MAI法によって明らかとなった断層近傍の地殻変動
地殻変動の特徴
平成28
年(2016
年)4
月16
日に
熊本でM7.3の
地震が
発生しました.
日本の
地球観測衛星「だいち2
号」(ALOS-2)に
搭載された
合成開口レーダー(PALSAR-2)のデータに,
MAI(Multiple Aperture Interferometry)法を
適用した
結果,
標準的なSAR
干渉解析では
捉えられなかった
断層近傍の
地面の
動きが
明らかになりました.
- 衛星進行方向成分(ほぼ南北方向)の地面の動きを調べたところ,布田川断層帯を境に,北側では北向き〔赤色〕,南側では逆に南向き〔青色〕の変位が生じていることが分かりました.変位量は最大約1mです.観測された地面の動きは,右横ずれの断層運動によって生じるものと調和的です.
- 布田川断層帯に沿って,北側と南側の変位の向きが急変しています.一部の領域では,地表地震断層の出現が報告されています.
- 布田川断層帯に沿った変位の向きの変化は,西側では日奈久断層帯との接合部付近まで,東側では阿蘇カルデラの西縁から数km東までほぼ直線状に見られます.
- 日奈久断層帯に沿って,変位の急変帯が見られます.日奈久断層帯の北部でも断層の動きが生じたことが示唆されます.
なお,MAI
法は
現在研究開発中の
技術であり,
計測値に
数10cm
程度の
誤差が
含まれることがあります.
今回の
結果はその
速報であり,
今後,さらに
研究を
進展させ,より
詳細な
分析を
行っていく
予定です.
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図1
青色の
領域は
衛星進行方向(ほぼ
南)の
水平変動を,
赤色の
領域は
衛星進行方向と
逆向きの
水平変動(ほぼ
北)を
示しています.
※
ピクセルオフセット解析からも
同様の
結果が
得られています.
地震概要(本震)
地震発生日時 |
2016年4月16日 01時25分 |
震源位置 |
32.7545°N,130.7630°E 深さ:12km
(気象庁,2016年4月28日現在) |
マグニチュード |
7.3(気象庁,2016年4月28日現在) |
死者 |
49人(2016年4月28日現在) |
分析に使用した人工衛星
日本の地球観測衛星 「だいち2号」(ALOS-2)
広報・講演・論文発表
国土地理院(2016)、
平成28
年(2016
年)
熊本地震、
地震予知連絡会会報、
第96
巻、557-589. [
PDF: 18.8MB]
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研究官 森下 遊(MORISHITA Yu) 029-864-6549