねつのような感染かんせんしょう拡大かくだいすることもあります(参照さんしょう気候きこう変動へんどう媒介ばいかい感染かんせんしょう極端きょくたん気象きしょうは、感染かんせんしょうにどのような変化へんかをもたらすのか?|ニッセイ基礎研究所にっせいきそけんきゅうしょ)。

(2)農作物のうさくもつへの影響えいきょう

農作物のうさくもつ地域ちいき気候きこうおうじた品種ひんしゅ栽培さいばいされているところに、普段ふだんとかけはなれた天候てんこう見舞みまわれるため、作物さくもつ収量しゅうりょう減少げんしょうしたり、品質ひんしつ低下ていかしたりすることがあります。水稲すいとう栽培さいばいでは出穂しゅつほ高温こうおん見舞みまわれると、しろ未熟みじゅくつぶばれる品質ひんしつひくべいつぶ増加ぞうかします。

べいくわえてとうもろこし・大豆だいず小麦こむぎといった世界せかい主要しゅよう穀物こくもつ収量しゅうりょうは、エルニーニョ現象げんしょうやラニーニャ現象げんしょうによって世界せかい各地かくち天候てんこう不順ふじゅん見舞みまわれると、収量しゅうりょうおおきく変動へんどうします。ほかにも野菜やさい果物くだもの不作ふさくによって流通りゅうつうりょうり、価格かかく高騰こうとうすることがあります(参照さんしょう2014ねんのエルニーニョ発生はっせいによる世界せかい穀物こくもつ収量しゅうりょうへの影響えいきょう見通みとおし|農林水産省のうりんすいさんしょう)。

(3)世界せかい経済けいざいへの影響えいきょう

異常いじょう気象きしょう普段ふだんとはかけはなれた高温こうおん低温ていおん大雨おおあめ渇水かっすいによって、特定とくてい地域ちいき世界せかい経済けいざい深刻しんこく損害そんがいあたえます。エルニーニョ現象げんしょうやラニーニャ現象げんしょう人々ひとびと生活せいかつ基盤きばん農作物のうさくもつへの影響えいきょうくわえ、海水温かいすいおん異常いじょう栄養分えいようぶんはこうみゆうのぼり(ゆうしょう)りゅうよわめることをとおして、漁獲ぎょかくりょう減少げんしょうにつながることがあります。季節外きせつはずれの高温こうおん低温ていおんは、人々ひとびと被服ひふく飲食いんしょく嗜好しこう(しこう)、エネルギー消費しょうひりょう自然しぜんエネルギー生産せいさんりょう変化へんかとおして世界せかいてき経済けいざい状況じょうきょうにも影響えいきょうします。

地球ちきゅう温暖おんだんのアメリカへの影響えいきょうなどをまとめた「国家こっか気候きこう評価ひょうかしょ」によると、アメリカでは異常いじょう気象きしょうによる被害ひがいがく年間ねんかんやく1500おくドル(やく22ちょう5000おくえんちかくにものぼると試算しさんされています(参照さんしょう異常いじょう気象きしょう被害ひがいとし22ちょうえんちょうべい政府せいふ評価ひょうか朝日新聞あさひしんぶんデジタル)。

また、世界せかい有数ゆうすう保険ほけん市場いちば運営うんえいするロイズ保険ほけん組合くみあいが2023ねん発表はっぴょうした報告ほうこくでは、異常いじょう気象きしょう世界せかい経済けいざいにおよぼす損失そんしつがく今後こんご5年間ねんかんで5ちょうドル(やく750ちょうえん)にもおよぶと推定すいていしています(参照さんしょうLloyd’s new data tool highlights vulnerability of the global economy to extreme weather|Lloyd’s)。

8.異常いじょう気象きしょうへの対策たいさく

現在げんざい天気てんき予報よほう気候きこう予測よそく技術ぎじゅつをもってすれば、異常いじょう気象きしょうをある程度ていど予測よそくすることができます。エルニーニョ・ラニーニャ現象げんしょう世界せかいうみ状況じょうきょう注意深ちゅういぶかかんすることで数カ月すうかげつさき予測よそく可能かのうです。気象庁きしょうちょうは1カ月かげつ予報よほうや3カ月かげつ予報よほうかんこう予報よほうだんこう予報よほう発表はっぴょうしており、農業のうぎょうやビジネスの見通みとおしをてるさい参考さんこうにできます。

また、日々ひび天気てんき予報よほうから数日すうじつさき大雨おおあめ季節外きせつはずれの高温こうおん低温ていおんかんする情報じょうほうることもできます。まんいち災害さいがいにつながるような大雨おおあめったときには、事前じぜん地域ちいきのハザードマップをもとに避難ひなん計画けいかくてておけば、人的じんてき被害ひがい最小限さいしょうげんらせます。異常いじょう気象きしょうだといってただおそれるのではなく、日々ひび情報じょうほう効果こうかてき活用かつようして対策たいさくこうじることが重要じゅうようです。

編集へんしゅう協力きょうりょく スタジオユリグラフ・高橋たかはしじゅん

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