(CNN) 11月に行われる米大統領選をめぐり、カマラ・ハリス副大統領がわずか48時間あまりで民主党の大統領候補に躍り出たことは、米国政治において前代未聞の出来事だった。
ハリス氏が大統領選で勝利すれば、これもまた非常にまれな出来事となる。
大統領選に勝利した現職の副大統領は、わずか4人にとどまるためだ。
49人の歴代の副大統領のうち、大統領になれたのは15人。
このうちの8人は現職大統領の死後に大統領となった。
さらに4人は副大統領からそのまま大統領へと上り詰めた。
2人は別の政権を挟んでから大統領に就任した。
最後のひとりは、前任の大統領の辞任後に大統領に就任した。
副大統領が大統領に就任した事例のうち2件は、200年以上前の選挙で、建国の父たちが異なる選挙制度の下で出馬したときのものだった。
当時、大統領選で次点だった人物が副大統領となっていた。1796年の大統領選ではジョン・アダムズが勝利した。1800年の大統領選では選挙人が同数となったが、最終的に下院がトーマス・ジェファーソンを大統領に選出した。このときの出来事をきっかけに合衆国憲法修正第12条が採用され、選挙人は正副大統領をそれぞれ区別して投票することとなった。
36年の大統領選では副大統領のマーティン・バン・ビューレンが、2期大統領を務めたアンドリュー・ジャクソンの後継者として勝利した。バン・ビューレンは独立宣言後に生まれた最初の大統領だ。任期は銀行と財政の破綻(はたん)に見舞われ、40年の大統領選では再選されず、数年後には第3の政党から出馬を試みたものの当選できなかった。
それから約150年。大統領の死や辞任によって副大統領が大統領職に就くことがあったが、副大統領が大統領に当選するには1988年まで待つことになる。この人物が、ジョージ・H・W・ブッシュで、2期務めたロナルド・レーガン大統領の後任として大統領に就任した。
現在の大統領、ジョー・バイデン氏は、バラク・オバマ政権時に副大統領職を務めたが、オバマ大統領の後任を目指さなかった。2016年の大統領選で、ヒラリー・クリントン氏がドナルド・トランプ氏に敗北した際にバイデン陣営が不満を示したことは知られている。
ハリス氏が今年の大統領選でもし敗北すれば、副大統領として、負けた大統領選で選挙人の集計を監督するという米政界で最も屈辱的な経験のひとつを耐えなければならなくなる。これまでに3人の副大統領がこうした屈辱的な状況を経験したが、いずれも非常に議論を呼ぶ状況だった。
1861年、ジョン・ブレッキンリッジ副大統領は、エイブラハム・リンカーンを大統領に選出する選挙人の集計を監督した。当時、南部諸州はリンカーンの勝利を認めず、合衆国からの離脱を宣言していた。
1960年の大統領選ではリチャード・ニクソン副大統領がジョン・F・ケネディに接戦の末敗れて、翌年の選挙人の集計を監督した。ニクソンは68年の大統領選で勝利して大統領に就任することになる。2000年の大統領選ではアル・ゴア氏が得票数で相手を上回ったものの、物議を醸した最高裁の判決の後に敗北。ゴア氏は翌年、ジョージ・W・ブッシュ氏が大統領に就任する際の選挙人の集計を監督した。
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本稿はCNNのザカリー・B・ウルフ、レニー・リグドン、マット・スタイルズ各記者による分析記事です。