「AQUOS R9」で起おきた“3つの異変いへん”　Proなし、デザイン刷新さっしん、実質じっしつ値下ねさげの意図いとを聞きく（2/3 ページ）

[田中たなか聡さとし，ITmedia]

デザイン刷新さっしんの背景はいけいに「存在そんざい感かんがなくなってしまう」危機きき感かん

　AQUOS R9ではデザインも大おおきく変かわった。特とくに変化へんかしたのはカメラの台座だいざだ。カメラを過度かどに目立めだたせるのではなく、円形えんけいの台座だいざの中なかに自然しぜんとたたずんでいるように感かんじる。ネットではカメラレンズが「コダマのようだ」という意見いけんも目めにする。カメラの台座だいざは、従来じゅうらいは黒くろ系統けいとうの異ことなるカラーにしていたが、AQUOS R9では本体ほんたいと同色どうしょくにそろえているのも特徴とくちょうだ。

　ただ、小林こばやし氏しは「最初さいしょに提案ていあんを受うけたときに、めちゃくちゃ違和感いわかんがありました」と率直そっちょくに話はなす。「しっくり来きていなかったのですが、2カ月かげつくらい持もって、めっちゃいいなと。第だい一いち印象いんしょうと、日々ひび使つかったときの印象いんしょうがだいぶ違ちがう」と話はなす。「賛否さんぴ両論りょうろんがあるとは認識にんしきしていた」が、「海外かいがいのお客きゃくさんは、めちゃくちゃいいと絶賛ぜっさんした」そうだ。

　これまでのAQUOS Rシリーズはガジェット然しかとしたデザインが多おおかったが、AQUOS R9では「生活せいかつ用品ようひんに違ちがいイメージ」（清水しみず氏し）を意識いしきしたという。

　miyake designを起用きようした経緯けいいについて、「いろいろなデザインを検討けんとうするうちの1人ひとりでした」と中江なかえ氏しは振ふり返かえる。

　「デザイナーさんにひも付つくデザインのやり方かたやコンセプトを通とおす人ひともいらっしゃいますが、三宅みやけさんは、グローバルに通用つうようする日本にっぽんのデザインは何なにかを考かんがえたときに、共感きょうかんできるものを提案ていあんいただけました。私わたしたちは具体ぐたい的てきな絵えは描えがけないですが、言葉ことばでは『こういう感かんじ』と説明せつめいしていました。その有象無象うぞうむぞうの言葉ことばの中なかから、『こういうことですよね？』と解釈かいしゃくいただけたのがよかったのです」

　あくまで筆者ひっしゃの主観しゅかんだが、AQUOS R9のデザインは、senseやwishであれば違和感いわかんないものの、ハイエンドのAQUOS R9だとミスマッチしているように感かんじた。ただ、そこには先入観せんにゅうかんがあるのも確たしかだ。

　「僕ぼくたちは、senseシリーズはこう、Rシリーズはこうという、AQUOSの中なかで分わける考かんがえ方かたが強つよかったのですが、グローバルにも展開てんかいしていくことを考かんがえると、『AQUOSって何なに？』ということが強つよく求もとめられてきています。（シャープの）中ちゅうでも差別さべつ化か、というのは脇わきに置おいて、AQUOSはこうです、ということを伝つたえていかないと、AQUOS自体じたいの存在そんざい感かんがなくなってしまいます」（清水しみず氏し）

　なお、AQUOS R9では従来じゅうらい搭載とうさいしていたイヤフォンジャックが見送みおくられた。「賛否さんぴ両論りょうろんあった」（小林こばやし氏し）が、イヤフォンジャックを入いれることで本体ほんたいの厚あつさが増まし、バッテリー容量ようりょうが減へってしまうことから、外はずす決断けつだんを下くだした。

海外かいがい展開てんかいで再さい認識にんしきしたAQUOSの魅力みりょく　日本にっぽんの物もの作づくりが支持しじされている

　AQUOS R9をグローバルモデルとして展開てんかいするにあたり、世界せかいで受うけ入いれられるデザインを模索もさくした。AQUOSは以前いぜんから台湾たいわんやインドネシアなどでも販売はんばいしていたが、AQUOS R9からグローバル展開てんかいを本格ほんかく化かする。

　AQUOSを海外かいがい展開てんかいするにあたり、AQUOSのよさを再さい認識にんしきすることが多おおいという。

　例たとえば防水ぼうすい性能せいのうをチェックする際さい、シャープは1機種きしゅずつ確認かくにんしているが、これを聞きいた海外かいがいのキャリア関係かんけい者しゃが驚おどろいたという。海外かいがいでは通常つうじょう、ランダムで抜ぬき取とった個体こたいだけ防水ぼうすい性能せいのうをチェックしているためだ。「そういう信頼しんらい性せいは、海外かいがいのキャリアさんから見みるとビックリされます。僕ぼくらもランダムで抜ぬいてチェックすればいいかもしれませんが、そこは譲ゆずれない線せんがあります。日本にっぽんの物もの作づくりを支持しじされる人ひとがいらっしゃるのです」（小林こばやし氏し）

　「映像えいぞう体験たいけんのAQUOS、防水ぼうすいや耐たい衝撃しょうげき性せいなどは、僕ぼくら独自どくじのよさであると気付きづいて、それを、日本にっぽんのお客きゃくさまにも届とどけていくというブランド定義ていぎのきっかけになりました。日本にっぽんが厳きびしいから外そとに出でて行いくのではなくて、日本にっぽんでももっといい体験たいけんを届とどけるために、外そとで磨みがかれていく活動かつどうだと認識にんしきしています」（清水しみず氏し）

　AQUOS R9は台湾たいわん、インドネシア、シンガポールで展開てんかいする予定よていだが、その他たの国くにについては検討けんとうしているのだろうか。小林こばやし氏しは「米国べいこくや欧州おうしゅうも否定ひていはしませんが、より5Gが広ひろがっていく国くにはチャンスだと捉とらえています」と答こたえる。ただし米国べいこくについては「巨大きょだいな日本にっぽんのような市場いちば。キャリアの要求ようきゅうが非常ひじょうに高たかい」ことから、簡単かんたんにはいかないようだ。ちなみに米国べいこくでは、ソフトバンクとSprintの共同きょうどう開発かいはつだった「AQUOS CRYSTAL」をSprintに提供ていきょうしていたことはある。

　先代せんだいのAQUOS R8シリーズは、「AQUOS R8s／R8s Pro」という製品せいひん名めいで台湾たいわんとインドネシアで展開てんかいしていた。商品しょうひん名めいに「s」が付つくのは、ライカ監修かんしゅうのカメラを搭載とうさいしていないことが関係かんけいしているようだ。「AQUOS R9も（海外かいがいでは）一部いちぶでsが付つくかもしれません」と小林こばやし氏し。ちなみに海外かいがいではこれまで、「AQUOS sense8」が最もっとも売うれているそうだ。