学科がっか紹介しょうかい 火星かせいに生命せいめいはいるか？

まだ、望遠鏡ぼうえんきょうの解像度かいぞうどが余あまり良よくない時代じだい、火星かせいの表面ひょうめんに運河うんがのような網目あみめ模様もようが観察かんさつされた。これを見みて、火星かせいには火星かせい人じんがいて高度こうどに発達はったつした文明ぶんめいにより運河うんがを造つくっていると考かんがえたひともいた。火星かせい人じんが攻せめてくると言いうラジオ番組ばんぐみの放送ほうそうを聞きいたアメリカ市民しみんが、それを本当ほんとうの話はなしだと信しんじてしまい、パニックになったのは1938年ねんの事ことであった。
それ以来いらい、望遠鏡ぼうえんきょうの観測かんそく技術ぎじゅつも高たかまり、20機きにもなる探査たんさ機きが火星かせいの探査たんさをおこなった。その結果けっか、火星かせいには運河うんがはもちろん液体えきたいの水みずはほとんど残のこっていないことも明あきらかとなった。火星かせいに火星かせい人じんがいる可能かのう性せいは全まったく無ない。

1996年ねんアメリカ航空こうくう宇宙うちゅう局きょく（NASA）の研究けんきゅう者しゃ達たちは火星かせいからの隕石いんせき ALH84001に微生物びせいぶつ様さまの化石かせきがあることを発表はっぴょうした。化石かせきは小ちいさい（1μみゅーメートルよりもさらに小ちいさい）ミミズのような形かたちをしている。ミミズの節ふしに相当そうとうする構造こうぞうは細胞さいぼうの様ようにも見みえた。また、隕石いんせきには有機ゆうき化合かごう物ぶつも検出けんしゅつされた。
まず、なぜ隕石いんせきが火星かせいから来きたということが分わかるのだろうか？これは隕石いんせき中ちゅうに含ふくまれるガス成分せいぶんの分析ぶんせきから分わかる。ガス成分せいぶんのなかの微量びりょう成分せいぶんが火星かせいの大気たいきの成分せいぶん比率ひりつに非常ひじょうによく似にていたのである。これは、この隕石いんせきが火星かせいから来きたということを強つよく物語ものがたっている。
しかし、化石かせきと思おもわれた構造こうぞう物ぶつが生命せいめいかどうかに関かんしては否定ひてい的てきに考かんがえる研究けんきゅう者しゃが多おおい。まず、細胞さいぼうが少すこし小ちいさすぎる。細胞さいぼうには必かならず表面ひょうめんの膜まく（細胞さいぼう膜まく）があるが、その分子ぶんしの大おおきさとしてどうしても必要ひつような大おおきさがある。また、生いき物ものであるならばなにか遺伝いでん物質ぶっしつを持もっているはずである。遺伝いでん物質ぶっしつはDNAではないかも知しれないが、それにしても遺伝子いでんしを持もっているはずである。こうした必要ひつような最低さいていの細胞さいぼうの大おおきさに比くらべて、隕石いんせき中ちゅうの化石かせきは小ちいさすぎる。さらに、ミミズの様ような構造こうぞうは生物せいぶつ以外いがいの反応はんのうでもできることが知しられている。有機物ゆうきぶつも、隕石いんせきに非ひ生物せいぶつ的てきに含ふくまれていることは良よくある。NASAの研究けんきゅう者しゃはまだ、この報告ほうこくを撤回てっかいしていないが、現時点げんじてんでは火星かせい隕石いんせきの構造こうぞうを生物せいぶつの化石かせきとするのは大分おおいた無理むりがある。

