精神せいしん科か医いTomyの人ひとに振ふり回まわされない魔法まほうの言葉ことば

上司じょうしから嫌味いやみを言いわれる

相手あいてにされたことを記録きろくする

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本書ほんしょの主人公しゅじんこうは、OLの水谷みずたに楓かえで。楓かえではこの春はるに新あたらしい部署ぶしょに異動いどうしたのだが、異動いどう早々そうそう、そこの女性じょせい上司じょうしにまいってしまっている。

上司じょうしは楓かえでよりも3歳さい年下とししただが、その部署ぶしょでの経験けいけんは楓かえでよりも長ながく、楓かえでが何なにか聞きこうとしても「私わたしよりこの会社かいしゃ長ながいでしょ」などと、ことあるごとに嫌味いやみを言いってくる。

楓かえでは、部屋へやに居候いそうろうしている精神せいしん科か医いTomyに「もう会社かいしゃに行いきたくない」と愚痴ぐちをこぼした。するとTomyは、「どこでもノート」と言いって、おもむろに一いち冊さつのノートを取とり出だした。ふとTomyのおなかに目めをやると、この間あいだまではなかった半円はんえん状じょうのポケットがついていた。

Tomyは、「問題もんだいは上司じょうし本人ほんにんにありそうだけど、楓かえでの話はなしには具体ぐたい性せいがないのよね。それでは対策たいさくが立たてられないわ」と、どこでもノートを楓かえでに渡わたして、次つぎの3点てんを書かくように言いった。

(1)問題もんだいのある人ひとにされたことと、その時間じかん

(2)業務ぎょうむに影響えいきょうがあった行為こういを箇条書かじょうがきにする

(3)(2)の行為こういによって自分じぶんの業務ぎょうむにどんな影響えいきょうがあったか

ポイントは、「なんとなくい方いかたがきつい」などの主観しゅかん的てきなことは書かかずに、客観きゃっかん的てきな事実じじつのみに絞しぼることである。こうすることで状況じょうきょうの整理せいりができ、もし上司じょうしのせいで業務ぎょうむに支障ししょうが出でることがあっても、上層じょうそう部ぶにこのノートを見みせて訴うったえることができる。

記録きろくは「気持きもちの整理せいりと証拠しょうこ作づくり」

楓かえでは、その日ひ上司じょうしにされたことを箇条書かじょうがきにしていった。「名前なまえを呼よばずに『そこの新入しんいり』と言いわれ続つづけた」「『君きみ、何なにもできないね』とみんなの前まえで言いわれた」「退勤たいきん直前ちょくぜんに次つぎの業務ぎょうむをやるように言いわれ、残業ざんぎょうした」。楓かえでは書かいていくうちに、だんだん腹はらが立たってきた。しかしTomyは「これはむしろ好都合こうつごう」と言いう。ノートに書かき出だすことは「気持きもちの整理せいりと証拠しょうこ作づくり」であり、誰だれが見みてもひどいと思おもえる内容ないようは、楓かえでにとって有利ゆうりになるからだ。楓かえではそれからも、毎日まいにちノートを更新こうしんし続つづけた。

ある日ひ、楓かえでは上司じょうしに呼よばれ、部長ぶちょう室しつに連つれて行いかれた。部長ぶちょうは楓かえでに向むかって「君きみの勤務きんむ態度たいどについてクレームがあった」と言いう。横目よこめで上司じょうしを見みると、彼女かのじょはしてやったりという顔かおをしているようだった。

楓かえでは後日ごじつ、部長ぶちょうに面談めんだんの機会きかいを設もうけてもらい、「どこでもノート」を手渡てわたした。その結果けっか、上司じょうしは厳重げんじゅう注意ちゅういとなり、楓かえでは以前いぜんいた部署ぶしょに戻もどるよう取とり計はからってもらえた。