逆ぎゃくに「火星かせいに有機物ゆうきぶつはない」という結論けつろんが見直みなおされている。1970年代ねんだいバイキングという名なの探査たんさ機きが火星かせいに着陸ちゃくりくし、有機物ゆうきぶつの分析ぶんせきを行おこなった。有機物ゆうきぶつは検出けんしゅつされず、有機物ゆうきぶつは検出けんしゅつ限界げんかい以下いかであるという結論けつろんが出だされた。それ以来いらい、火星かせいには有機物ゆうきぶつも、だからおそらく生命せいめいもいないだろうという理解りかいが研究けんきゅう者しゃ間あいだに広ひろまった。
それが、最近さいきんの研究けんきゅうで大おおきく見直みなおされつつある。それは、有機物ゆうきぶつの分析ぶんせき方法ほうほうと火星かせいの土どの特徴とくちょうにある。火星かせいの土どは非常ひじょうに酸化さんか的てきであることが分わかってきた。そして、酸化さんか的てきな土どに有機物ゆうきぶつがある場合ばあいには、バイキングで用もちいた有機物ゆうきぶつ分析ぶんせき方法ほうほうをもちいると有機物ゆうきぶつは酸化さんかしてしまって検出けんしゅつできないことが分わかったのである。NASAと欧州おうしゅう宇宙うちゅう局きょく（ESA）が合同ごうどうで火星かせいに送おくった探査たんさ機きMSL（Mars Science Laboratory）は2012年ねん8月がつに火星かせいに到着とうちゃくした。今後こんご、改良かいりょうした装置そうちで火星かせいの有機物ゆうきぶつを再さい調査ちょうさする予定よていである。

初期しょきの着陸ちゃくりく機きは火星かせいの表面ひょうめんの写真しゃしんを送おくってきた。火星かせい表面ひょうめんはひからびた砂漠さばくで水みずは見みあたらなかった。しかし、その後ご多おおくの探査たんさによって、少すくなくとも火星かせい史しの初期しょきには水みずはあったこと、水みずの流ながれた後のちと思おもわれる地表ちひょうの構造こうぞうが現在げんざいも残のこっていること、そして火星かせいの北極ほっきょくと南極なんきょくの地下ちかには現在げんざいも大量たいりょうの氷こおりが眠ねむっていることが明あきらかとなった。ごく最近さいきん、地下ちかから流ながれ出でた水みずのあとも見みつかってきている。何なん回かいか撮影さつえいした写真しゃしんを見比みくらべると、その間あいだに何なにかが流ながれた後のちが写うつっていたのである。火星かせいの地下ちかにはまだ液体えきたいの水みずもあるかも知しれない。

火星かせいの表面ひょうめんは大気たいきも薄うすく（地球ちきゅうの7/1000程度ていど）、温度おんども低ひくい。火星かせい表面ひょうめんは過酷かこくな環境かんきょうである。しかし、かりに地球ちきゅう生物せいぶつを火星かせい表面ひょうめんに持もって行いったとすると、かなり長ながい間あいだ、生いきながらえることが実験じっけん的てきに分わかって来きている。

日本にっぽんの10を越こえる研究けんきゅう機関きかんの研究けんきゅう者しゃ達たちは今いま、火星かせいでの生命せいめい探査たんさ計画けいかくの準備じゅんびを初はじめている。光学こうがく顕微鏡けんびきょうを探査たんさ機きにのせて火星かせいへ運はこび、火星かせいの土どを顕微鏡けんびきょうで分析ぶんせきしようという計画けいかくである。探査たんさ車しゃは自動的じどうてきに土どを堀ほりり、顕微鏡けんびきょうで自動的じどうてきに撮影さつえいし、画像がぞうを自動的じどうてきに地球ちきゅうに送おくる。こうした計画けいかくはNASAもESAも予定よていしていない。

もっと詳くわしいことは「地質ちしつ学がく雑誌ざっし」という本ほんの2012年ねん118巻かん10号ごう675-682ページ（山岸やまぎし明彦あきひこ著ちょ、火星かせいにおける欧米おうべいの生命せいめい探査たんさとMELOS計画けいかくでの生命せいめい探査たんさ）あるいは日本にっぽん惑星わくせい科か学会がっかい誌し「遊星ゆうせい人じん」2011年ねん20巻かん2号ごう108-116ページ（山岸やまぎし明彦あきひこ著ちょ、火星かせいでの生命せいめい探査たんさ計画けいかく）を読よんでみて下ください。

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